教員の本
灰都と緑園:水面と英国スクリーン・アート観想
栂 正行教授(教養教育研究院)著
現実世界は灰色の道路、鉄路、堤防、建物と、緑色の木々や水のバランスの上に成り立つ。どちらか一方が過剰でも人は落ち着かない。本書は灰色と緑色をイギリスや欧州のスクリーン・アートに探り、作家、作中人物、読者にとっての意味を考える。これらの色を映し出す水面を凝視し、水辺を歩く。歩いては考え、考えては読むという、人本来の営みへの憧憬の書。始発駅『引用と借景』(2018年)から、複数の論考という途中停車駅を経て辿り着いた、次の旅の前のひとつの終着駅での経験は、軽装でふと歩き出せばまた新たな道が見つかろうという歩行と思考の共振を信じる肯定的境地。
三月社、2023年9月30日刊、2000円
Promoting Regional Industries Through Cross-Sectoral Collaborations
Promoting Regional Industries Through Cross-Sectoral Collaborations: Regional System, Management, and the Management Body
川端 勇樹(中京大学経営学部教授)著
本書では、自己組織的な異分野間連携の成立という複雑性に特徴づけられる対象を、地域産業の振興に向けていかにマネジメントするかについて考察した。複雑なプロセスを促進するためのマネジメントについて、パフォーマンスの高いドイツの複数地域を対象に事例研究および比較分析による検証を行うことによる、研究テーマに関する信憑性の高い理論構築という成果を得た。この成果を基に、実社会においては地域を挙げた異分野間の組織間連携の促進により、成長潜在性の高い医療機器関連分野でいかに競争力のある地域新産業を振興していくかという課題に対し、同産業の特色もふまえた実践的で有益な提言ができたと認識している。また応用面では、オープンイノベーションの重要性がますます高まるなかで、他分野における競争力のある地域新産業の振興についても域内外の様々な背景をもつ産学関係者が一定の方向性に向けて自己組織的な異分野間連携を促進するための有効な視点を、国・自治体の政策担当者、推進する機関、連携に参画する産学関係者に提供することで、現代の日本経済・産業における実際的な課題解決に向けた多くの可能性を持つ研究である。
スポーツ心理学- 最高のパフォーマンスを発揮する「心」と「動き」の科学
山田 憲政(中京大学スポーツ科学部教授) 著
本書は様々な環境の中で身体が最高のパフォーマンスを発揮する場としてスポーツをとらえ、その原理を科学的に解明することを目指す。既存のテキストは研究成果の競技場面への適用ばかりに焦点が当てられているが、本書では情報処理理論や反応時間、記憶や学習といった基礎心理学的知見を踏まえた科学的スポーツ心理学を紹介する。
勁草書房。 2023年7月刊。 368ページ。 3,630円(税込)。
決算書×ビジネスモデル大全- 会社の数字から儲かる仕組みまでいっきにわかる
矢部 謙介(国際学部教授)著
なぜあの会社は稼げるようになったのか?なぜあの会社はつぶれたのか?注目41企業の分析を通して、決算書の読み方とビジネスモデルがいっきにわかる本。
「決算書×ビジネスモデル」の視点で、「無機質な数字」が「刺激的なドラマ」に変わる。堅苦しくて難しそう、という「会計本」のイメージを塗り替える1冊。
東洋経済新報社。2023年6月6日刊。272頁。1,800円+税
不当韭菜,一眼看穿财报陷阱(原題:粉飾&黒字倒産を読む)
矢部 謙介(国際学部教授)著
本書は、2020年9月に日本実業出版社より発刊された『粉飾&黒字倒産を読む』を中国語(簡体字)に翻訳し、中国本土にて刊行されたものである。
本書では、会計の基礎教養から、決算書から粉飾や黒字倒産を見抜くノウハウ、粉飾や黒字倒産に至る経緯や末路、防止策・対応策、業績を回復させる経営改革を実行するためのヒントまでを豊富な実例を交えて解説している。
この数字、何かがおかしい―。きれいな数字にだまされないための、企業の経理担当者、経営幹部、監査役、公認会計士・税理士、コンサルタント、投資家などに向けた実践的なビジネス書。
广东经济出版社。2023年5月1日刊。梁京訳。248頁。55元
全圖解財報比較圖鑑(原題:決算書の比較図鑑)
矢部 謙介(国際学部教授)著
本書は、2021年11月に日本実業出版社より発刊された『決算
慣れないうちは数字の羅列にしか見えない決算書も、シンプルな「
ビジネスにも投資にも効く、リアルで面白い決算書分析の入門書。
三采文化股份有限公司。2023年1月6日刊。葉廷昭訳。182
ナチス教育断章――ナチス教員連盟、ナチスの学校田園寮ほか――
小峰 総一郎(中京大学名誉教授)著
<ナチス>はワイマール時代の児童尊重、国際主義、平和主義の教育を<民族社会運動の教育>に転換、その頂点に軍隊を置き、「キャンプと隊列の<ラガー教育>」によって若者をドイツ「民族共同体」(Volksgemeinschaft) へと「錬成」した。
本書は<ナチス教育>の本質を、その実行部隊「ナチス教員連盟」、「学校田園寮」、民族主義詩人マリア・カーレ、その他から探る。
三省堂/創英社。2022年11月7日刊。233頁。本体2,500円+税
Philippine English
James D'Angelo (国際学部教授)他著
Philippine English is a comprehensive reference work on the history, sociology, and linguistic structure of Philippine English. It offers readers access to a synthesis of the last 50 years of research into Philippine English and puts forward a new and better understanding of the phenomenon of the nativization of English in the Philippines. Professor D'Angelo co-authored the chapter on Language Testing with D. Cayado.
Routledge. 2022年9月19日刊。424頁。£150.00 (Hardcover)。
認知科学講座3 心と社会
長滝 祥司(国際学部教授)他著
本書は、日本認知科学会創立40周年を迎えるにあたって編纂された講座の第3巻である。講座の構成は、『1 心と身体』、『2 心と脳』、『3 心と社会』、『4 心をとらえるフレームワーク』となっている。これらの内容から分かるように、認知科学とは人間とその営みに関する総合科学である。本講座は、現在の日本の認知科学の到達点を掛け値無しに見せてくれる。1、2、3の各巻の最終章には、哲学からの論考が寄せられている。なかでも、本書第3巻は認知科学のハードプロブレムに挑んだ記録であり、最終章は哲学的観点からその営みを総括し、認知科学を人間の知の歴史と未来のなかに位置づけている。本書は、人間とその社会の現在を理解し、未来を構築していくための必読の書である。
東京大学出版会。2022年9月12日刊。272頁。3520円。
メディアとしての身体
世界/他者と交流するためのインタフェース
長滝 祥司(国際学部教授)著
自己の身体は、世界や他者と交流しそれらを認識するためのメディアであり、他者から認識されるためのメディアでもある。本書は、この論点を軸に、現象学、心の哲学、生態学的心理学、観相学、SF映画、テニスやサッカーなどのスポーツ、文学作品など、さまざまな素材を縦横に使いながら、独自の身体メディア論を展開している。急速に進歩しつつある科学技術を身体の拡張としてのメディアという観点から理解しつつ、皮膚と傷つきやすさに人間の本質を見いだすところにも、本書の特色がある。本書は、「知の生態学の冒険【全9巻】」の第6巻である。
東京大学出版会。2022年8月3日刊。260頁。3,850円。3,658円(Kindle版)。