官民連携で地域振興につなげる
情報通信技術の高度化にともない、ビッグデータやAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティングなどの活用による技術革新が急速に進んでいる。わが国では多様な分野において、これら技術を用いることで、新しいサービスなどの創出による国民生活の利便性の向上と社会課題の解決を目指す、デジタル社会の実現に向けた取り組みが始まっている。
この社会を実現するための戦略の一つに、デジタル田園都市国家構想が挙げられる。人口減少や地域産業の空洞化など、さまざまな課題を抱える地方自治体は、地方創生と呼ばれる地域経済の強化を狙いとした地方活性化の政策に取り組んできた。しかし、これからは地方創生の取り組みに、デジタルの力と強みを活かしていくことで、地方が抱える社会課題の解決や地域の価値の向上につなげることが必要である。そして、この成長を原動力に地方から全国へのボトムアップとなることが期待される。
これまでわが国は電子行政の実現に向けて、透明で開かれた政府、オープンガバメントの確立を目標に掲げてきた。透明性、市民参加、官民連携の三つを基本原則としている。そして、オープンガバメントを確立する具体的な手段として、公共データのオープンデータ化と利活用を促進している。公共データを開放することで、行政機関のサービス提供におけるコスト削減や、オープンデータを活用した多様なコンテンツ提供による国民生活の向上など、さまざまな効果が得られると考えられている。
オープンデータとは機械判読可能な形式で公開されたデータで、営利目的、非営利目的を問わず、誰もが自由に使うことができる。ただし、利用する際はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従って、データ提供者の名前を残すというルールがある。現在、国および自治体は、公共データを公開することに加えて、それらを官民の連携によって利活用につなげ、実社会に役立てていくことが求められている。
われわれの研究室は、自治体における地域情報化やオープンデータ推進に関する研究を行ってきた。オープンデータには、どの自治体にも共通して存在するデータの他に、その地域らしいユニークなデータもある。例えば、地域のイベントに関するデータや地場産業に関するデータ、観光に関するデータなどが挙げられる。われわれは、市やその関連施設、企業との協働によって、それらユニークなデータを増やし、自治体での活用につなげる取り組みを行っている。
デジタル技術を地域振興に役立てていくためには、その地域の特徴を表す地域資源のデータが不可欠である。そして、地域資源は多義に渡ることから、官民が一体となって分野を超えた連携をとり、積極的なオープンデータ推進を進めていくことが重要となる。
【略歴】
兼松 篤子(かねまつ あつこ)
中京大学工学部講師
社会情報学
金城学院大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程修了
博士(社会学)