心理学部の鬢櫛一夫教授が日本心理学会第77回大会で日本心理学会優秀論文賞受賞
「両眼固視中の片眼におけるコントラスト感度の低下」(本学非常勤講師の小澤良氏との共著)

鬢櫛一夫教授
鬢櫛 一夫教授

 心理学部の鬢櫛一夫教授が9月18日、日本心理学会第77回大会で日本心理学会優秀論文賞受賞を受賞した。同賞は、日本心理学会機関紙「心理学研究」および“Japanese Psychological Research”に掲載された原著論文の中から、学会に対して特に大きな貢献を果たした論文に贈られる。
授賞対象論文は本学非常勤講師の小澤良氏との共著で、心理学研究2013年第83号に掲載された「両眼固視中の片眼におけるコントラスト感度の低下」。

 

◆受賞論文「両眼固視中の片眼におけるコントラスト感度の低下」の概要

 両眼は約6cm離れているために、3次元世界を見ると左右眼の網膜像が僅かに異なる。この差異を視差というが、これにより単眼で見るときよりもはっきりとした立体感が得られることはよく知られている。この現象が両眼立体視である。しかし、視差があるということは網膜像が完全には一致しないことになるので、不一致の左右像をそのままにしておくと、世界は二重に見える可能性がある。普通こうはならず1つに見える。この現象を両眼単一視という。すなわち、われわれは異なる網膜像を利用して立体視を可能にしているだけでなく、不一致像を融合させて単一視することができる。本論文は単一視を可能とするための両眼視のメカニズムを心理物理実験によりに検討した。

 既に両眼で一点を持続して見続けたとき、数秒経過するうちに、どちらか一方の眼だけが視対象から耳側方向へと1度程度ずれても二重像が起こらず、両眼単一視が維持されるということが知られている。このことから一度、両眼単一視すると視覚系は一方の眼からの情報を主に用いて外界を知覚する可能性が示唆される。もしそうならば刺激固視を持続すると、片方の眼の感度は一定であっても、もう一方の眼の感度を低下させることで、二重像になることを防いでいるのではないか。このように仮定し、一連の実験で固視開始からの経過時間を変化させて各眼の感度変化を測定した。その結果、固視開始1秒以内では両眼とも一定だった感度が、それ以上経過すると、どちらか一方の眼だけの感度が低下することが確かめられた。

 以上から,視覚システムは固視を開始し両眼からの視覚情報を融合後,どちらか一方の眼からの情報を主に用いて安定した外界を知覚している可能性が示唆された。日常では眼球が頻繁に運動しているので、両眼単一視が安定していると考えられる。今後は融合可能な一致した両眼刺激に、さらに両眼で視野闘争する不一致な刺激を合わせて呈示したとき、このような両眼感度の変化がどのように影響されるかなどさらに検討を進めていきたい。

日本心理学会のホームページでも紹介されています

2013/10/30

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