吉見夏陽選手がカヌー大学世界大会で決勝進出!カヌーという競技と向き合った12年間。日の丸を背負うまでの努力と覚悟に迫る
吉見夏陽(よしみ なつや・スポーツ科学部4年)選手は、約12年間、カヌー競技に青春を捧げた選手です。大学生の世界大会や全日本インカレを経験し、今年8月には、『2024 FISU WORLD UNIVERSITY CHAMPIONSHIP CANOE SPORTS』で男子カヤックフォアの大学日本代表として、見事決勝進出を果たしました。中京大学にはカヌー部がない中、地元のクラブチームでの練習やスポーツ科学部の学びを生かしながら競技を続けてきた吉見さんに、これまでの競技人生を振り返っていただきました。
カヌーとの出会い
吉見さんがカヌーに出会ったのは10歳の時。地元の愛知県みよし市にカヌークラブがあり、兄がそのクラブに所属していたことがきっかけでした。中学生時代は、カヌースプリントとカヌーポロの2つの競技に取り組んでいました。
全日本インカレでカヌースプリント シングルに出場された際の吉見夏陽選手
カヌースプリントとは、湖や池など穏やかな水面でボートを漕ぎ、直線コースでタイムを競う競技です。距離は200m、500m、1000mがあり、1人乗り(シングル)、2人乗り(ペア)、4人乗り(フォア)に分かれます。一斉にスタートし、ゴールを目指して疾走する迫力が特徴です。
カヌーポロ世界選手権に出場された際の吉見夏陽選手
一方、カヌーポロはカヌーに乗ったままボールを操り、バスケットボールのように上に設置されたゴールに得点を決めるスポーツで「水上の格闘技」とも呼ばれる激しい競技です。縦35m・横23mのコートで5対5のチーム戦が行われ、激しいボール争いが繰り広げられるのが魅力です。
高校進学後はカヌースプリントに専念した吉見さん。カヌーでインターハイや国体を目指していましたが、高校3年生の時に新型コロナウイルスの影響で大会が相次いで中止。目標を見失い、一度はカヌーを辞めることも考えました。しかし、「カヌーが好き」という思いに気づき、大学でも競技を続けることを決意しました。
中京大学での挑戦
中京大学にはカヌー部がなく、吉見さんは小学生の頃から通っている地元のクラブチームで練習を続ける一方で、大学のフィットネスプラザでの個人トレーニングに励みました。また、スポーツ科学部でトレーニング理論や栄養学を勉強する一方、自身でも解剖生理学などの本を読み、カヌーに生かせることを自ら進んで勉強しました。インカレなどの大学の試合ではコーチやチームメイトがいないため、他大学や他チームの選手に動画撮影を頼み、自身のパフォーマンスを見直すなど、環境のハンデを工夫で乗り越えました。
大学1、2年生の頃はコロナ禍で練習不足が続き、成績も振るわない時期がありました。そんな中、カヌーポロを中学3年生ぶりに再挑戦したことで競技への情熱を取り戻しました。大学2年生の夏にはカヌーポロのU21日本代表に選ばれ、世界大会に出場。この経験が転機となり、カヌースプリントで再び日の丸を背負う決意を固めました。
大学3年生になると、「あと1年本気で頑張ろう」という思いから、さらに練習に打ち込みました。その結果、大学4年生で大学日本代表に選ばれ、男子カヤックフォアで国際大会決勝進出という快挙を達成しました。
カヤックフォアで日の丸を背負った日本選手(中央右が吉見夏陽選手)
カヤックフォアの競技中の写真(前から4番目 吉見夏陽選手)
次世代への想い
現在、中京大学でカヌーを行う学生は吉見さんただ一人です。「自分の後輩にあたる世代が中京大学に入学し、同じようにカヌーで日本代表を目指すようになってほしい」と願う吉見さん。大学にカヌー部がないことが競技を続ける難しさにつながる一方で、部のない環境だからこそ競技から離れる自分の時間を大切にできたと振り返ります。「カヌー以外の趣味の時間を大切にできたことで、集中してカヌーと向き合えたことが良かった」と話しました。
8月末に開催された全日本インカレを区切りに競技生活を終えた吉見さんは、今後もカヌーに関わり続ける意向です。「今後は社会人として働きながらも子どもたちを指導し、カヌーの楽しさを伝えたい」と語る吉見さん。
吉見さんの競技人生を支えてきたのは、「カヌーが好き」という思いでした。その信念と覚悟が、多くの学生アスリートに希望を与えられる存在になったのではないでしょうか。幾度となく立ち塞がった『環境』という壁を乗り越えられたのは、自分の強い意思と覚悟があったからです。強い信念があれば夢や目標を追いかけ続け、そして掴み取ることができると証明してくれた吉見さん。「好き」という思いを軸に挑戦し続けるということはカヌー界だけでなく、中京大学の学生の道標のような存在です。競技を引退したセカンドライフでの活躍にも期待が高鳴ります。
取材:学生広報スタッフ「ライト」
文:酒井梨奈(総合政策学部3年)