発達障がいを抱える方のストレスマネージメントをサポートする
ストレスを低減するために出来ること

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明翫 光宜 教授

 私は、発達障がい特性を抱える子どもや青年の支援に関する実践研究を18年ほど続けている。私が担当するグループは10名程度の小さなグループであるが、小学生低学年だった子どもたちも大学生年代や成人になっている。この支援活動で感じてきたことの1つは、発達障がい特性を抱えることはストレスに対する脆さを抱えていることである。不安や怒りの高さ、フラッシュバック、リラクゼーションが苦手であること、気持ちを言葉にすることの難しさなどが、ストレス反応をさらに高めていく。これらの問題に対応するため、またストレスに負けないための予防教育として私は感情のコントロールプログラムを学習し、研究するようになった。本稿では私が子どもたち・青年たちに教えているコツを紹介したい。

 我々は不安になったり、怒りを抱いたりした時にどうしているだろうか。大人であれば、美味しいもの食べたり、相談したり、趣味の活動をしたりとストレスを感じている時と全く異なった行動を自然にとっているのではないだろうか。そしてこの切り替えのことを「気分転換」と呼んでいる。それは活動を変えればネガティブ気持ちからポジティブな気持ちに切り替わることを利用している。私が「嫌な気持ちになったらどういているのかな?」と聞くと「知らん(何もしていない)」や「放置」という答えが返ってくる。発達障がい特性の有無に限らず、感情調整の苦手な子ども(青年・成人)は、嫌な感情が生じたらそのまま消えるまで待つしかないと考えているようだ。私たちのこころをテレビに例えると、嫌なテレビ番組があれば好きなテレビ番組に変えることを子どもたちと確認し、それが気分転換であると伝えている。

 いろいろなストレス対処法が存在するが、臨床心理学ではリラクゼーション・スキルを教えることが多い。私はいつでもどこでもできる方法として呼吸法に着目している。コツは、鼻から優しく息を吸い、吐くときは細く、長く「フー」っと4秒ぐらいかけて優しく吐いていく(個々によって呼吸のクセがあるのでリズムや強さを調整するために心拍変動バイオフィードバック法を援用している)。概ねコツがつかめるときに「今の気分は?」と聞くとイライラしながら相談に来ていた子も「今は大丈夫」と表情も和らぐことが多い。自分なりの得意な(可能な)ストレス対処法を持っていることが重要なように思う。

 不安や怒りの問題は、発達障がい特性を抱えた子どもだけに限らない。人は社会の中で関係を持ちつつ生きている以上、ストレスは体験するものであるし、不安や怒りはその時の生じる感情である。私たち大人もストレスを実感したら、まず細く長く吐くことで一息ついて、問題解決に向けて冷静に動いていきたいものである。

明翫光宜(みょうがん みつのり) 中京大学心理学部准教授

発達臨床心理学

中京大学大学院心理学研究科博士課程中退 博士(心理学、中京大学)

1979年生まれ

2017/09/07

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