終活、はじめますか?
超高齢社会における身終いのかたち
川島 大輔 准教授
日本は、今や4人に1人が高齢者という超高齢社会に突入しており、老々介護や医療費の高騰といった諸問題から、自分自身の最期をどこでどのように迎えるかについて、高い関心が寄せられています。昨今の終活ブームはその最たるもので、エンディングノートや終活フェアなどはテレビ報道や新聞でもよく取り上げられるようになってきました。
さて、ここまで読まれたあなたは、どの程度、終活に関心を持たれているでしょうか。まだまだ自分には関係ないと思われているでしょうか。それとも最近少し気になりだした。あるいはすでに取り組み始めている人もいるかもしれません。それでは国民の実態はどうでしょうか。経済産業省が行った調査では、お墓の準備に関しては半数程度の高齢者が具体的な準備を行っているようです。しかしその他の内容、たとえば相続や納骨・埋葬については、その方法を決定しているのは、それぞれ2割未満、3割程度に留まっています。またこうした準備をしない理由の半数程度は「まだ先のことだと思う」からだそうです。前出のエンディングノートについても、70代前半の半分程度がその存在を知ってはいるものの、実際にそれを書いた人は5.0%に留まっています。このように社会的な関心の高まりの一方で、実際終活に取り組む人はそれほど多くはないというのが現状のようです。
「やれやれ、それなら自分もまだ取り組む必要はないな。」と思われたかもしれません。しかし残念ながら、現代社会では、何もしないまま自分の望む最期を迎えることは、非常に難しいのかもしれません。たとえば、高齢者の半数強が最期を自宅で迎えたいと思っていることが複数の調査で報告されていますが、実際に自宅で亡くなるのは全体の1割程度です。また各種調査の結果からは9割程度の人が、無駄な治療はせず、なるべく自然に最期を迎えたいという希望を持っているようですが、そうしたことについてきちんと話し合っている割合は非常に低いです。明確に伝えずとも、周囲が自然と察してくれるという理想的なあり方もあるかもしれませんが、それが実際に叶う可能性は非常に低いと思わざるをえません。元気なうちから、自分が望む最期について文章に書き残しておいたり、周囲の人に話すことが大切でしょう。
とはいえ、なかなか行動に移せないのが人間です。筆者らが行った調査では、死への怖れが高いほど終活に取り組まない傾向も確認されています。あるいは、家族に話すとかえって負担に感じるのではと思うこともあるでしょう。それでも、生前に十分話し合いができたと感じる遺族の健康度は、そうでない遺族と比較して高いことも報告されています。確かにこれを実行するのは容易いことではありませんが、一方的に自分の希望を伝える、あるいは押し黙って全く伝えないという両極端なものではなく、お互いの考えや希望について十分話し合い、互いに納得できるかたちを探ることがまず持って必要なのではないでしょうか。
さて、あなたは、誰と、終活をはじめますか?
川島 大輔(かわしまだいすけ) 中京大学 心理学部准教授
生涯発達心理学,死生学,自殺予防学
京都大学大学院教育学研究科 博士後期課程単位習得退学
博士(教育学,京都大学)
1978年生まれ
2017/08/01
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研究・産官学連携
川島 大輔 准教授 |
日本は、今や4人に1人が高齢者という超高齢社会に突入しており、老々介護や医療費の高騰といった諸問題から、自分自身の最期をどこでどのように迎えるかについて、高い関心が寄せられています。昨今の終活ブームはその最たるもので、エンディングノートや終活フェアなどはテレビ報道や新聞でもよく取り上げられるようになってきました。
さて、ここまで読まれたあなたは、どの程度、終活に関心を持たれているでしょうか。まだまだ自分には関係ないと思われているでしょうか。それとも最近少し気になりだした。あるいはすでに取り組み始めている人もいるかもしれません。それでは国民の実態はどうでしょうか。経済産業省が行った調査では、お墓の準備に関しては半数程度の高齢者が具体的な準備を行っているようです。しかしその他の内容、たとえば相続や納骨・埋葬については、その方法を決定しているのは、それぞれ2割未満、3割程度に留まっています。またこうした準備をしない理由の半数程度は「まだ先のことだと思う」からだそうです。前出のエンディングノートについても、70代前半の半分程度がその存在を知ってはいるものの、実際にそれを書いた人は5.0%に留まっています。このように社会的な関心の高まりの一方で、実際終活に取り組む人はそれほど多くはないというのが現状のようです。
「やれやれ、それなら自分もまだ取り組む必要はないな。」と思われたかもしれません。しかし残念ながら、現代社会では、何もしないまま自分の望む最期を迎えることは、非常に難しいのかもしれません。たとえば、高齢者の半数強が最期を自宅で迎えたいと思っていることが複数の調査で報告されていますが、実際に自宅で亡くなるのは全体の1割程度です。また各種調査の結果からは9割程度の人が、無駄な治療はせず、なるべく自然に最期を迎えたいという希望を持っているようですが、そうしたことについてきちんと話し合っている割合は非常に低いです。明確に伝えずとも、周囲が自然と察してくれるという理想的なあり方もあるかもしれませんが、それが実際に叶う可能性は非常に低いと思わざるをえません。元気なうちから、自分が望む最期について文章に書き残しておいたり、周囲の人に話すことが大切でしょう。
とはいえ、なかなか行動に移せないのが人間です。筆者らが行った調査では、死への怖れが高いほど終活に取り組まない傾向も確認されています。あるいは、家族に話すとかえって負担に感じるのではと思うこともあるでしょう。それでも、生前に十分話し合いができたと感じる遺族の健康度は、そうでない遺族と比較して高いことも報告されています。確かにこれを実行するのは容易いことではありませんが、一方的に自分の希望を伝える、あるいは押し黙って全く伝えないという両極端なものではなく、お互いの考えや希望について十分話し合い、互いに納得できるかたちを探ることがまず持って必要なのではないでしょうか。
さて、あなたは、誰と、終活をはじめますか?
川島 大輔(かわしまだいすけ) 中京大学 心理学部准教授
生涯発達心理学,死生学,自殺予防学
京都大学大学院教育学研究科 博士後期課程単位習得退学
博士(教育学,京都大学)
1978年生まれ
2017/08/01