スポーツSDGs
スポーツを活用した社会課題の解決
芦塚倫史スポーツ科学部准教授
私は昨年4月から中京大学スポーツ科学部で大学教員としてのキャリアをスタートした実務家教員です。着任初年度の昨年は、実務家教員だからこそできることを実行しようと、いくつかの取り組みに挑戦しました。その中のひとつがゲストスピーカー講義です。
ゲストスピーカー講義とは、授業内容に関連する学識や業務実績を持つ専門家に、具体的な事例を示しながら講義をしてもらうものです。私が担当する授業では、スポーツビジネスの第一線で活躍する実務家に講義の一部を担当していただきました。
授業形式については、講義だけではなく、ゲストが実際の業務をテーマにした課題解決の提案を学生に考えさせる演習形式など、言わば「教科書には載っていない」リアルな事例学習を提示することを重要視して実施しました。
さて、このゲストスピーカー講義の中でも、特に学生からの評価が高かったのは、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の大坪英太氏を迎えた回でした。大坪氏には、「ブラインドサッカーと共生社会」というテーマでの講義をしていただきました。
その講義の中で強く印象に残っていることがあります。それは、JBFAのビジョン(理念)でした。スポーツ競技統括団体が掲げるビジョン、理念や設立の目的を調べてみると、その多くは、「競技の普及・振興」、「スポーツを通じて心身の健全な発達に寄与」、あるいは「日本を元気に」などに集約することができます。また、障がい者スポーツの競技団体の場合でも、「障がい者スポーツの環境整備」、「障がい者のQOL(生活の質)の向上」などが一般的です。
それに対して、JBFAの理念は明らかに違います。曰く、「ブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー)を通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざりあう社会を実現すること」であり、競技の普及や心身の健全発達、障がい者スポーツの環境整備などの言葉は、ここには出てこないのです。そのかわりに、「ブラインドサッカーを手段とした社会変革」を目指すことが宣言されています。つまり共生社会の実現こそが目的であって、ブラインドサッカーというスポーツはそのための手段に過ぎないと明言しているのです。そこまで潔く言い切っていることは、私にとっても新鮮な驚きでした。
この例のように、スポーツを「手段」として活用し、社会課題の解決を「目的」とする取り組みが近年増えてきています。この取り組みが「SDGs」と結びつくと、「スポーツSDGs」となります。
「スポーツSDGs」とは、「スポーツの力を活用したSDGs達成への貢献」(スポーツ庁)であり、その中身みは、障がい者スポーツと共生社会や健康増進だけでなく、貧困、ジェンダー平等、教育の問題へのアプローチなど、実に多様です。
大学教員は教育と研究だけでなく、社会貢献することも期待されています。また、実務家教員の存在意義の一つは、大学と社会との架橋になることだとも言われています。長年実務をやってきたとはいえ、新しい学びや気づきは絶えることがありません。この「スポーツSDGs」に関わる具体的な活動を始めることが、教員2年目の目標です。
【略歴】
芦塚 倫史(あしづか ともふみ)中京大学スポーツ科学部准教授。
リヴァプール大学大学院サッカー産業ⅯBA。
スポーツマーケティング。
1961年生まれ。
2022/03/30
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研究・産官学連携
芦塚倫史スポーツ科学部准教授 |
私は昨年4月から中京大学スポーツ科学部で大学教員としてのキャリアをスタートした実務家教員です。着任初年度の昨年は、実務家教員だからこそできることを実行しようと、いくつかの取り組みに挑戦しました。その中のひとつがゲストスピーカー講義です。
ゲストスピーカー講義とは、授業内容に関連する学識や業務実績を持つ専門家に、具体的な事例を示しながら講義をしてもらうものです。私が担当する授業では、スポーツビジネスの第一線で活躍する実務家に講義の一部を担当していただきました。
授業形式については、講義だけではなく、ゲストが実際の業務をテーマにした課題解決の提案を学生に考えさせる演習形式など、言わば「教科書には載っていない」リアルな事例学習を提示することを重要視して実施しました。
さて、このゲストスピーカー講義の中でも、特に学生からの評価が高かったのは、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の大坪英太氏を迎えた回でした。大坪氏には、「ブラインドサッカーと共生社会」というテーマでの講義をしていただきました。
その講義の中で強く印象に残っていることがあります。それは、JBFAのビジョン(理念)でした。スポーツ競技統括団体が掲げるビジョン、理念や設立の目的を調べてみると、その多くは、「競技の普及・振興」、「スポーツを通じて心身の健全な発達に寄与」、あるいは「日本を元気に」などに集約することができます。また、障がい者スポーツの競技団体の場合でも、「障がい者スポーツの環境整備」、「障がい者のQOL(生活の質)の向上」などが一般的です。
それに対して、JBFAの理念は明らかに違います。曰く、「ブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー)を通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざりあう社会を実現すること」であり、競技の普及や心身の健全発達、障がい者スポーツの環境整備などの言葉は、ここには出てこないのです。そのかわりに、「ブラインドサッカーを手段とした社会変革」を目指すことが宣言されています。つまり共生社会の実現こそが目的であって、ブラインドサッカーというスポーツはそのための手段に過ぎないと明言しているのです。そこまで潔く言い切っていることは、私にとっても新鮮な驚きでした。
この例のように、スポーツを「手段」として活用し、社会課題の解決を「目的」とする取り組みが近年増えてきています。この取り組みが「SDGs」と結びつくと、「スポーツSDGs」となります。
「スポーツSDGs」とは、「スポーツの力を活用したSDGs達成への貢献」(スポーツ庁)であり、その中身みは、障がい者スポーツと共生社会や健康増進だけでなく、貧困、ジェンダー平等、教育の問題へのアプローチなど、実に多様です。
大学教員は教育と研究だけでなく、社会貢献することも期待されています。また、実務家教員の存在意義の一つは、大学と社会との架橋になることだとも言われています。長年実務をやってきたとはいえ、新しい学びや気づきは絶えることがありません。この「スポーツSDGs」に関わる具体的な活動を始めることが、教員2年目の目標です。
【略歴】
芦塚 倫史(あしづか ともふみ)中京大学スポーツ科学部准教授。
リヴァプール大学大学院サッカー産業ⅯBA。
スポーツマーケティング。
1961年生まれ。
2022/03/30