情熱と工夫が教育を支える
教員を志す若者たちに
小磯 透 スポーツ科学部教授

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小磯 透教授

 我が国の教員の勤務はかなり過酷だと言われています。OECDの調査(2013年TALIS)によると、一週間当たりの仕事時間は34の参加国・地域平均の38時間に対し、我が国は54時間と最長です。教員の仕事の中核とも言える“授業”担当は、我が国は18時間で、平均の19時間とはそう大きな差はありません。我が国が突出して多いのは、課外活動の指導(放課後のスポーツ活動や文化活動)で8時間(平均2時間)、また、学校運営業務、一般的事務業務などのいわゆる事務処理もかなり多くなっています。他の調査でも、我が国の教員は授業以外の仕事が極端に多いとの指摘もあります。それでも、授業の計画や準備に使う時間は9時間で2番目に多く、我が国の教員は労働時間が長く、業務が数多くあっても、本来の職務である授業や、授業つくりに対してもしっかり取り組んでいます。その上、自己の資質能力をより高めようとする職能開発への動機付けが高く、自己研鑽への意欲が高いことも同調査で指摘されています。しかし、多忙なため研修や資格取得などに参加するには現実的には困難です。それでも先生方は、よりよい授業つくりに自ら努力しています。例えば、ポケットマネーで材料を買い、手作りで教材をつくる先生がたくさんいます。これは偏に子どもたちにわかりやすい授業をしたい、子どもたちの成長に力を尽くしたいという熱意からです。この教職に対する情熱は、教員に求められる資質として中教審の答申(平成17年)にも示されている通りで、その情熱を単なる気持ちだけではなく、しっかりと仕事として、教材や授業という現実にしているところが、やはり高度専門職たるゆえんでしょう。すなわち、教育基本法そのままに、自己の崇高な使命を自覚し、それを実現化しているのが我が国の先生方なのです。

 そして、そういった先生方のあとに続こうとする教員志望の学生たちもたくさんいます。この学生たちは、子どもたちの成長に寄与したい、子どもたちの理解や悩みに応えられるよう、自らの資質能力を高めようと学習し、努力しています。私の周りにも、学校現場で力を尽くしている先生方と同じようになりたい、と少ないお小遣いを捻出して手作り教材をつくり、子どもたちのことばかりを考えている学生がたくさんいます(図 手作り教材)。子どもたちにわかって欲しい、子どもたちの成長に寄与できる教員になりたいという一心からです。こういった高い志を持つ若者たちの今後に、大いにご期待ください。 

 

小磯 透 (こいそ とおる)  中京大学 スポーツ科学部教授 

保健体育科教育法
筑波大学大学院体育研究科修了
1958年生まれ

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手作り教材による学生の授業演習

2016/09/27

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