国際教養学部の渡邊航平准教授がデサントスポーツ科学振興財団に優秀入選
研究課題「走運動時におけるハムストリングスの活動特性の部位差~肉離れ発症メカニズム解明への新たなアプローチ」
渡邊 航平准教授 |
国際教養学部の渡邊航平准教授が(公財)石本記念デサントスポーツ科学振興財団の学術研究助成に優秀入選として採択された(授賞式は6月6日、都内で行われる)。同賞は、受賞者がこれまで行ってきたスポーツ関連科学に関する研究を助成することによって、その研究がさらに発展・充実することを期待し与えられるものである。受賞対象の研究課題は「走運動時におけるハムストリングスの活動特性の部位差~肉離れ発症メカニズム解明への新たなアプローチ」である。
◆これまでの研究と受賞研究課題との関連
ヒトを含めた動物の身体各部には1つの関節をまたぐ“単関節筋”と共に2つの関節をまたぐ“二関節筋”と呼ばれる筋が配列されている。二関節筋は、我々が円滑に身体を動かすためには不可欠な存在とされているが、運動中にどのようにコントロールされているかは不明な点が多い。例えば、ヒト型ロボットの多くには単関節筋にあたるモーターしか搭載されておらず、ロボット特有のぎこちない動きは二関節筋が存在しないことが関連するとも言われている。
渡邊准教授は、京都大学大学院応用生理学研究室の森谷敏夫教授および京都大学大学院神経生理学研究室の神﨑素樹准教授との共同研究によって、ヒトの二関節筋の1つである大腿直筋において、“1つの筋肉は全体が1つの筋として同じように活動・機能していない”ことを明らかにしている (Watanabe, Kouzaki,Moritani. J Electromyogr Kinesiol 2012, Muscle Nerve 2013, Muscle Nerve 2014, Eur J Appl Physiol 2014)。わかりやすく言えば、1つの筋肉の中でも場所によって“分業”して働いているということである。このことは、二関節筋が運動中にどのようにコントロールされているかを明らかにする上で非常に重要な発見であると言える。同氏は、この新たな知見を高齢者・障害者の歩行機能障害やスポーツ傷害の発生メカニズムに関する研究へ応用し始めており、その一部が今回の受賞研究課題にあたる。
◆受賞研究課題「走運動時におけるハムストリングスの活動特性の部位差~肉離れ発症メカニズム解明への新たなアプローチ」の概要
ハムストリングスは太ももの裏側にある二関節筋であり、肉離れなどのスポーツ傷害の頻発部位である。興味深いことに肉離れはほとんどの場合、二関節筋で生じるが、その傷害発症メカニズムはほとんど明らかにされていない。渡邊准教授は、自身らが明らかにしてきた“1つの筋肉は全体が1つの筋として同じように活動・機能していない”ことが、二関節筋における肉離れの発症メカニズムに強く関連していると考え、研究を進めている。これまで、多くの研究者が取り組んできた“肉離れ”に関する研究に対して、新しい切り口からアプローチすることにより、当該研究課題が大きく進展することが期待される。
これらの研究は、国内外の関連学会でトピックとして扱われており、今夏にイタリア・ローマで開催されるInternational Society for Electrophysiology and KinesiologyのSpecial sessionおよび岡山県で開催される日本運動生理学会のキーノートレクチャー(筋生理)では、それぞれ招待講演者として同氏が登壇し、研究成果を紹介する。名古屋キャンパス体育館内の実験室では日々、世界へ向けた挑戦が続けられている。
中京大学国際教養学部渡邊航平ホームページでは研究成果を詳細に掲載しています。