高齢ドライバの運転支援
ドライバエージェント開発

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藤掛 和広 心理学部専任講師

 高齢ドライバが死傷する事故件数が増大し、また高齢ドライバが加害者となる事故も多く見られる。このことから、高齢ドライバの死傷事故予防は、重要な課題であるといえる。

 高齢ドライバの事故予防には、多くの研究や取り組みがなされている。そのひとつに、ドライバエージェントシステムによる運転行動改善の研究が挙げられる。ドライバエージェントシステムとは、スマートフォン、ロボット、クラウドが連動し、安全な運転への改善をサポートするシステムである。このシステムは、運転中に一時停止交差点での停止を促したり、速度超過を「それとなく」指摘したりする機能を有している。また、運転後に安全だった場面や危険だった場面を映像記録で確認できる機能も有している。そして、それらの機能については、市販されているコミュニケーションロボットが案内や解説をする(写真参照)。

 ここで、自分自身の運転について、家族や友人から何か言われる状況を想像してみて欲しい。例えば「ハンドル操作」「ブレーキのタイミング」や「今の運転は危なかった」などである。もし、そのようなことを言われたら、多くの人は不快に思いったり、大きなお節介だと感じたりするだろう。しかし、ロボットや自動車自体に言われるなら受け入れられるという意見が、高齢ドライバから多く示されている。ロボットや自動車自体なら受け入れられる理由としては、客観的な評価であると感じられる点や人間のようにその時の気分で指摘していないと感じる点が影響している。つまり、人間からの助言を受け入れない高齢ドライバであっても、ロボットを使ってサポートをすることで受け入れてもらえ、サポートの効果が高まることとなる。このシステムは、そのような人間の特徴を利用している。

 これまでの研究で、ロボットを介して高齢ドライバ自身の心身機能の低下や不安全な運転行動の自己認識を促すことで、より安全な運転行動に改善する効果が明らかになっている。また、ロボットが同乗することで、他者が一緒に自動車に乗っている時と同様に安全な運転を心がけるようになる同乗者効果も認められている。さらに、公道での実験にて、運転の邪魔にならないことや、利用者の運転頻度や運転距離を増加させる外出促進の効果があることが明らかになっている。

 ドライバエージェントシステムは、名古屋大学と中京大学の研究者に加え、名古屋大学発ベンチャーであるポットスチルが共同で開発研究を推進している。この研究は、公道での幅広い利用者での検証を開始し、今後高齢ドライバを含む交通場面での事故予防に貢献するといえる。

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【略歴】

 藤掛 和広(ふじかけ・かずひろ) 中京大学心理学部専任講師
 名古屋大学大学院情報科学研究科修了。博士(情報科学、名古屋大学)。
 人間工学・産業心理学
 1977年生まれ

  

2021/10/04

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