篠田理依さん(スポーツ科学部)と竹田良祐特任助教(スポーツ科学部)
日本トレーニング科学会で若手研究奨励賞を受賞

 第37回日本トレーニング科学会が11月2日・3日、川崎医療福祉大学(岡山県)にて開催され、篠田理依さん(スポーツ科学部4年、大学院奨励生、渡邊航平研究室)と竹田良祐特任助教(スポーツ科学部、渡邊航平研究室)が若手研究奨励賞をそれぞれ受賞しました。若手研究奨励賞は今大会の35件の対象発表の中から、今後のトレーニング科学分野の発展に貢献することが期待される若手研究者に与えられる賞で、5人の研究者に与えられました。

 篠田さんの研究発表は「中強度のレジスタンス運動はセット数を重ねても高強度のレジスタンス運動における運動単位の動員パターンを模擬できない」というタイトルでした。高強度で少ない回数を繰り返す筋力トレーニングと低強度で多くの回数を繰り返す筋力トレーニングのように、トレーニング強度が違っていても、トレーニング総量が同等あるいは疲労困憊まで実施すれば、筋肥大の効果は大差がないという研究結果が報告されています。しかしながら、実際にこれらのトレーニングで、運動中に同じような筋線維が活動しているのか、は明らかになっていません。篠田さんの研究では、筋線維の活動をコントロールしている運動神経の活動に注目し、この疑問に挑みました。実験の結果、低いトレーニング強度や中程度のトレーニング強度で多くの回数を繰り返すことと、高いトレーニング強度(最大の8割など)を用いることでは、運動中に活動する筋線維が同じではない、ことが明らかになりました。この結果は、高強度の筋力トレーニングには、他に替わりのないないトレーニング効果が存在する可能性を示しており、筋力トレーニングを実施するすべての人たちにとって重要な知見となります。

 竹田さんは「高血圧高齢者の運動神経の興奮性は運動直後の血圧応答と関連する」というタイトルで発表を行いました。厚生労働省の運動ガイドラインでは、高齢者においても健康づくりのために筋力トレーニングが推奨されています。その一方で、血圧などの心循環器系に関する身体の変化を適切に管理する必要性が指摘されており、特に高血圧患者では注意が必要であるとされています。日本の高齢者では半数近くが高血圧であることも知られていますが、こういった高齢者においても筋力トレーニングが健康づくりに効果的であることが報告されています。竹田さんの研究では、高血圧高齢者における運動前後での血圧の変動性が何によって生じるのかを明らかにすることで、適切な管理の下で安全に高齢者が筋力トレーニングに望めることを目指した研究を行っています。今回の発表では、運動神経の活動の個人差が、高血圧高齢者の運動前後の血圧の変動性に影響を与えるという仮説を立てた実験を行い、この仮説を支持する結果を得ました。このことは、事前に運動神経の活動を調べておくことで、筋力トレーニングを実施する際の心循環器系のリスクを推測できる可能性を示しています。先ほど触れたとおり、厚生労働省が作成する運動のガイドラインには、成人および高齢者に筋力トレーニングを推奨しています。これは、昨年、10年ぶりに改訂されたガイドラインに新たに追加された項目になります。篠田さんと竹田さんの研究は、筋トレが、アスリートだけでなく、多くの人々のライフスタイルに取り入れられていく現在や未来において非常に有益な研究成果であると言えます。

研究詳細

日本トレーニング科学会・若手研究奨励賞

・中強度のレジスタンス運動はセット数を重ねても高強度のレジスタンス運動における運動単位の動員パターンを模擬できない

篠田理依1)、西川太智1)、竹田良祐1)、渡邊航平1)

1)中京大学

・高血圧高齢者の運動神経の興奮性は運動直後の血圧応答と関連する

竹田良祐1)、廣野哲也2)、吉子彰人1)、功刀 峻3)、奥平柾道4)、上田彩笑子5)、西川太智1)、渡邊航平1)

1)中京大学、2)京都大学、3)愛知工業大学、4)岩手大学、5)金城学院大学

関連サイト  

渡邊航平研究室HP

http://kwatanabe.net/

★修正.png

(写真左から)渡邊航平教授、篠田理依さん、竹田良祐特任助教

2024/11/11

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