国際教養学部・渡邊准教授らの研究チームが高齢者における運動と食事の組み合わせに関する画期的な研究結果を米国の学術雑誌で発表

 国際教養学部の渡邊航平准教授をはじめとする研究グループは、高齢者における筋力トレーニングの効果を食品によって修飾する試みに成功した。この研究では、高齢者20人を対象とした8週間の筋力トレーニングを実施し、参加者の半数には魚肉タンパク(5g)を、もう一方の参加者にはコントロール食としてカゼイン(5g)をそれぞれ毎日摂取させ、2週間ごとに最大筋力、筋肉量、神経活動を詳細に評価した。8週間の介入により、最大筋力は両群とも同じように増加したが、筋肉量は魚肉タンパク群でのみ増加した。また、神経活動の変化はコントロール群で顕著に観察されたものの、魚肉タンパク群では顕著な変化は観察されなかった。

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 以上の結果から、筋肉を肥大させるなどの、何らかの効果を有する食品(本研究では魚肉タンパク)の摂取の有無によって、筋力トレーニングによるトレーニング効果の中身、すなわち筋肉および神経系におけるそれぞれの適応機序を選択的に変化させることができる可能性が示された。今回の研究では、神経活動を評価するため、運動神経の興奮性を多チャンネル表面筋電図法という特殊な方法を用いて記録・解析しており、この評価方法が、これまでの研究で十分に評価されていなかった「神経系の働き」を明らかにする重要なカギとなった。

 今後、食品の摂り方によって、同じトレーニングであっても筋肉もしくは神経を鍛え分けることが可能になるかもしれない。この研究成果は2019年10月9日付でJournal of Gerontology Series A: Biological Sciencesに先行オンライン掲載された。論文が採択されたJournal of Gerontology Series A: Biological Sciencesは、老年学の分野で2010年から現在まで世界で最も権威のある雑誌として位置付けられ続けている国際学術雑誌である(IF: 4.711)。

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 本研究は、中京大学、マリボル大学(スロベニア)、椙山女学園大学、京都大学、日本水産株式会社、京都産業大学との共同研究であり、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)およびSIP協力企業である日本水産株式会社より研究助成を受けて実施された。

【論文情報】

 Modulation of neural and muscular adaptation processes during resistance training by fish protein ingestions in older adults.

 Kohei Watanabe, Aleš Holobar, Yukiko Mita, Aya Tomita, Akito Yoshiko, Motoki Kouzaki, Kenji Uchida, Toshio Moritani

 Journal of Gerontology Series A: Biological Sciences

 中京大学国際教養学部 渡邊航平研究室ホームページ : http://kwatanabe.net/index.html

2019/10/15

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