大学スポーツシンポジウム開催 UNIVASの発足を受けて

 一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が3月1日に発足し、大学スポーツの新たなあり方などの模索、実現に向かってスタートした。18日開かれた総会の時点で参加しているのは197大学と31団体。UNIVAS設立時の加入大学としての募集は4月26日まで続けられている。中京大学は発足と同時に加入を済ませたが、時期尚早として加入を踏みとどまる大学もある。

 そんな折、学校教育におけるスポーツの位置づけや大学スポーツのあるべき姿などについて意見交換を目的にしたシンポジウムが3月20日、東京・文京区の筑波大学東京キャンパスで開かれた。主催したのは、昨年4月に発足した筑波大アスレチックデパートメントで、筑波大、神奈川大、関西学院大と中京大の4大学が参加した。中京大を除く3大学はUNIVASへの加入をしておらず、現段階では加入を控える姿勢を示している。

 「学校スポーツの現在地と思い描く未来」と題したシンポジウムは、午前の第一部は大学経営陣により、「学校教育におけるスポーツの位置付け」をテーマに、午後の第二部では「大学スポーツの現在地と思い描く未来」についてそれぞれパネルディスカッションが行われた。

 第一部ではまず、筑波大学の永田恭介学長がオープニングスピーチに立ち、「大学こそが責任の主体であり、(学生たちの)学業充実、成績管理、キャリア支援などは当然、大学の責任。学生たちが安心して取り組めるようにガバナンスの体制構築をしなければならない」などと述べた。

 パネルディスカッションでは、各大学から意見が述べられた。大学スポーツ協会設立準備委員会がまとめたUNIVASの学業充実、安全安心・医科学、事業・マーケティングなど14のテーマの最終報告については各大学とも「賛同する」との意見で一致した。ただ、UNIVASの体制には、「大学が完全なる主体となっていない」と疑問の声も出された。

 中京大学からは、松尾貴光企画局長とスポーツ振興部の小栗優貴係長が出席し、第一部で松尾企画局長が、第二部では小栗係長が意見を述べた。

 第一部で松尾企画局長は、中京大には「学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ」という建学の精神があり、「学術とスポーツの調和」を本学の使命としてスポーツには特別な思いを抱いている。同時に時代の流れの中で、学校スポーツのあり方には常々疑問も持ってきた。2015年8月には梅村学園・中京大学スポーツ将来構想会議を理事会のもとに設け、本学のスポーツのあり方について議論を進めた。そして2018年、体育会組織の大改革を行ったことを報告した。

 これまで大学の外部組織として位置づけていた体育会を、大学の管理下に置いて、体育会活動を「正課外教育」とした。これによって大学スポーツが正式に教育活動の一環となり、併せて、これまで位置づけに不明確さがあった学外指導者と業務委託契約を結ぶことによってその位置づけを明確にした。委託契約は、指導者の業務が有償、無償に問わず、結んでいる。

 各大学が大学スポーツに対してどういうポジションをとるべきか考えなくてはならない。体育会組織が外部組織であるのであれば、施設使用料を取っているのか、そうでなければそれはどう説明されるのか。万一、体育会で事故や不祥事が起きた場合に、学外組織のことであるとして貫き通せるのか。そのロジックは既に崩壊しており、もちろん世論もそれを許さない。

 大学は体育会活動に積極的に関与し、責任を持つべき。これはリスクマネジメントでもあると述べた。

IMG_2420.JPG報告する松尾企画局長

 また、午後に行われた。第二部では小栗係長が登壇した。大学スポーツの現在地について、日本のスポーツは、独自の文化を形成してきた面がある。現在でもさまざまなハラスメント、指導者の質などで、時代錯誤ともいえる「正常とは言い難い」状況が少なくない。スポーツ界全体で今後、膿を出していく作業が続いていくことになりそうだとした上で、同時にスポーツには多くの可能性があることも確か。例えば、J1ヴィッセル神戸へのイニエスタ選手(元スペイン代表)加入で社会から多くの耳目が集まったように、"エンタメ化"の進展も予想されると述べた。

そうした状況の中で、大学スポーツ政策についてはやはり、「正常化」と「最大化」を中長期の展望にしているとした。正常化では、各部会計の透明化、指導者の研修、学業とスポーツの両立、安全管理などの模範事例を東海地区の大学に情報公開していき、東海地方の大学スポーツを牽引していく気概を持ちたいと力を込めた。

一方、最大化に関しては、スポーツ活動の産学官の地域連携をより強固にしていくことを第一に掲げた。特に本学のように関東でも関西でもないエリアでは地域との関係をより密接なものにし、地域のファンづくりにもつなげていきたい。実際、本学のある豊田市はスポーツ活動に積極的で、同市、トヨタ自動車との連携体制には強固なものがあり、2018年の平昌冬季五輪では本学関係の選手が出場のフィギュアスケートなどのパブリックビューイングを共催したことなどを説明した。

IMG_2426.JPG小栗係長のプレゼンテーション 

 このほか、名古屋テレビ、NTT西日本、ミズノ、JICA、東海東京証券などともスポーツを通じて連携しており、こうした連携は今後も指導者、施設などのソフト、ハードの面以外のさまざまな分野での可能性を探っていきたいと語った。

 今後はこのようなシンポジウムを東海や関西地区でも開催し、大学におけるスポーツのあり方を議論していく。

2019/04/17

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