オフィス環境を再考する
ワーカー自身のコントロール感が大切

bオイリマサアキ.jpg
尾入正哲 教授

 在宅勤務、テレワークのご時世にオフィスの話も場違いかもしれまんが、このままオフィスでの勤務がなくなってしまうとも思えませんし、今がこれまでのオフィス環境を見直す機会かもしれません。

 ここ二十年で日本のオフィス環境は全体に大きく進化してきました。コンピュータ化への対応、照明や家具・什器の改善、パーティションの導入など、昔のオフィスに比べると「きれいになったなあ」と感じる方も多いと思います。

 これからのオフィス環境を考える上で、ワインマン(Wineman,1986)は将来のオフィスについて、目指すべき方向や専門家の役割について知見をまとめています。以下ではワインマンの指摘した項目をもとに、これからのオフィスのあり方について,いくつかの指摘を行っていきます。

 一つはオフィスワーカーが環境を好みに変えられる自由度を高めることです。空調の設計者は完全な温熱条件を目指すためには、窓の開かない部屋がよいと主張するでしょう。また管理者や経営者は整頓された生産的なオフィスというイメージを保とうとして、机の配置や家具類を統一的なものにしたがります。しかし、これでは作業者が窓を自由に開閉する自由はないし、作業場を自分に合ったものに変えたり、自分専用の場所として愛着を覚えることもないでしょう。

 環境を自分で自由に調整できることは、騒音や混雑など環境のネガティブな影響を緩和することが知られています。また環境をコントロール(自分の好きに調節する)できる度合が高まるほど、満足感が高まり、ストレスが低減され、作業効率が上がることも予想できます(オニール O'Neill, 1992, 1993)。

 二つ目はバラエティーに富んだオフィス環境作りという点です。自分に合った環境を選択するためには、自分用のスペースを好きなように設えるという方法の他に、作業者が必要に応じていろいろな空間に自ら移動するという方法も考えられます。

 オフィスの中にいろいろな場所、大勢の人が集まれる広い部屋・一人になれる狭い部屋・活気にあふれた場所・静かな落ち着ける場所など、多くのバリエーションを持った空間が設定され、作業者がそれらを自由に選べるような状況を作ることはできないでしょうか。それが作業の単調感を緩和させ、環境へのコントロール感を高めることにもつながります。

 統一的な規格化されたオフィスは見た目は整然としているが、バラエティーという観点からは単調感を強め、作業者のストレスを増加させているとも考えられます。作業場の中での、ちょっとした気分転換の機会を与えることが必要なのです。

尾入 正哲(おいり まさあき)中京大学心理学部教授

産業心理学。
京都大学大学院文学研究科(心理学)修了。
1957年生まれ。

2020/04/28

  • 記事を共有