組織における制御と自由のマネジメント
働く人々のモチベーション促す

 組織で働く人々のモチベーションを高めるには、一定の自由が欠かせないことは、多くの組織心理学・経営学研究によって示されている。自分で仕事の進め方を選び、判断できる余地があると、人は仕事に主体的に向き合いやすくなり、働くことそのものへの意欲が高まる。一方、組織は共通の目的を達成するために存在しているため、行動を一定の方向にそろえるように制御することも必要となる。したがって組織運営には、「自由を通じて意欲を引き出すこと」と「制御を通じて方向性を確保すること」という二つの要素が常に併存しており、この緊張関係をどうマネジメントするかが組織成果を大きく左右するのである。

 手順やルールを詳細に定めることは、外発的モチベーションの喚起には効果がある。報酬や評価などの外部からの働きかけによって行動を促すことは、短期的な成果の確保には向いている。しかし、働くことの喜びや意味づけといった深いレベルでの意欲を支えたい場合には、個人の内側から湧き上がる内発的モチベーションの促進が重要になる。

 この内発的モチベーションを高めるために特に重要なのが、「消極的自由」である。これは、管理者やルールによる過度な干渉がなく、自分の判断で行動できる状態を指す。人は、自分で考えて決めることができるという感覚を持つことで、自分の仕事に対する所有感や責任感を強める。反対に、細部まで管理され、逐一干渉される環境では、「自ら決める」という感覚が弱まり、モチベーションは大きく損なわれる。しかし、自由はまったく放任を意味するわけではない。目標や期待水準は明確に示されているが、その達成方法については一定の裁量が認められている状態が望ましい。この「自由に行動できるが、方向性は共有されている」という構造は、個人の心理的な充足感を高め、自発的な意欲の源泉となる。管理者が細部に入り込みすぎず、必要なときにだけサポートする姿勢を取ることが、モチベーションを引き出すうえでより効果的である。

 さらに、人は「積極的自由」、すなわち自ら価値を見出した目標を追求するときにも強い内発的モチベーションを獲得する。自分の担当する仕事が組織全体の目的とどのようにつながっているかを理解したとき、自分の役割への意味づけが深まり、働く意欲は一層高まる。そのため管理者は、目標を提示するだけでなく、タスクの意義や組織への貢献を具体的に示すことが求められる。また、組織文化という形の制御を通して価値観や行動基準が共有されることにより、外からの強制が感じられず個人と組織の方向性が自然に一致し、意欲的に働こうとする状態が形成される。共有された価値観は協力的な行動を促しつつ、働く意義を組織全体で支える基盤となる。

【略歴】

楊 一(よう はじめ)

中京大学経営学部講師

専門分野:組織論

最終学歴:大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了 博士(経営学)

西暦生年:1992生まれ

➁【中京大学】(写真)経営学部_楊一先生.jpg

2025/12/23

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