外国人労働者の増減をどう見るか 
どの国から来るのかに注目!

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竹田昌次 教授

 コンビニや外食チェーン店の店員さんが外国人なのは見慣れてしまった光景だ。これは愛知県が東京都についで2番目に外国人が多い県であるという事情にもよるが、全国的な現象でもある。人手不足を背景に一昨年の12月に改正された出入国管理法は、どうみても単純労働に就く外国人を留学生や技能実習生という「隠れ蓑」を使ってではなく、14分野に限定しながらも労働者として受け入れることに決めたものであり、昨年4月から在留資格「特定技能」の運用が開始された。

 この法律改正が重要なのは、従来の外国人労働者受け入れ方針とは質的に異なるからである。従来の方針とは1988年に閣議決定された第6次雇用対策基本計画に見られ、専門的、技術的な能力を有する外国人は可能な限り受け入れるが、「いわゆる単純労働者の受入れについては、諸外国の経験や労働市場を始めとする我が国の経済や社会に及ぼす影響等にもかんがみ、十分慎重に対応する」というものである。

 尚、在留資格は「活動に基づく在留資格」と「身分に基づく在留資格」に大別され、後者には、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれ、この方々には就労制限は全くなく、専門的、技術的な労働にも、単純労働にも自由に就ける。したがって外国人が単純労働に就けないのではなく、単純労働に就く外国人は、例えば日系ブラジル人であったり、日本人と結婚したフィリピン人だったりする。2018年の厚労省数値では、日本に約146万人の外国人労働者がいて、そのうち49.5万人(全体の39.9%)が「身分に基づく在留資格」によるもので、これに続くのが留学生の週28時間以内のアルバイト等の「資格外活動」34万3791人(同23.5%)、問題の多い「技能実習」が30万8489人(同21.1%)、そして可能な限り受け入れるとされた「専門的・技術的分野の在留資格」が27万6770人(同19.0%)である。

 さて、個別的な例外はあるものの、資本は豊かな国から貧しい国へ、労働は貧しい国から豊かな国へと流れていく。そういう意味では貧しい国からの外国人労働者が多くいる国は、豊かな国ということになる。そこで気になることは、例えば技能実習に限れば中国人は2011年には107,601人であったが2018年には77,806人に減少し、他方でベトナム人は13,524人から164,499人へと激増したことと関係する。中国人にとっては日本の海外就労先としての魅力は失せたようで、背景には中国の経済大国化があろう。そのうちベトナムも経済発展を遂げれば、と考えてしまう。外国人労働力の供給源の変化は、世界経済の不均等な発展の現われでもあり、それはまた世界経済に占める日本の地位が、この30年間に顕著に低下してきたこととも関わる。世界の人々、世界の若者は、もはやソニーではなく、サムスン、アップル、ファーウェイを持って歩いている。間もなく厚労省から2019年外国人雇用状況の数値が公表されるはずだが、関心をもって見ていくことにしよう。

竹田昌次(たけだ まさつぐ)中京大学総合政策学部教授

労働政策、人的資源管理論。
立命館大学大学院経営学研究科後期博士課程単位取得退学。
1954年生まれ。

2020/01/15

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