スポーツ科学部の加納裕久助教 優秀発表を受賞
日本体育測定評価学会第22回大会・第5回身体科学研究会合同大会
スポーツ科学部の加納裕久助教は3月12日、日本体育測定評価学会第22回大会・第5回身体科学研究会合同大会において優秀発表(ポスター発表)を受賞しました。発表演題は「年少児の体力・運動能力の発達的特性―エネルギー系の運動能力とコオーディネーション能力に着目して―」(共同研究者:久我アレキサンデル(名古屋経済大学))です。
これまでの研究の概要
近年問題とされている幼児期の運動能力の低下について、神経系に関わるコオーディネーション能力に着目し研究を進めてきました。この問題に対してこれまでは、主に筋出力を最大限に発揮するエネルギー系の体力・運動能力テストにより測定評価されてきましたが、神経系の視点が不足しており現行の運動能力テストでは限界も見え始めているため、神経系に関わるコオーディネーション能力の視点から、筋出力を条件に応じて調整し動作の正確性を評価するコオーディネーション能力テスト(以下Coordination ability Test:CaT)を活用し、研究を進めています。
受賞発表の概要
今回の発表では、幼児の運動発達の実態を多角的に捉えるために、これまでの体力・運動能力テストに加え、CaTを実施し、各テストの特徴及びテスト間の関連性を検討しました。
今回は、年少児273名を対象に、エネルギー系の体力・運動能力テスト7項目(体力要素:握力、反復横跳び、体支持持続時間、長座体前屈/運動能力要素:立ち幅跳び、テニスボール投げ、往復走)、 神経系のCaT 9項目(的当て、振り子式的当て、ライプツィヒ的当て、跳び箱ターゲットジャンプ、障害物ターゲットジャンプ、MTJテスト、ジグザグ走、片足バランス、平均台歩行)の計16項目のテストを実施しました。
本研究の結果、以下の2つのことが示されました。
(1)エネルギー系の体力・運動能力テストでは、全ての項目で月齢による直線的な発達傾向が認められました。一方、神経系のコオーディネーション能力テストでは、月齢による差が認められないものもあり、必ずしも直線的な発達傾向は示されませんでした。
(2)3歳ではテスト間の関連は僅かしか認められず、3.5歳から4歳へと月齢が高くなるほどテスト間の関連が多く示されました。これらのことより月齢が上がるにつれて能力間の関連が高まり年少児の体力・運動能力の発達的特性として部分的な発達から徐々に全面的な発達へと移行していくことが示唆されました。
本研究は、幼児期3年間(2022年度年少児~2024年度年長児)の縦断研究における1年目の調査結果であるため、引き続き調査を進めていきます。
付記
本研究はJSPS 科研費(22K17760)の助成を受けた研究成果の一部です。
また、長久手市子ども部子ども未来課の協力を得て、本調査を実施しました。