陸上競技部 それぞれに募る思い大学最後の大舞台で躍動
神奈川県にある等々力競技場で9月19日~9月21日に行われた第93回日本学生陸上競技対校選手権(以下、全日本インカレ)で活躍した陸上競技部の4選手に取材しました。
町田裕輝選手
2年ぶりに全日本インカレに男子三段跳で出場した町田選手(スポーツ科学部4年)は大歓声の中で跳んだ大学陸上最後の大会は「あっという間だった」といいます。2年前は新型コロナウイルスの影響で声出し応援禁止、昨年は怪我で出場できませんでした。全日本インカレならではの会場の盛り上がりに「応援が凄すぎて力んでしまった」と納得のいくジャンプはできなかった様子でしたが、「それよりも楽しすぎました」と笑顔で話してくれました。
記録は15m71cmで5位入賞。目標としていた「16m」と「表彰台」には届きませんでしたが、「前日からずっと調子がよかった」といい、「一番感覚が良かった」という3本目のジャンプは「ごくわずかのところでファールとなったが、16m10cmくらい飛んでいた」と振り返ってくれました。
調子がよかった要因については、「特別なことはしていない」そうで、日頃から練習前に必ず動的ストレッチを入れるようにしたことと、量より質の練習に切り替えたことが大きかったようです。「高校生の時は、とにかく質より量だった」という町田選手が、練習やストレッチを見直すようになったのは、大学1年時の疲労骨折がきっかけ。コーチと相談して、今までのやり方から一転、量より質を求める方法に切り替えました。試合前のアップや前日練習は高校の時より30分くらい減らし、普段の練習でもジャンプの本数を減らしたそうです。「練習方法を変えてから記録が一気に伸びた」と自分にあった調整方法と練習方法を見つけ、跳躍を磨いてきた大学陸上。その4年間での学びや経験を生かし、目標の16mへ自信となるジャンプを見せました。
町田選手は「なぜ16m跳べないのかは分かっている」といい、冬季練習では課題に直結した練習に取り組みます。届きそうで届かなかった16m。社会人の舞台で跳ぶために残りの大学生活も質を求めて練習を積み重ねます。
谷垣大翔選手
男子競歩10000mで7位入賞を果たした谷垣選手(スポーツ科学部4年)。全日本インカレについて「一生の思い出に残る大会。今までで一番気合いも入れたし楽しかった」と振り返ってくれました。
レースについては、「最後だから悔いなく出し切りたい」と考えていたといい、スタートの合図とともに先頭へ飛び出しました。「人の後ろをついていくより、自分のペースで行く方が好き」と序盤は先頭で独走。後ろとの差をどんどん離していきました。しかしその後、集団に追いつかれてしまいます。それでも「僕は3㎞、6㎞、8㎞できついポイントが来る。ここで我慢できるかどうかが記録の善し悪しに関わってくると思っていた」と追いつかれながらも粘りの歩きで入賞をつかみ取りました。「我慢できたから入賞できた」と笑顔で話してくれた谷垣選手。「悔いなく出し切れた」自分の歩きに満足しているようでした。
谷垣選手が陸上を始めたのは中学1年生。そのときは長距離の選手でした。高校進学後、長距離のメンバーに選ばれなかったことをきっかけに競歩へ転向しました。そんな競歩について、「最後まで結果が分からないのが面白い。ゴールしてもゴール後の失格がある」とその魅力について語ってくれました。
高校から続けてきた競歩。全日本インカレが最後の公式戦だったそうです。「人間的にも競技的にも成長できた。もう競技は続けないです」そう話してくれた谷垣選手。「やりきった」そんな清々しい表情がとても印象的でした。
水谷佳歩選手
最後の全日本インカレに出場した女子七種競技の水谷選手(スポーツ科学研究科博士(前期)課程2年)。「勝つために仕上げて、やることはやってきた。絶対に1位をとるという強い気持ちを持って大学、大学院とやってきた最後の集大成」の全日本インカレに望みました。
結果は1位と12ポイント差で2位。優勝だけを目指してやってきた今大会を振り返って「絶対に勝てる試合だという自負を持ちながら臨んだのですが勝ちきれず悔しさが残る大会でした」と振り返ってくれました。「七種競技はそれぞれの競技で挽回のチャンスがあるところが魅力であり、最後の800m走まで勝てるチャンスがありましたが、そこで自分の弱さが出てしまい勝ちきれなかったことが本当に悔しいです。それでも社会人になっても競技は続けていくので、仕事をしながらにはなりますが、そこでどうやって苦しくなってきた時に自分の弱さ出さずにいけるようになるかという課題を見つけられた点では良い経験になりました。」と悔しさを感じながらも次のステージへと気持ちを切り替えて前を向いていました。
水谷選手の中京大学での大学4年間、大学院2年間の6年間を振り返り、「怪我もあり練習や競技が満足にできない事が多かったですが、競技だけでなく、人間としても自分をここまで成長させてもらったので、中京大学以外での陸上は考えられないくらい中京大学を選んで良かったです」と力強く方ってくれました。
社会人としての目標は「まずは1位タイの大阪記録の更新、次に全日本選手権での最高順位の5位を更新すること」を掲げてくれました。
怪我で苦しい時期を支えてくれた仲間や恩師の思いを背負って強くなってきた水谷選手。今回の全日本インカレでの悔しさも力に変えて更に大きな舞台へと駆け上がっていく今後の姿からも目が離せません。
大菅紗矢香選手
こちらも最後のインカレ出場となった女子七種競技の大菅選手(スポーツ科学部4年)。「日本一になる」という強い信念を持ち、支えてもらった人たちへの恩返しを結果という最高の形にして返したいと思い臨んだ今大会は「楽しみたい気持ちと緊張が混ざりながらの大会でした」と語ってくれました。
結果は水谷選手に次ぐ3位という形で幕を閉じました。「日本一になれなかったのはとても悔しいですが、憧れの先輩水谷さんと同じ舞台で戦うことができてよかったです」と高校の頃から追いかけてきた水谷選手と全日本インカレという最高の舞台で戦えたこと嬉しく思うと同時に悔しさを滲ませながら振り返ってくれました。そんな中でも得意の投擲のやり投げで1位、砲丸投げで2位と力を見せ、800m、200mでも3位となり、夏の苦しい練習を乗り越えた仲間にも成長した姿を見せることができました。
中京大学での競技生活を振り返り、「怪我をして苦しい時期も多かったですが、さまざまな方達に出会い、たくさんの仲間達に支えられた4年間でした」と振り返ってくれました。最後の1年間は中京大学の主将として町田選手と共に常に中京大学を背負ってきました。「主将をした事でチーム全体のことを考えるようになり、自分がやらないとみんなが困ってしまうということに気づき、本当に成長することができました」と自分主体の考え方から、チームのことを考えるようになり、競技だけでなく人としても成長したことを語ってくれました。
これからの目標は「次のオリンピックまでに日本一を獲る」という大きな目標を掲げてくれました。中京大学の4年間で多くのことを経験し、すべての面で強くなった大菅選手のこれからの活躍にも目が離せません。
今回取材した4人の選手は3月で中京大学から離れます。次の主将は山田晃佑選手(スポーツ科学部3年)と蟹江璃彩子選手(スポーツ科学部3年)、副主将に竹村蒼汰選手(スポーツ科学部3年)と吉田空叶選手(スポーツ科学部3年)です。この4人が中心となって偉大な先輩からバトンを受け取り創りあげていく陸上競技部。今後どのような活躍を見せるのか注目です。
取材・文文:学生広報スタッフ「ライト」
森下祐吉 (法学部4年)
上小牧空 (スポーツ科学部2年)
森岡奈未 (文学部2年)