老人保健健康増進等事業の成果報告について

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稲葉一人教授

 事業名 : 日常生活や社会生活等において認知症の人の意思が適切に反映された生活が送れるようにするための意思決定支援のあり方に関する研究事業

 実施主体 : 学校法人梅村学園(文責・研究代表者・稲葉一人・中京大学教授)

【成果報告と概要】

 本事業において、認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドラインを作成した。

 本ガイドラインは、老人保健健康増進等事業としての平成27年度「認知症の行動・心理症状(BPSD)等に対し認知症の人の意思決定能力や責任能力を踏まえた対応のあり方に関する調査研究事業」と平成28年度「認知症の人の意思決定能力を踏まえた支援のあり方に関する研究事業」を踏まえ、委員会・ワーキング委員会の委員、さらに委員の所属されている組織、認知症当事者の方などからのご意見とともに、国内施設の訪問調査、意思決定支援について知見を有する専門家などからの聞き取り、文献調査の結果のほか、イギリスの2005年意思決定能力法(The Mental Capacity Act 2005)、「障害者の権利、意思及び選好を尊重する」と定めた障害者の権利に関する条約(2014年2月19日批准)、障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン(平成29年3月31日・厚生労働省)等を参考にしている。

 もっとも、意思決定支援という分野自体まだ始まったばかりの分野であり、かつ、先行する実践もまだ緒についたところである。そのため、ガイドライン自体は、倫理的・法的な観点を踏まえて、理念・考え方等のあるべき姿を中心として記載されているが、これが実際の現場で使えるためには、以下に指摘するような次のステップが必要である。

 ▶ ガイドラインの周知・広報 本事業において作成した、認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドラインは、医療や介護の専門職に限らず、広く認知症の人の生活を支える人を対象にしている。また、支援プロセスの手段的・技術的な面のみに着目することなく、認知症の人の意思決定の支援について、理念・考え方に遡って、支援のあり方を整理している。本ガイドラインについては、認知症の人に関わる全ての人に広く周知・広報されることが望まれる。

 ▶ 意思決定支援を担う専門職等への教育・研修 本ガイドラインは、認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定の場面を対象として、意思決定支援の原則・考え方を整理しているが、もちろん、あらゆる場面や個別状況に即した記述を行うには至っていない。よって、ガイドラインで示された原理原則を基礎として、意思決定の支援にかかわる専門職等によって、原理原則を柔軟にあてはめて実際の支援を行うことが求められる。そのため、本ガイドラインの内容について、意思決定支援を担う専門職を中心として、認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定の支援について教育・研修が展開されることが望まれる。

 ▶ ガイドライン内容のブラッシュアップ ガイドラインの本編にも示されているが、ガイドラインは現時点における状況等を踏まえた、いわゆる「初版」的な位置付けであると考えている。刻々と変化する認知症の人に対する支援の状況、認知症施策推進による社会環境などはもちろん、本ガイドラインが多くの人の目に触れ、集められるご意見・ご指摘を取り入れ、継続的に内容のブラッシュアップを行う必要がある。

※詳細は下記からご覧いただけます。

認知症の⼈の⽇常⽣活・社会⽣活における意思決定⽀援ガイドライン -案-

⽇常⽣活や社会⽣活等において認知症の⼈の意思が適切に反映された⽣活が送れるようにするための意思決定⽀援のあり⽅に関する研究事業 -報告書-

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