2025年景気シンポジウム「日本経済の現状と展望」開催
中京大学と中部経済同友会の共催による景気シンポジウムが12月2日、名古屋マリオットアソシアホテルで開催され600人以上の方が聴講されました。本シンポジウムは、中京大学の公開講座「経済・経営シリーズ」として毎年開催されており、年末の恒例行事として定着し今年で38回目となっています。日本経済の現状と展望をテーマにパネリストらが来年の見通しに関して意見を交わしました。

開講に先立ち、主催者を代表して梅村清英中京大学長よりご挨拶があり、1987年より始まった公開講座「経済・経営シリーズ」の開催趣旨やその歴史についての振り返りがありました。また、今年のシンポジウムは、米トランプ政権の関税政策による経済的な影響や、世界経済の地政学リスクなどの不透明感が漂う中での開催であり、企業経営者や一般投資家の今後の指針となるような内容への期待感を示されました。

中京大学の梅村清英学長(学校法人梅村学園総長・理事長)
続いて、中部経済同友会の「教育を考え行動する委員会」の九鬼綾子委員長より、登壇する各パネリストおよびコーディネーターに関するプロフィールの紹介があり、産官学を代表するパネリストらの将来予測に関する高い関心が寄せられました。

中部経済同友会「教育を考え行動する委員会」の九鬼綾子委員長(ミックインターナショナル株式会社代表取締役)
パネリストとして、経済産業省中部経済産業局の寺村英信局長、日本銀行名古屋支店の上口洋司支店長、中部経済同友会代表幹事で、新東工業株式会社の永井淳社長の3名が登壇され、コーディネーターは、中京大学経済学部の内田俊宏客員教授が務めました。
最初に口火を切ったのは、今年で3年連続の登壇となった寺村氏。昨年のシンポジウムでは、米国の関税政策の中部経済への影響について的確に分析した寺村氏は、米国の構造的な経常収支赤字を前提にトランプ政権の歴史的な高関税政策は継続すると予測。一方で、こうした状況下でも、日本企業はAIやロボット、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などへの成長投資を先送りしないことが企業の生産性向上につながると強調しました。さらに、2040年の就業構造を展望し、AI・ロボット等を活用する人材が300万人以上も不足するリスクを示し、大学等での理科系人材育成への期待感を示しました。

経済産業省中部経済産業局の寺村英信局長
続いて、上口氏は、米関税の日本経済への波及経路を整理した上で、東海3県の日銀短観では企業の業況感や設備投資が高水準で推移しているほか、来春闘での高い賃上げ率に期待感を示しました。金融政策に関しては、現在の物価上昇は『コストプッシュ型』の側面が強いと分析し、こうした環境下で利上げを行うと、物価は下がるが景気が悪化する可能性があるため、緩和状態の調節には丁寧に対応していくという姿勢を示しました。このほか、AI関連需要の現状を整理した上で、足もとで株式市場における米国のハイテク企業に対する評価は高まっているものの、PER(株価収益率)をみると過去のITバブル期ほど過熱している状況ではないが、今後も注視が必要との見方を示しました。

日本銀行名古屋支店の上口洋司支店長
永井氏は、鋳物製造から始まった新東工業が多角的な事業展開を行い、現在では世界23の国・地域に60拠点を持つグローバル企業へと成長した過程を振り返り、進出先に合わせた研究開発の重要性を示しました。また、国内で人材獲得が難しくなっている現状を踏まえ、「これからは人が会社を選ぶ時代。時代に合わせて企業が変わり、社員の夢や生活を応援できる魅力的な組織になることが優秀な人材の確保につながる」とし、企業のエンゲージメントやウェルビーイングの重要性を強調したほか、新東工業では、中京大卒のオリンピアンである水泳の難波暉選手をアスリート採用しており、多様な人材獲得の重要性について訴えました。

中部経済同友会の永井淳代表幹事(新東工業株式会社代表取締役社長)
最後にコーディネーターの内田氏は、米トランプ関税の影響や日中関係悪化によるインバウンドの落ち込みなどから景気調整局面入りの可能性を示唆しつつも、物価高局面における政府の経済対策による家計の下支え効果を評価。株高や実質賃金のプラス転換を背景に底堅い個人消費を予想。一方、来年の株式市場は、相場格言から、株価が天井を迎えるとされる24年から25年にかけての「辰巳天井」から、干支の中で最も株価が下がりやすい「午尻下がり」となる26年も、日銀の追加利上げが難しい経済財政環境や米FRBの利下げ可能性などを背景に5万円台を固め、史上最高値の更新を目指す展開を予想しました。

中京大学経済学部の内田俊宏客員教授
また、景気シンポジウムの司会を務めた加藤優希さん(現代社会学部2年・学生広報スタッフ「ライト」)は、大勢の聴講者を前にしても物怖じしない、ハキハキとしたアナウンスでスムーズな進行をサポートしました。

学生広報スタッフの加藤優希さん(現代社会学部2年)

