経済学部山田光男教授・中山恵子教授 「ムーンショット型研究開発事業」開始
中京大学は、プロジェクトマネージャーである名古屋大学大学院工学研究科則永行庸教授の指揮の下、名古屋大学、東邦ガス株式会社、東京理科大学、東京大学とともに、液化天然ガス(LNG)の未利用冷熱による大気中のCO2直接回収(Direct Air Capture, DAC)技術「Cryo-DAC」の研究※1を開始しました。
本研究は、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度※2」で決定された目標の一つである目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に向けたプロジェクトの1つで、LNG未利用冷熱を活用することによって、より効率的に高純度かつ高圧のCO2を回収できる技術開発を目指すものです※3。中京大学は、東邦ガス株式会社からの再委託を受け、Cryo-DACシステム開発に関連し、同システムが社会に実装されたときの経済性・環境性に関する評価技術の開発を、経済学部の山田光男教授と中山恵子教授が担います。
2020年10月、日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これは地球温暖化への対応を新たな成長の機会と捉え、脱炭素化、電化、水素利用、CO2回収などの技術開発とその社会実装により経済と環境の好循環を作っていこうとするもので、大気中から直接CO2を回収するDACは、注目されている技術のひとつです。
Cryo-DACシステムは、LNGの未利用冷熱によりCO2を固化(ドライアイス化)することにより、他のDACと異なり、未利用冷熱以外に、外部から新たなエネルギーを投入すること無く、常温付近で純CO2を回収する点が特長です。
例えば、LNG基地にCryo-DACを設置し、回収したCO2と再生可能エネルギー等により生成したCO2フリー水素から、メタンを合成(メタネーション)し、都市ガスの原料として供給することにより、既存の都市ガス導管網をフルに活用したCO2の循環利用による、ネットゼロエミッション※4エネルギー供給システムが構築できる可能性があります。さらには、将来CO2フリーの液化水素が導入され、その未利用冷熱をCryo-DACで利用することにより、ビヨンド・ゼロエミッション※5エネルギー供給システムの構築も可能となるかもしれません。
Cryo-DACシステムが社会に実装されCO2回収とその利用が始まると、既存の経済活動の一部を代替し、エネルギー資源輸入の減少をもたらす可能性があります。このためCO2回収と利用にかかる技術面や環境面の情報を統合した産業連関分析ツールを開発し、社会全体としての効果を評価することが重要となります。
※1 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の「ムーンショット型研究開発事業」に係る委託事業(東邦ガス株式会社との業務再委託契約締結に基づく)。
※2 超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する制度。
※3 研究期間は2020~2022年度の3年間(2022年度、2024年度、2027年度に中間評価を受けることが前提となりますが、最長2029年度までの10年間)。
※4 地球温暖化の原因となる温室効果ガス排出を実質ゼロとすること。
※5 「ゼロを超える」というイメージで、過去にストックされたCO2をも削減していくこと。
■ムーンショット型研究開発事業 | NEDO
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100161.html
【今回開発を目指す技術(Cryo-DAC※1)を核とするカーボンリサイクル※2(イメージ図)】
※1 冷熱を表す「Cryogenics」の「Cryo」と、大気中CO2の直接回収「Direct Air Capture:DAC」を組み合わせた造語(クライオダックと読む)。
※2 CO2を炭素資源(カーボン)と捉え、これを回収し、多様な炭素化合物として再利用(リサイクル)すること。
Cryo-DACによる大気中CO2の直接回収の流れ ①CO2を含む大気を吸引 |