少子高齢化での市町村合併
費用削減だけで評価できるのか

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古川 章好 准教授

 主に1995年から2005年に渡って実施されてきた平成の大合併から10年以上が経過し、現在はその成果に関する評価が行われている。

 市町村合併の大きな目的の一つは、財政の効率化である。つまり、合併により無駄な施設等を統廃合することにより、これまでに必要であった施設の維持補修費を削減することが可能となり、財政負担を軽減することができる。また、少子高齢化の進展による人口減少を通じて、これまでの施設の維持が困難となる自治体に関しては、市町村合併による地域人口増加により税収を確保することができ、その税収で公共施設の維持が可能となる。そのような目的で実施されてきた市町村合併であるが、現在各方面で実施中の評価から判断すると、市町村合併の最大の目的は費用削減を通じた財政の効率化であったといえるだろう。現在も評価に関する分析が行われており、また数は少ないが現在も市町村合併が行われていることから、平成の大合併が成功であったかどうか結論付けることはできないが、これまでの議論から解釈すると、何らかの費用削減が実現しているのであれば、平成の大合併は成功ということになるのであろう。

 しかし、そのような費用削減を達成できた市町村合併は果たして本当に成功なのであろうか。例えば、大規模自治体と小規模自治体が合併して無駄な公共施設を統廃合することによって、費用を削減することができたためとしよう。前述の評価基準によればこの市町村合併は大成功である。しかし、無駄な公共施設として廃止された施設が、例えば小規模自治体の病院あるいは診療所であったとしよう。小規模自治体の住民にとっては、これは行政サービスの低下ともいえる。つまり、これまで近所にあった病院等が廃止され、遠方の病院を利用せざるを得なくなるということである。市町村合併によりこれまで身近に利用できていた病院がなくなったことにより公共交通機関を使って遠方の病院を使わなくてはならなくなり、明らかに余計な交通費を支払う必要が発生するため、サービスの低下といえるだろう。また、その大病院では、これまで近所の病院で行われてきた親身な診療も期待できない。

 少子高齢化が進行している現在、小規模自治体の住民の多くが高齢者であると予想されるが、今後高齢者のために必要とされる介護政策等を考えるのであれば、小規模自治体の病院や診療所こそ廃止するべきではない。しかし、財政の効率化が最大の目的であり、それが評価されるのであれば、今後も同様の現象が発生するであろう。市町村合併やその他の政策を評価する方法として費用削減はその効果を数値化しやすいことから、最も多く利用される評価方法であろう。しかし、その評価が必ずしも正しいとは限らない。私たちに求められていることは、政策の評価方法として費用削減が適切かどうか判断し、意見を表明することである。

古川 章好(ふるかわ あきよし)中京大学経済学部准教授

地方財政、公共経済学

名古屋市立大学大学院経済学研究科博士後期課程修了

1973年生まれ

2017/10/11

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