中京大学工学部の野浪亨教授の研究グループ、リンを吸着する能力が極めて高い新セラミックス素材の人工合成(開発)に成功

 中京大学工学部機械システム工学科の野浪亨教授の研究グループが、赤潮や藻の発生原因となっているリンを吸着する能力が極めて高い新セラミックス材料「ディオプサイド」(ケイ酸カルシウム系セラミックス)の開発に成功した。

 

 新セラミックス材料の「ディオプサイド」は、ゾルゲル法という作り方で人工合成した。合成する際の条件を様々に設定して確かめたところ、低温(650℃程度)で合成した「ディオプサイド」は、リンの吸着能力が極めて高いことを発見した。従来のリンを吸着する素材としては、アパタイトやゼオライト、天然のディオプサイドがあるが、人工合成されたディオプサイトはこれらの9倍以上の吸着能力を持っていることが確認された。

 

 材料製法等についてはすでに学会等で発表しているが、新セラミックス材料「ディオプサイド」の開発について、7月26日から始まった「 下水道展’16名古屋」(7/29まで、ポートメッセなごや)でブース出展して公表した。出展の前日に作成した、リンを吸着するコンクリートも合わせて展示した。

 ブース出展に同行した中京大学情報科学研究科2年の早川慎吾さんは「ブース出展初日の午前中だけで4、5社の企業が関心を持ち、訪れました。要望やこちらからの提案を伝えるなど、おおむね企業の反応はいいと思います」と手応えを感じていた。

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写真右=記者に説明を行う野浪教授 写真左=企業に説明を行う早川さん

 

 

 野浪教授は、今後の実用化の展望について、「まだ基礎的な研究の段階であり、実際の河川や下水道に近い溶液中でのリン吸着能を評価し、現場での実証実験、ミニプラント実験を経てプラント化を行う必要がある」としたうえで、「水槽などでの藻の発生を抑える材料としての応用展開もある。リン自体が産業用材料として扱われ、将来的な埋蔵資源の枯渇が危惧されている。今回の技術が再利用の方法の一つとして検討される可能性がある」と話している。

 

 研究は、1988年ころから続られており、当初はインプラント用として生体内で早期に骨と結合する材料として、100種類以上の鉱物を調査し、ディオプサイドが最も優れていることを発見した(最初の学会発表は1989年にボストンで開催された「Material Research Society」)。

 その後も人工骨材料としての研究を続けたが(ディオプサイドと擬似体液を用いた初期う蝕の修復に関する研究, 第54回日本歯科理工学会秋季学術講演会、2009年10月等)、2008年ころから、ゾルゲル法によるディオプサイドの合成の研究を始めた。

 今後は8月に開催されるWET2016(水環境学会)で水処理への応用に関しての提案を行う。

 WET2016; 中央大学(東京), 2016年8月27日から28日

 発表題名;Diopside Synthesized by Sol-gel Method for Phosphorus Adsorption Material: Evaluation of Apatite Deposition in Pseudo Body Solution

2016/07/28

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