インターネット取引と消費者
契約内容確認の重要性

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杉島 由美子 教授

 スマートフォンの普及が進む中、インターネットを利用した取引は、消費者にとって利便性も高く、身近なものとなっている。他方で、ウェブサイト等に掲載された情報のみで商品を購入するか否かを判断しなければならず、実店舗で購入する場合とは異なった問題も生じうる。たとえば、送られてきた商品がイメージと異なっていたような場合、消費者は、どのような主張ができるのであろうか。

 事業者から消費者が商品等を購入するインターネット通販は通信販売の一形態であり、特定商取引法の規制対象となる。しかしながら、通信販売は、消費者が自らの意思により商品を購入するため、訪問販売等のように不意打ち性がなく、クーリング・オフ制度はない。そのため、商品を返品できるか否か、返品にかかる費用を誰が負担するのかについては、事業者がウェブサイト等で表示している返品特約に従って解決をはかることとなる。なお、返品特約が表示されていない場合には特定商取引法に規定があり、商品を受け取った日から8日間は費用を消費者が負担することで返品できるとされる。ただし、返品特約の表示があっても、返品できると規定されているとは限らない。インターネット通販を利用する場合は、購入前に事業者が表示している返品特約を確認しておくことが重要となる。

 ところで、消費者がインターネットを利用して行う取引は、インターネット通販に限られない。インターネットオークションやフリ-マーケットアプリ(フリマアプリ)を利用して、出品された品物を購入することもできる。経済産業省が取りまとめている「電子商取引に関する市場調査」によると、近年、フリマアプリ市場が急速に拡大しているという。他方で、フリマアプリ等のフリマサービスに関連する相談件数も増加しており、国民生活センターが注意を喚起している(国民生活センターHP「相談急増!フリマサービスでのトラブルにご注意」)。国民生活センターのHPには、「商品が届かない」「壊れた商品・偽物等が届いた」等の相談例が紹介されている。このような取引は、インターネット上でフリーマーケットを運営する事業者を介して当事者が取引するものであり、また運営会社が当事者間のトラブルに介入しない旨を利用規約に定めていることが多いこと等から、解決が困難な場合もあるという。なお、インターネット取引における問題点に関する法解釈については、経済産業省が「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」において考え方を示しており、問題解決に際して参考になろう。フリマアプリは、最近注目されているシェアリングエコノミーの一類型であるが、この分野の法整備は今後の動向が注目される。

 ICTの進展に伴い、私たちは利便性の高いサービスを受けることが可能となっている反面、契約関係も複雑化している。トラブルに巻き込まれないためにも、自分が結ぼうとしている契約内容を十分に確認し、理解することを心がけていきたい。

杉島(小川)由美子(すぎしま(おがわ)ゆみこ) 中京大学法学部教授

民法・消費者法

名古屋大学大学院法学研究科博士課程(後期課程)単位取得退学

1960年生まれ

2018/06/06

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