存在感示す企業の社会貢献
営利活動の動機づけの基礎に

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現代社会学部
成 元哲教授

 東日本大震災の余韻が残る2012年に誕生、今では全国で約6000カ所に達し、ある調査では市民の約8割が「聞いたことがある」というほどの社会活動がある。それが子ども食堂である。子ども食堂は、子どもやその親、地域の人々に対し、無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する民間発の取り組みだ。

 2020年2月末、新型コロナウイルス感染拡大の恐れから、全国一律の休校要請が行われ、学校給食がなくなった。そんな状況で注目されたのが子ども食堂である。コロナ禍、その活動は一堂に会して食する子ども食堂から、企業や家庭で余った食材を集めて困窮世帯に配るフードパントリーや弁当の配布活動に移行し、活動を続けている。

 私事で恐縮だが、2016年5月頃から、ゼミの学生たちと、愛知県内の子ども食堂へボランティアとして関わりながら、所在地、開催日時、料金など運営実態を調べ、「愛知県子ども食堂マップ」を製作した。当時、県内の子ども食堂は10か所ほどであったが、半年余りで30か所以上に急増した。翌年6月には、県内各地の子ども食堂が寄付や運営のノウハウを共有し、横につながる「あいち子ども食堂ネットワーク」の呼びかけ人となった。2022年4月現在、ネットワークの加盟団体は127カ所。学生たちと子ども食堂の後方支援活動から愛知県の素顔を垣間見ることができた。

 愛知県はNPO法人が日本一少ない県である。人口10万人当たりのNPO法人の認証数の全国平均は38.7であるが、愛知県は24.8である。その理由としては、東京や大阪に比べ、町内会など地縁団体がしっかりしている。経済が好調で企業福祉が充実し、自治体財政が豊かで行政サービスが手厚いため、市民自らが動く必要がないといった理由も指摘される。

 そんな愛知県の子ども食堂に関わり続ける中で、子ども食堂に寄付やボランティアをする多くの企業の関係者に出会った。東京や大阪と比べ、愛知では行政や市民より、企業が積極的に子ども食堂を支援するという印象を受けた。ある企業ではテレビ番組を観た営業社員の「子どもたちにおなかいっぱいご飯を食べさせたい!」という一言から支援が始まったらしい。

 しかし、子ども食堂支援は企業にとって目に見えるメリットはない。子ども食堂支援を企業の営利活動のモチベーションの一角を担うものとして位置づけない限り、継続はきわめて困難だ。つまり、会社が利益を出し、黒字経営にした上で、子ども食堂への支援を損金処理し、税金の控除対象にすることができれば、経営的にもプラスとなり、従業員が一生懸命働く励みとなるのである。

 たまたま見かけたテレビ番組がきっかけで始まった子ども食堂支援は偶然の産物だ。その偶然による子ども食堂支援が企業内で賛同を呼び、支援への機運が高まる。子どもたちを助けることが自分の喜びになる。そのために勤勉に労働に励み、それが企業の利益にもつながる。こうした好循環を生み出すことが必要である。今後も愛知県の企業の継続した関りを期待したい。

【略歴】
成 元哲(ソン ウォンチョル)。中京大学現代社会学部教授。
東京大学大学院修了。修士(社会学)。
ボランティア論、環境社会学。
1966年生まれ。

 

  

2022/05/17

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