国際教養学部・長滝祥司教授のもとで共同研究中のNicola Liberati氏がThe 14th IEEE国際シンポジウムon Mixed and Augmented RealityのMASH'D Best Full Paper Award を受賞
「"Augmented "Ouch!". How to create intersubjective augmented objects into which we can bump". 」

 日本学術振興会外国人特別研究員(長期)として、国際教養学部の長滝祥司教授のもとで研究を遂行しているNicola Liberati氏(Pisa大学 Ph. D)が、The 14th IEEE International Symposium on Mixed and Augmented Realityにて、MASH'D (Media, Arts, Social Sciences, Humanities & Design) Best Full Paper Awardを受賞。受賞論文のタイトルは、"Augmented "Ouch!". How to create intersubjective augmented objects into which we can bump". 本学会は、拡張現実(Augmented Reality)研究に関して世界でもっとも権威ある学会であり、フル論文部門では二つの領域で賞が設定されている。本賞は、メディア、 芸術、社会科学、人間科学、デザインと多岐に渡る分野の研究が対象となっている。Liberati氏は、倍率数倍の一次選考を通過した約50カ国から500名以上参加した候補者との競争を勝ち抜いての受賞となった。氏の業績は、AR研究についての哲学的・現象学分析であり、この分野における新奇さと展開力が評価されての受賞となった。

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Nicola Liberati氏と長滝教授

 【研究の概要】

 本研究は拡張現実(Augmented Reality)を哲学的観点から分析している。拡張現実とは、情報技術によって知覚空間に新たな対象などを創り出すものである。本研究の目的は、複数のひとびとが知覚できるような(間主観的な)拡張現実的事物をデザインするための原理を提供し、それを日常世界のなかにビルトインする方途を探ることである。そのための前提として、現象学的観点、とくにフッサールとシュッツの研究から間主観性を概念分析することで、われわれの間主観的世界の構成原理を明らかにすることから始める。現象学は、間主観的世界を出発点として、間主観性がどのように可能になるかを分析している。本研究では、現象学的に明らかにされた上述の構成原理を拡張現実的な事物に適用することによって、そうした対象が日常世界のなかで間主観的になる可能性を論究する。特に、スマートフォンのような普及したデバイスを通路とすることで、拡張現実的事物へのアクセスが自由に可能になる状況が想定される。こうした状況においては、拡張現実的対象が日常的な事物のように、人々にとって間主観的なものとなる。

 【長滝教授のコメント】

 Liberati氏は、母校のPisa大学(ガリレオの母校でもある)で2014年に博士号を取得したあと、日本学術振興会のサポートにより中京大学で研究を始めて一年を経過しているが、この間めざましい成果を次々と発表している。私(長滝)との共同研究でも、国際的に権威あるジャーナルに論文を掲載したところである。Liberati氏は、現象学、技術哲学を理論的な土台として、拡張現実という新たな技術の分析と、この技術の展開に関する提言を行っている。将来においては、拡張現実に関する哲学的・現象学的研究において、世界をリードする研究者となるだけでなく、新しい世代の現象学や技術哲学の分野で影響力をもつ研究を発表することが期待される。

 

2016/01/06

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