梅村学園創立100周年を記念し
英語教育を振り返るシンポジウムを開催しました

 梅村学園創立100周年を記念したシンポジウムを5月27日、名古屋キャンパス清明ホールで開催しました。英語教育政策に共通の危機感を持ち、英語教育改革のために活動を共にしてから10年という節目にあたるシンポジウムで、それぞれ異なる領域を専門とする4氏が「英語教育の100年 振り返り、未来を拓く」をテーマに、これまでとこれからの英語教育について持論を展開しました。
 和歌山大学名誉教授の江利川春雄氏、東京大学客員教授の斎藤兆史氏、中京大学国際学部客員教授・立教大学名誉教授の鳥飼玖美子氏、中京大学国際学部客員教授の大津由紀雄氏が登壇しました。

 シンポジウムの開催に先立ち、国際学部の学生が登壇者にインタビューを実施。学生の「外国語教育がどのような社会を創り出せるとお考えですか」という質問に対して、「どのような相手をも理解できる、自由で平等な社会です」と外国語教育への期待を語りました。登壇者の話を聞いた学生たちは、「今回のインタビューを通して、"なぜ勉強しても英語力がなかなか向上しないのか"という疑問のヒントを見つけることができたと思います。今後の英語学習では、まず文法や国語力といった基礎を固めていきたいです」と語りました。

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先生方にインタビューを行う学生たち

 開会の挨拶で梅村清英学長は「8年ぶりのシンポジウム開催となります。4人の素晴らしい先生方にはさまざまな議論を交わしていただき、このシンポジウムが実りあるものになりますことを願っております」と述べました。

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開会の挨拶を述べる梅村学長

 最初に登壇した江利川氏は、この100年間の英語教育の歴史を振り返り「"文法・訳読"中心から"聴く・話す"などのコミュニケーションを重視したことで、英語力が低下している」と今日の英語教育施策の問題点を指摘。現状の課題を解決するために「まず母語(日本語)の学習に注力し、国語の知識を正確にしてから外国語を学ぶべき」と主張しました。

20230527_kokusai-20.jpg江利川春雄氏

 斎藤氏は南方熊楠をはじめとした、さまざまな外国語学習者の勉強法や指導法、英語に対する意識などを紹介しました。歴史上の英語の達人たちに共通する特徴として「良い英語教師の指導」「良い学友との出会い」「文学作品などの英書の多読」「学校外での地道な英語学習」の4点をまとめました。

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斎藤兆史氏

 鳥飼氏はAIや異文化コミュニケーションを軸として英会話教育の未来について語りました。機械翻訳や対話型AIが進歩し、習得に時間のかかる日常英会話を学ぶことの意義が見直される中でも、「英語を学ぶことで、未知の世界を生きる力を養うことができます」と述べました。

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鳥飼玖美子氏

 大津氏は「ことばの本性と外国語教育の目的を忘れなければ未来を拓けます」と述べ、「教員養成課程の再構築や現職教員の研修を充実させることが、英語教育の再生につながります」と、英語教育の未来に希望があることを語りました。

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大津由紀雄氏

 第2部の質疑応答では、効果的な指導法や子どもたちのやる気を引き出す方法など、教育関係者から多数の質問が寄せられました。「集中が続かない学習者にどのように配慮すべきか」という質問には、「教師が長々と解説するような授業は辞めた方が良いです。簡潔に問題提起したあとは課題を提示して、それぞれが主体的に考える時間をつくるのが良いと思います」と具体的に回答しました。

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討論・質疑応答の様子

 今回のシンポジウムを聴講していた中学校教員の参加者は「私たちの業務に身近な話をしていただけたので、非常に有意義な時間になりました。生徒のモチベーションを高めるために、英語を楽しいと思ってもらえる工夫を考えていきたいと思います」と、今後の授業方針を考え直すきっかけになったことを語りました。

登壇者にインタビューを行った学生

能登日向子さん(国際学部4年)
石原希穂さん(同4年)
江坂真宏ブライアンさん(同4年)



 

2023/06/02

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