国際教養学部・吉子彰人助教らの研究課題が中冨健康科学振興財団の研究助成に採択

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吉子 彰人助教

 令和2年2月、国際教養学部の吉子彰人助教のグループの研究課題「加齢に伴う拮抗筋の筋力低下に関連する要因の探索」が(公財)中冨健康科学振興財団の研究助成に採択された。これは「国民の健康の維持・増進を図り、もって活力ある豊かな経済社会の実現に寄与する研究」への助成をコンセプトとするものである。研究課題には医学研究が多いため、スポーツ健康科学を専門とする研究者への助成が限られている中での採択となった。今回採択された研究課題は、同学部・准教授の渡邊航平氏および名古屋大学との共同研究として実施される。

研究課題「加齢に伴う拮抗筋の筋力低下に関連する要因の探索」の概要

 年を重ねると「歩く速度が遅くなった」「階段の上り下りがつらい」「椅子からの立ち上がりが難しい」ということをよく耳にする。これらの原因の1つには「筋力の低下」が挙げられる。加齢による筋力の低下は「ダイナペニア (Dynapenia)」として定義されており、転倒や日常生活機能の低下との関連が指摘されている。

なぜ高齢者で筋力の低下が起こるのか?

 筋力低下の原因の1つとして「筋肉の質の低下」が挙げられる。具体的に筋肉の質とは何を指すのだろうか。「例えばスーパーで売られている牛肉を思い浮かべてみてください」と吉子助教は話す。牛肉には脂身が少ない赤身肉と、脂身が多い霜降り肉がある。筋肉の質の低下とは、「筋肉の中に脂肪・結合組織が増加していること」、すなわち霜降り化してしまった状態を示す。実際、高齢者において、筋肉の質を決める"筋肉内脂肪率"は、若齢者の1.2〜2.0倍であることが明らかにされている (図1)。これまで吉子助教は、高齢者の筋肉の質に関する研究に意欲的に取り組んでおり、その性質や特徴を解明してきた (Yoshiko et al. Exp Gerontol 2017, Eur J Appl Physiol 2018, Ultrasound Med Biol 2019など).

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高齢者の筋力低下に影響する複数の要因

 近年では「筋肉の質の低下」に「筋肉量の減少」と「神経機能の低下」を加えた3つの要因が、高齢者の筋力低下に関係すると言われている。「筋肉量の減少」はいわゆる"見た目"でも判断できるように、手足が痩せ、細くなってしまう状態のことである。さらに神経機能とは、筋肉が動くように送られる指令のことで、高齢者では、若齢者よりも、この指令の数が少なくなってしまうことが分かっている。すなわち高齢者では、これら3つの要因「筋肉量の減少」「筋肉の質の低下」「神経機能の低下」が複雑に影響し合いながら、筋力低下が起こっていると考えられる。

 しかしながら、これらの要因を網羅的に検討した研究は少ない。今回の研究課題では、高齢者および若齢者の「筋肉量」「筋肉の質」「神経機能」を太ももの前側の筋肉と後側の筋肉で測定し、筋力低下に影響する原因が太ももの部分で異なるかどうかを検討するという。「自立した日常生活を送ることは高齢者にとって非常に重要です。そのため、身体動作を担う骨格筋にどのような加齢性変化が起こっているかを明らかにすることは有意義だと考えます。本研究によって、加齢に伴う筋力低下の新たなメカニズムが明らかなるのではないかと期待しています」と吉子助教は研究に対する意気込みを語った。なお助成金の贈呈式は3月18日、都内にて行われる。

研究課題名:加齢に伴う拮抗筋の筋力低下に関連する要因の探索

主任研究者:中京大学国際教養学部・助教 吉子彰人

共同研究者:中京大学国際教養学部・准教授 渡邊航平

共同研究者:名古屋大学総合保健体育科学センター・教授 秋間 広

中冨健康科学振興財団ホームページ:http://www.nakatomi.or.jp/index.html

国際教養学部・助教 吉子彰人氏の研究情報:https://researchmap.jp/a-yoshiko/

2020/02/17

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