先端共同研究機構の創設経緯について

前先端共同研究機構長 檜山幸夫

 私が先端共同研究機構(以下、先端機構と表記)を創った理由について、この機会に説明しておきたいと思います。

 先端機構は、2015年4月に、「中京大学の研究力を結集して、高度な学際的研究を推進し、もって大学としての研究機能を高度化するとともに、大学院教育を充実発展させることを目的」(先端共同研究機構規程第2条)として設置された機関ですが、その背景には全国の大学が選択を迫られているグローバル大学かローカル大学かを軸とした大学の差別化という政策下のなかで、中京大学としては如何に対処していくのかという命題に、主要大学と同様に本学の将来展望は飽くまでもグローバル大学を目指していくべきであるとの考えに立脚し、その実現のためには先ず中京大学を研究大学としていかなければならないという戦略構想がありました。研究大学を目指すには、大学としての研究力を高めることを意味しますが、それは同時に学部学生・大学院生に対する教育力を強化することでもあります。ここに、「研究の中京大学」と「教育の中京大学」が相互に連関し合える関係が成立し、教員と学生・院生が成長し、それが大学全体を大きく成長させるのではないかと考えます。

 さて、研究大学を目指すには、中京大学の研究力を強化することによって「研究する中京大学」を実現していかなければなりませんが、そのためには本学の実態を知る必要があります。本学の多くの教員は、公募制による研究業績審査を基準に採用されていることからそれぞれの分野や領域において優れた研究者から構成されているということから、この知的資源を活用することが求められます。ついで、私立大学としての特性(欠点でもあり利点でもある)である広範囲の専門分野にわたる教授陣と、11学部・11研究科を有する総合大学としての特徴から、本学は多領域・多分野からなる優れた研究者集団から構成されていることと、さらにそれは、これらの知的資産を融合し有機的に結合させ有効に活用できれば、学界はもとより国際的にも評価される時代をリードする優れた学際的研究を創造することが出来るのではないかと思われます。人文系・社会系・理科系という総合大学としての広域性からなる特徴を活かし、それらをうまく融合させていくならばかなり斬新で先端的で高度な研究を創り出すことができるという大きな可能性を秘めていることにもなります。したがって、本学にとって研究大学を志向して行くには、かかる優れた知的な人材の活用が不可欠な条件となります。

 さらに、本学には大学附置の共同研究組織として設置された人文系・社会系・理系からなる4研究所があり、これが中京大学の研究中枢機関の役割を担っています。さらに、かかる研究所には所属していない多くの優秀な教員が居ります。したがって、これらを組み合わせることで今までにない新しい研究を開拓する可能性があると考えました。勿論、それを実現するためには、各研究所が今まで以上に高いレベルの研究を推進し大学の研究をリードしていくことと、研究所に所属していない全ての教員が自らの研究をさらに充実させ実績を挙げていくことです。もっとも、研究実績とは学界で高い評価を得られる研究を行うと言うことで、形式的な機械的なものではありません。いずれにせよ、このような質の高い研究状況が基盤となってはじめて研究大学を志向することが出来るというのは言うまでもありません。

 それを踏まえて、(A)大学院研究科の11研究科群、(B)大学附置研究所と学部付属研究所からなる7研究所群、(C)研究所には所属していないか又は研究科には所属していないが国際的にも活躍したり学界を先導している優れた研究を行っている多くの教職員・研究員からなる研究者群を融合させる仕組みを造ることにしました。つまり、この三つの群を繋ぐ「場」として創ったのが、先端機構にほかなりません。

 したがって、先端機構は飽くまでもそれぞれの研究を繋ぐ「場」であり、中京大学の戦略的研究のプラットホーム的な存在であります。このため、先端機構が成果を上げるためには、先ず、(B)群の大学附置研究所が今まで以上に活発に共同研究を行いレベルの高い研究成果を挙げることであり、次に(C)群の研究所や研究科に所属していない研究者が自由活発に研究を行いより高い研究実績を挙げることであり、この両輪が潤滑に動いていく必要があります。大学は、これが実績を上げられるような研究環境を整備し、先端機構はその雰囲気を醸しだしチャンスを提供していく必要があります。それには、沢山の異なる分野の研究者と出会い知り合い交流することが必要です。研究を繋ぐ「場」とは、教員としての立場での交流ではなく、研究者としての交流の「場」を設定することで、そこでは未知の専門分野の研究者と学問を通じて研究者として交流することで、新しい研究課題を発掘したり、今まで考えつかなかったアイディアを見つけ出したり、さらには共同して研究することが出来る異分野・異領域の研究のパートナーを探し出すことでもあります。それを、先端機構では「先端サロン」と呼んで、研究者交流会という「場」を設けた所以です。

 このようなことを基に、機構としては①高度な学術共同研究、②学際的な共同研究、③国際的な学術共同研究を創り出し支援していく中で、そこにおける成果を大学院教育に還元することによって、研究を継承発展させていく若い人材を育成し、強いては研究大学から研究拠点大学へと発展させていきたい。

 このような夢を抱いて先端機構を創ったのですが、つくれたのはあくまでも枠組みだけで、これからは長谷川機構長を中心に実質的な活動を行っていくものと期待しています。