教員の本
メディアの中の子ども
中京大学文化科学叢書・第10輯
原 國人、酒井 敏(文学部教授)、甘露 純規(同准教授)編著
情報の媒体、伝達の手段であった筈のメディアは次第にその機能を増殖させ、人類の行く末までも左右する巨大な権力として君臨するようになってきた。その史的展開の中で、子どもはどう消費され、また逆にどう生き抜いてきたのか。本学文化科学研究所児童文化グループが新聞・文学全集・教科書・マンガなどを通し、流通の実態を見据えながら、メディアの中の子どもの「リアル」を鋭く抉り出した、現代に相応しい好論文集。
中京大学文化科学研究所。2009年3月25日刊。214頁。
柔道と協同学習
―自他共栄の原理を踏まえた強い個の育成
杉江 修治(国際教養学部教授)他著
本書は高校柔道授業の改善を長年にわたり図ってきた成果である。柔道を学ぶ意義は、その創始者嘉納治五郎の提唱する「精力善用」「自他共栄」にある。相手を尊重し、高め合う過程で、民主社会に貢献する資質を育てるところに本来のねらいがある。柔道の本質に沿った実践の姿と、これからの柔道授業のあり方を論じた内容となっている。
教育新聞社。2009年3月23日刊。149頁。本体2,000円。
自らの食を考え、主体的に学び、実践する子
杉江 修治(国際教養学部教授)他監修
犬山市は、文科省の研究指定を受け、2006年度から地域と結ぶ食育の実践研究を進めてきた。本書は、その研究の中心的役割を担ってきた犬山市立東小学校の2007年度の実践成果である。
協同学習による授業の工夫に加えて、教師集団の協同によるカリキュラム開発に大きな成果を見ることができる。
日本協同教育学会。2009年3月20日刊。112頁。本体2,381円。
現代経営論
―中小企業経営の視点を探る―
小川 英次(学術顧問)著
トヨタグループの活動を長年観察してきた著者が、成長・進化の姿を経営プロセス・モデルにまとめ、そこから中小企業の経営に資するノーハウを導き出そうと試みた研究と提案の書である。
モデルは信頼をベースに変化―連携―統合―バランスと連なり、信頼へ回帰するものとし、モデルを基礎に、中小企業の持続・繁栄を確保する課題を論じている。
中央経済社。2009年3月20日刊。270頁。本体3,000円。
ひざ・腰・肩が楽になる一生健康7秒体操
湯浅 景元(体育学部教授)著
ある運動には、それに固有の効果しかない。したがって幅広く運動の効果を得るためには、ウォーキングだけというような偏った運動習慣では効果は期待できない。少なくともウォーキング、筋トレ、ストレッチングを組み合わせて運動を行う習慣をつけることが重要である。本書では、これらの3つの運動を手軽に行うための方法について紹介している。
角川SSコミュニケーションズ。2009年3月15日刊。112頁。本体1,000円
環境、貿易と国際労働移動
中京大学経済学研究叢書第17輯
近藤 健児(経済学部教授)著
環境問題、少子化、貿易協定などを考慮した国際労働移動の理論分析により、労働受入国のための最適政策を探求する。第1部では越境汚染と国際労働移動の関連を研究し、第2部では経済連携協定(EPA)の少子化や環境汚染に対する有効性を分析し、第3部では効率賃金と失業、労働組合、繰り返し労働移動を組み込んだモデルを展開している。
中京大学経済学部。2009年3月10日刊。184頁。
地域社会と協働するコミュニティ・バンク
―米国のコミュニティ銀行・クレジットユニオンとNPO―
由里 宗之(総合政策学部教授)著
本書は約5年間にわたる米国取材に基づき、米国のコミュニティ・バンクの実相を、地域社会との関わり合いに重点を置きつつ描出している。
わが国の地域金融に関わる諸情勢や政策論議を念頭に、「米国のコミュニティ・バンク、それを取り巻く地域社会(の諸組織)、さらには監督当局の姿勢から何を学びうるか」という実践的視点が、本書の基調となっている。
ミネルヴァ書房。2009年3月1日刊。491頁。本体6,500円。
Fundamentals of Three-Dimensional Digital Image Processing
(3次元ディジタル画像処理)
鳥脇 純一郎(生命システム工学部教授)他著
本書は、3D画像のディジタル幾何学と計算機による自動分類、認識のためのアルゴリズムに関する基礎理論を詳述している。著者の30年余りの研究成果をまとめたもので、著者のライフワークとも言える。3D画像は計算機断層像(CT像)やMRIなどの医用画像の中心で、がんの診断などのため医学において多用され、実際の画像処理においても意義が大きい。
Springer。2009年。272頁。$89.95
刑事法の基礎
平川 宗信(法学部教授)著
刑法・刑訴法・少年法等の刑事法全体の根底にある理念・原理・原則を、その歴史・国際比較・思想等を踏まえ、独自の主体性論と「憲法的刑事法学」の理念に立脚して体系的に解説した概説書。法学部の「刑事法入門」のテキストや、初学者・既習者・法科大学院生等が解釈論をより深く理解するための参考書として好適である。
有斐閣。2008年12月25日刊。334頁。本体2,800円。
危ない食卓―十九世紀イギリス文学にみる食と毒
岩田 託子(国際英語学部)・武井 暁子(国際教養学部)他著
食卓に危険が潜むのは今に始まったことではない。世界に先がけ産業革命と都市化が直撃した19世紀英国の飲食面の問題を論じ、特に食品偽装・アルコール依存・摂食障害・菜食主義を文学に探っている。
国際英語学部教授岩田託子が禁酒運動の観点から、また、国際教養学部教授武井暁子が拒食症の観点から、それぞれ論考と翻訳資料を寄せている。
新人物往来社。2008年12月10日刊。300頁。本体2,000円。