心理学部・近藤洋史教授 共同研究で聴覚野における興奮-抑制バランスが自閉症傾向と統合失調型パーソナリティに関与していることを発見
心理学部の近藤洋史教授は、台北医学大学(Taipei Medical University/台湾)のI-Fan Lin助理教授との共同研究で、聴覚野における興奮と抑制作用のバランスが、健常者における自閉症傾向および統合失調型パーソナリティに関係していることを発見した。
自閉症スペクトラム障害や統合失調症の特徴には感覚障害があるとされている。先行研究では、脳内での興奮と抑制作用の不均衡によってこのような障害が生じるという学説が提案されてきた。しかし、この学説を支持する知見はまだ十分ではない。
近藤教授らの研究では、21歳から60歳までの健康な男女34人に実験への参加を依頼し、質問紙を用いて自閉症傾向と統合失調型パーソナリティを調査した。研究対象者の知覚特性を調べるため、聴覚における錯覚のひとつである単語変形効果を利用して、知覚交替の回数を指標とした。さらに、脳画像化手法のなかのMRスペクトロスコピー技術を使用して、脳内の興奮性および抑制性の神経伝達物質(グルタミン酸、GABA)の濃度を計測した。
その結果、研究対象者の自閉症傾向と統合失調型パーソナリティには有意な相関があり、その傾向が高いほど知覚交替の回数が減少することが判明した。また、聴覚野でグルタミン酸/GABA比が大きくなるほど、自閉症傾向あるいは統合失調型パーソナリティの傾向も高くなった。これらの成果は、上記の学説を支持するものであり、自閉症や統合失調症が生じるメカニズムを理解する一助となる。
研究成果は、2020年5月18日(月)公開のScientific Reports誌に掲載された。
近藤教授は「この成果は心の病を理解する糸口になるかもしれません。今回の研究をさらに進展させていきたいです」と話した。
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