人口減少社会と地域創生
地域の連携と人材育成が必要

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山田 光男 教授

 日本の人口は2008年をピークとして減少傾向にある。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測(平成29年推計)によれば、2015年に1億2,709万人であったのが、25年後の 2040年には1億1,092万人となる。なかでも15歳未満人口、生産年齢人口は減少し、逆に65歳以上人口は増加する。こうした年齢構成の変化は労働力人口の減少を通じて経済成長の低下要因となり、医療・介護サービス需要、年金給付額の増加につながる。地域の人口増減は出生・死亡の自然増減だけでなく、地域間移動による社会増減も関係する。人は生活のしやすいところ、便利なところ、働きやすいところに移動するため、東京およびその周辺、愛知県であれば名古屋周辺に人口が集まる。

 増田寛也編著『地方消滅』(2014)では、2010-2015年の人口移動パターンが将来も変わらなければ、2010-2040年の間に「20~39歳の女性人口」が5割以下に減少する市区町総数は896自治体(「消滅可能性都市」)、全体の49.8%にものぼるとされている。この「消滅可能性都市」のなかでさらに人口規模が小さく「消滅可能性が高い」町村として、愛知県では東栄町、設楽町、豊根村、飛島村が挙げられている。愛知県内の他の市町村はそれほどではないにしても、やがて人口減少が進み、地域経済の活力が低下する恐れがある。よい社会を形成するにはどうすればよいか、いかに地域を元気にするか、地方創生が大きな課題となる。

 一昨年末に中京大学と西尾信用金庫とは「産学連携・協力に関する基本協定書」を締結し、今年度から『新たな地域創生基盤基準の構築と西尾市経済への応用』に関する共同研究を行うことになった。西尾市は西三河南部に位置し、豊田市を中心とした愛知県の自動車産業の一翼を担っているまちであり、西尾抹茶や一色うなぎなどの農林水産品・加工品でもよく知られている。

 いま好調な自動車産業の恩恵を受けて西尾市経済は好況が続き、人手不足気味となっている。しかし、自動車産業もガソリン車など従来型自動車から電気自動車、プラグイン・ハイブリッド自動車、燃料電池車へと電動化の波が押し寄せている。電動化はエンジン、トランスミッションやガソリンタンクなどが不要となり、かわりにモーター、バッテリーなどが多用される。このことは自動車生産が好調だとしても、次第に必要となる自動車部品の構成がかわり、これまで西尾市で製造していた自動車部品の需要が低下する可能性があり、なにも対応しなれれば地域経済に与える影響は大きい。

 われわれは産学共同研究という枠組みで、いま学生と一緒に、このような地域の問題への取組みを始めた。地域創生は企業経営者、自治体、大学、地域金融機関、市民が知恵を出し合って自立的に新たな方策を考え出す努力することが重要である。そのような活動に大学も積極的に関わって、学生を交えた研究教育活動を展開することで、地域の課題に向き合うことが出来る次の世代の人材育成につなげたい。

山田光男(やまだみつお)  中京大学経済学部教授

計量経済学・産業連関分析、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程

1952年生まれ

2019/02/13

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