心理学研究科/長谷川洋輔さん 学術誌"Frontiers in Psychology" に論文掲載
長谷川洋輔さん(心理学研究科 博士後期課程)と近藤洋史教授の共著論文が11月11日付で、学術誌 "Frontiers in Psychology" にオンライン掲載されました。
論文題目:Progressive changes in binocular perception from stereopsis to rivalry
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研究の背景
私たちには2つの目があり、それぞれ少し異なる位置から物体を見ています。左右の目で見えるものは少しだけ違いますが、私たちは世界を1つのまとまりとして認識して立体感を得ています。この「立体視」は、脳が2つの目からの情報をうまくまとめて、奥行きを計算することで可能となります。しかし、左右の目で見えるものが大きく違うと、脳はうまくまとめられず、どちらか片方の像だけが見えたりする「視野闘争」現象が生じます。脳がどのように情報をまとめているのかを知るためには、この2つの現象が重要になります。
目的
本研究では、立体視と視野闘争がどのように関係しているかを調べました。脳は立体視を優先することが知られていますが、それがどのくらいの「視差」に依存しているのかを確認しました。
方法
実験で使ったのは「1.5層ステレオグラム」という特殊な画像です。片方の目には縦の線を、もう片方の目には縦と横の線を見せて、立体視と視野闘争が同時に起こるようにしました。視差を調整して、どのように見え方が変わるかを測定しました。
結果と結論
視差が増えると、視野闘争が強くなり、立体視が抑えられることがわかりました。また、立体視が優先されているときも、視野闘争の状態が完全に無くなるわけではなく、両者が並行して処理されている可能性が示されました。これらの知見は、脳がどのように視覚情報を処理しているかを理解するための手がかりとなり、人間の知覚的な意識の解明にも役立ちます。