補助金獲得の現状から考える
私立大学の存在意義の再確認を

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   経営学部     梅田守彦教授

 2022年5月1日現在において59万6千人(大学院生を含む)の学生を擁する国立大学には、1兆675億円の運営費交付金が配分されている。学生1人あたりに直せば179.1万円となる。これに対して同時期の私立大学に対する経常費補助金総額は2,980億円、在籍学生数は217万1千人(同)であった。学生1人あたり13.7万円、すなわち国立大学との格差は約13倍にものぼる。
 もちろん国立大学は、国が企画・立案した教育研究業務を、国に代わって実施するという性格の組織であるので、相対的に多くの公的資金が配分されるのも当然であろう。しかしながら、たとえそうであるとしても、私立大学は日本の高等教育を国立大学とともに担っているのであるから、学生1人あたり13倍という格差が存在する理由、そしてそれが緩和される方向に向かわない理由が見えてこない、といった批判が私立大学側からはつねに上がる。
 1960年代後半まで、私立大学はおおよそノー・サポート・ノー・コントロールという状態に置かれていた。そこに現在のような人件費も含めた経常費助成制度が導入されたのは1970年である。
 そのときの参議院文教委員会では、野党議員から「東大一校の場合が250億で、補助したいという全私学で138億、これでは非常に焼け石に水という感じがするわけですが......」という質問が出た。これに対して文部省管理局長は、国立大学は学問研究水準の維持に対して大きな役割を占めており、東大などに多額の研究費が投入されているのは「特別の事情」であると答弁した。ここには私立大学の研究活動に対する期待度の低さがよく現れている。
 とはいえ、その後は私立大学に対する経常費補助制度は充実の一途をたどり、1980年には私立大学の経常的経費に対する国庫助成金の割合は29.5%にまで達した。しかしその翌年に第二次臨時行政調査会、いわゆる「土光臨調」がスタートしたことは、補助金獲得面からみれば不運であった。これを契機に助成金比率は低下の一途をたどり、現在では10%を大きく下回る状態である。
 自己財源だけでは運営資金を十分に確保することができない非営利組織体にどの程度の公的資金が投入されるのかは、その組織の存在意義がどのように認識されているのかに左右される。かつてある私大教員は、「私大を必要としながら、金を出しおしんでいるのか。そうではなくて、不必要と考えているからこそ金を出さないのではないか」と文部省に問いかけた。
 一口に私立大学といっても、教育研究レベルや入学者選抜の状況などにあまりにも大きな差が存在していることは周知の事実であるが、各大学がそれぞれの使命の達成に向けて真摯に取り組んでいる姿を示すことなくしては、国立大学との公的資金投入額の格差を是正させることはできないであろう。とはいえ、いまや私立大学の定員の半数を推薦入学組が占め、入り口も出口も「ゆるゆる」と揶揄されることも多くなってきた状況では、文部科学省などの認識を一変させるのは容易なことではない。

【略歴】

 梅田守彦 (うめだ・もりひこ)
 中京大学経営学部教授
 慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学
 会計学 
 1958年生まれ

  

2023/07/20

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