出生率低下と未婚化の関係
子育てしやすい社会づくり
日本の合計特殊出生率(以下「出生率」)の大半は、未婚化(晩婚化と非婚化の両方を含む)によってもたらされている、このような説明を聞いてきた人が多いのではないだろうか。わが国の出生率は、1970年代半ばに人口置換水準である約2を割って以降低下してきて、2024年に1.15になった。出生率の変化は、「結婚行動の変化」(未婚化)と「夫婦の出生行動の変化」(子ども数の減少)によってもたらされた部分とに統計的に分解することができる。
既存研究によるとこの間の出生率低下の8割、研究によっては9割、が未婚化によってもたらされてきたと計算されている。この認識は少子化対策を行う国・自治体でも広く共有されている。これをふまえて、少子化対策では、若者たちの結婚を難しくしている雇用状況を改善することや異性との出会いの機会の創出が必要であるとされている。
だが、8割、9割とされる未婚化の影響というのはいささか大きすぎるのではないかと直感的に感じた人もいるのではないだろうか。実は、この結果は統計的には正しいのであるが、その計算において考慮できていない点がある。それは、未婚者が自分にとって理想とする子ども数、言い換えれば彼らが結婚したとしたら持ちたいと思う子ども数が年々減少しており、それも未婚化をすすめていることである。
出生動向基本調査によると、未婚者が希望する子ども数は、1982年に男性2.33人,女性2.28人であったが、2021年にはそれぞれ1.82人、1.79人まで減少している。これを研究したのが筆者であるが、分析の結果、自分が理想とする子ども数が少ないほど未婚者が結婚するタイミングが有意に遅くなっていることが観察された。子どもを欲しいという気持ちは未婚者が結婚をしようとする主な動機である。自分にとって理想とする子ども数が多い人ほど人生においてその数の子どもを持てるように早く結婚をしようとして、逆に、理想とする子ども数が少ない(あるいはゼロの)人は早く結婚しようとはしない。
出生率低下の大半は未婚率の上昇によってもたらされているが、その未婚率の上昇の一部は若者たちが多くの子どもを望まなくなったことから生じている。子どもを産み育てることの負担が大きいために、多くの子ども数をもつことを望めなくなったからでもある。
これをふまえると、未婚化に対しての少子化対策には、若者に対する就業の支援や結婚相手との出会いの支援のみでなく、若者が多くの子どもを望まない/望めない要因‐子育てそのものの負担、子どもを育てる経済的負担の重さ、仕事と子育ての両立の難しさ-への対策も必要である。
それは、一見すると、現在子どもを育てている家庭への支援のみにみえるかもしれない。だが、子育てしやすい社会づくりは、子育て世帯のためのものではなく、未婚者が子どもを持つことへの負担感・不安を軽減して、未婚率の減少と出生率の回復に寄与するものである。
【略歴】
松田 茂樹(まつだ しげき)
中京大学現代社会学部教授
専門分野:家族社会学
最終学歴:慶應義塾大学大学院単位取得退学 博士(社会学)
西暦生年:1970年生まれ
