シニアの活躍支える評価に
学び直しを促す仕組みを

 人手不足が続くなか、60歳以降のシニア社員をどう生かすかは、企業にとって重い課題である。現場を知るベテランが抜ければ、若手育成、品質維持、取引先対応まで難しくなる。にもかかわらず、再雇用後に賃金が大きく下がり、補助的な仕事に移る例は少なくない。これでは本人の意欲が下がるだけではない。会社も、長年蓄積されたシニア社員の経験や信頼を十分に生かせない。

 もともと日本企業は、仕事を細かく固定せず、若い社員を長期に育てる仕組みを強みにしてきた。だが、この仕組みは高齢期には弱点にもなる。どんな役割を担う人なのかが曖昧なままでは、定年後に責任や役割を縮小しやすく、評価も賃金も下がりやすい。中高年の学び直しについての私の講義の学生レポートでも、「資格を取っても給料が変わらないなら意味を感じにくい」「何を学べば評価されるのか分からない」という声が多かった。問題は、本人のやる気だけではなく、学びと処遇を結ぶ制度が弱いことにある。

 そこで必要なのは、年齢だけで一律に処遇を下げるのではなく、最低限の生活を支える賃金を保障したうえで、若手指導、品質管理、顧客相談、技能継承、デジタル対応など、実際に担う役割に応じて手当や賞与を上乗せする仕組みである。何を担えばどう評価されるのかを見えるようにすれば、学び直しは「苦しい努力」ではなく、仕事を続けるための投資になる。

 ただし、全員に同じ学びを強制するのは無理だ。学生レポートには、仕事や家事で時間がない、費用が重い、体力的に厳しい、学びたくない人にまで求めるのは不安だという意見もあった。したがって、勤務時間内の短時間研修、オンライン講座、費用補助、職場や自治体の相談窓口を組み合わせ、学びたい人が無理なく始められる選択肢を用意することが重要である。正規の会社員だけでなく、非正規社員、自営業者、主婦・主夫にも届く制度にする視点も必要だ。

 図の人口ピラミッドのように2050年には若い層より高齢層が厚くなり、若い世代だけで社会を支えることはできない。高齢者を「支えられる側」とだけみるのではなく、経験を更新し、支える側にも回る人材と捉え直す必要がある。シニアの学び直しを支援し、それを役割と賃金に結びつけて正当に評価することが当たり前になってこそ、企業の競争力も、年金、医療、介護を支える社会全体の力も高まるだろう。

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【略歴】

大岡 頼光(おおおか よりみつ)

中京大学現代社会学部教授

専門分野:福祉社会学

最終学歴:博士(人間科学)大阪大学

西暦生年:1965年生まれ


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2026/05/25

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