中日ドラゴンズ1軍ブルペン捕手の前田章宏さんに
インタビュー取材 学生広報スタッフ「ライト」
中京大学広報課学生広報スタッフ「ライト」の実地研修が8月7日、バンテリンドームナゴヤで行われました。この研修は、中日新聞社の協力で、プロスポーツの現場で取材ノウハウを学ぶことを目的としています。
今回、中日ドラゴンズの1軍ブルペン捕手兼用具担当である前田章宏さんにインタビュー取材を行いました。前田さんは中京大学附属中京高等学校(以下、中京大中京)の出身で、2年次に第82回全国高等学校野球選手権大会に出場。その後、2001年のドラフト会議で中日ドラゴンズに1位指名され入団しました。
Q: 中京大中京時代のお話をお伺いしたいと思います。どうして中京大中京に入学されたのですか?
前田さん: 父の影響が大きく、父も中京大中京出身で子供のころからずっとその話を聞いていたので、いつごろかは覚えていないですが、中京大中京に行きたいという気持ちが芽生えていました。中学に入学してからはずっと中京大中京を目指していました。
Q: プロ野球現役選手や関係者の中にも中京大中京出身の方がいると思いますが、今も繋がりを感じられることはありますか?
前田さん: 後輩がいれば挨拶してくれますし、試合も気になりますね。特に広島東洋カープの堂林翔太選手や磯村嘉孝選手とは現役時代も重なっていたので、よく話をします。
Q: 一番きつかった練習などはありますか?
前田さん: 大体きつかったですね。敢えて一番を選ぶなら、夏の大会が始まる前の3週間ぐらいの合宿です。本当に立てなくなるぐらいまで練習しました。捕れるか捕れないか際どいところへのノックを100球捕るまで終われないとか、30メートル走を100本走るとか、坂道ダッシュなど、過酷な練習がたくさんありました。
Q:甲子園というのは特別な場所でしたか?
前田さん: やっぱり特別でしたね。1年生の時にもベンチに入りましたが、何となく入れてもらった感じでした。2年生からレギュラーで試合に出るようになってからは甲子園を目指して練習してきたので、特別に感じました。
Q: 甲子園を経験した後、自分の中で変わったことはありましたか?
前田さん: 甲子園で智弁和歌山高校に負けた試合の敗因が自分のサインミスでした。1つのミスが勝敗に繋がることを感じ、その後の野球人生でも戒めにしています。この経験があったからこそ、長く野球を続けられたと思います。
Q: 3年生の時にドラフトで1巡目指名されましたが、その時の率直な感想を教えていただけますか?
前田さん: 正直に自分でいいのかと思いました。プロには行きたいと思っていましたが、1巡目で決まった時には自分でいいのかなという気持ちが半々でしたね。
Q: その状況の中でも、ここは自分の強みだと思った部分はありましたか?
前田さん: 肩の強さと体の強さには自信がありました。プロのキャンプに入った時に、そこしか勝てるところはないなと感じたので、そこを伸ばそうと頑張りました。
Q: プロ野球時代のお話をお聞きしたいのですが、1軍と2軍ではレベルの差は感じましたか?
前田さん: レベルの差は選手によりますが、1軍の選手の方がミスが少ないですね。当たり前のプレーが当たり前にできるのが1軍の選手です。
Q: プロ野球の世界に入って、考え方や見方が変わったことはありましたか?
前田さん: 思ったより華やかではないということですね。テレビに映っている選手も裏では非常に多くの練習をしています。
Q: 引退後、ブルペン捕手として日常的にどのような業務をされているのですか?
前田さん: 基本的にはピッチャーの練習に付き合います。キャッチボールやピッチング練習の球を捕ることが主な仕事です。試合中はブルペンで中継ぎピッチャーの球を捕り、準備を手伝います。
Q: 選手からブルペン捕手になった時、何か変化はありましたか?
前田さん: 現役の時より視野が広がりました。現役の時は自分が何とかしなければと思っていましたが、ブルペン捕手になってからは一歩引いて周りを見られるようになりました。
Q: ブルペン捕手としての役割の重要性はどのように感じていますか?
前田さん: 中継ぎピッチャーと接する時間が長いので、彼らが試合に臨みやすいコンディションやメンタル面を整えることが重要だと思います。
Q: 選手とのコミュニケーションで重要にしている部分はありますか?
前田さん: 年齢が離れていることが多いので、お互い気を使わなくていい空気づくりを心がけています。
Q: 二軍のバッテリーコーチの経験を今の役割に活かせていますか?
前田さん: コーチをしている時に、対等にコミュニケーションを取ることの重要性を学びました。その経験は今に活かせています。
Q: 10年ほどブルペン捕手を続けてきた中で、一番すごい選手は誰ですか?
前田さん: 皆それぞれの凄さがあり一番は決められませんが、山本昌投手のコントロールや浅尾拓也投手の球の質など、それぞれが異なる凄さを持っています。
Q: 中京大中京の後輩である髙橋宏斗投手の凄さは?
前田さん: メンタルが強く、良くても悪くても常に一定です。球の威力もすごいですが、感情の波が少ないことが彼の強みです。
Q: 先日、髙橋宏斗投手が防御率0.54(8月9日現在)を記録されましたが、どう思いますか?
前田さん: 持っているものの次元が違うと思います。防御率0.54は毎回いい成績を残さないと達成できないので、技術と精神的な強さが必要です。
Q: メンタル面がピッチングに現れますか?
前田さん: もちろん技術も大事ですが、メンタルも非常に大事です。プロ野球では毎日試合があるので、一喜一憂しないメンタルが必要です。
Q: キャッチャー陣とはどのようなコミュニケーションを取っていますか?
前田さん: ピッチャーのことに関してはあまり話しません。先入観が入ってしまうと試合に影響が出るので、自分で感じてゲームを組み立てることが大事です。
Q: プルペン捕手をしていて一番喜びを感じることは何ですか?
前田さん: ピッチャー陣が活躍して試合に勝った時が一番嬉しいです。
Q: 逆に大変だったことや苦労したことはありますか?
前田さん: キャンプ中は球を受ける量が多く、腰や肩が痛くなることはありますね。それ以外は楽しんでやっています。
Q: 中日ドラゴンズでのブルペン捕手は楽しいですか?
前田さん: 楽しいですね。良い選手ばかりで応援したくなりますし、自分も頑張れます。
Q: ブルペン捕手を続けていく中での想いを教えてください。
前田さん: 私たちも契約社会なので1年1年が勝負ですし、球団に恩返ししたいという思いがあります。何より優勝したいです。
Q: これからのキャリアについての目標はありますか?
前田さん: 今はブルペン捕手と用具に携わっていて、少しでも長くボールを捕る仕事を続けたいです。体や目が衰えてしまっているので、体をケアしながらやっていきたいです。
Q: 近日、母校の中京大中京が甲子園で初戦を迎えますが、何かコメントはありますか?
前田さん: 自分たちでつかみ取った甲子園なので、精一杯やってほしいと思います。勝てば嬉しいですが、今いる生徒たちが満足して終わることができればそれでいいと思います。
普段は聞くことのできないようなお話を聞き終始大興奮の私たちは、取材後にプロ野球の試合を観戦(中日ドラゴンズ×横浜DeNAベースターズ)。前田さんも注目していると語っていた、この日先発の松木平優太投手は7回無失点と好投し、白熱した試合展開を目の当たりにしました。プロ野球はシーズン後半戦に突入し、熱い試合が続いています。中京大中京は7年ぶりに甲子園に出場。中日ドラゴンズ、中京大中京ともに今後の活躍が期待されます。
取材 学生広報スタッフ「ライト」
文・インタビュー・撮影
大石 和佳奈(経営学部3年)
加藤 達也(工学部3年)
河澄 祥歩(文学部2年)
新野 由芽(スポーツ科学部4年)
鷲見 栞奈(スポーツ科学部3年)