一枚のカードにも多様な法律関係
リボ払いの問題点とは

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濱崎 智江准教授

 多重債務は深刻な問題であり、その原因のひとつである利息の過払いは大きな社会問題であった。そのため、貸金業法と出資法が改正され、過払金返還請求が相次いだ。なおも請求の勢いは衰えないとの見方もあるが、請求権の時効消滅の観点からも事態は収束に向っている。

 しかし、多重債務に関する問題がなくなったわけではない。最近、国民生活センターではクレジットカードのリボルビング払い(リボ払い)に関する相談が増加傾向にある。リボ払いとは債務の額(残高)に応じて毎月一定の額(手数料を含む)を支払う方法で、支払残高に関係なく一定額を支払う定額方式と支払残高に応じて毎月の支払額が増減する残高スライド方式などがある。

 毎月、利用額の一部を支払うことで債務を繰延べするこの方式は、返済期間が長期化しやすいという大きな問題を抱えている。リボ払いは利用の総合計に適用され、利用金額の全てを支払うまで完済できない。また、支払残高が残るまま新たにリボ払いで買物をすることができるが、当然残高が増加し、返済期間が延びることになる。返済期間が長期化すれば、それだけ多くの手数料を払う必要がある。

 また、ショッピング時のリボ払いの問題として、手数料が高額である点を指摘することができる。ショッピング時のリボ払いでは各社で異なるものの概ね約15%前後の手数料が設定されている。出資法の上限金利が20%とされるものの住宅ローン等の金利と比較すると、買物の支払いに対する手数料としては高額である感が否めない。

 なお、消費貸借であるキャッシングと異なり、ショッピングのリボ払いの手数料には利息制限法や出資法は適用されない。したがって、過払金返還請求の対象外であることに加えて総量規制の対象から除外されている。つまり年収の3分の1以上の借入れがあっても新たなショッピングが可能となる。クレジット会社による立替払いまたは債権譲渡の「手数料」として設定されているためである。こういった点も多重債務化を助長する要因のひとつである。

 現在では、利便性を高めるため1枚のクレジットカードには多様な機能が搭載されている。ショッピング機能、キャッシング機能、カードローン機能などである。しかし、それぞれの取引が個別の法律関係として把握され、適用される法律もそれぞれ異なる。ショッピング機能には割賦販売法が適用され、キャッシング機能には利息制限法や出資法が適用されるなど規制するルールが異なるため、それを理解しておくことが非常に重要である。リボ専用カードと認識せず利用していた事例やリボ払いの仕組みを明確に認識せず手数料ばかり支払い、残高が減らない事例などあり問題点は多い。

 消費者として自己の身を守るためにも、規約や約款を確認し、手数料や支払条件など自分にあったものを吟味して利用することが望ましい。

濱崎 智江 (はまさき ちえ) 中京大学 法学部准教授

民法
神戸大学大学院法学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学
1974年生まれ

2017/01/24

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