大切な人的接触をどこまで残すか
人手不足と省力化の進展

 最近、特に飲食業、ホテル、小売業などを中心に機械化、自動化による省力化が進展している。少子高齢化が進展し、人手不足や人件費上昇が問題になっているなかでは、機械化、自動化による省力化は致し方ないであろう。少子化の問題があるので、今後も人手不足の問題はなかなか改善されそうにない。機械化、自動化を推進させることは人手不足への対応につながるし、業務の合理化のために必要なことである。例えば、小売業でのセルフレジの導入は顧客の待ち時間の短縮につながり、キャッシュレス決済の促進にもつながっていくことになるので利便性がある。セルフレジの操作やキャッシュレス決済に慣れている人たちにとっては便利である。

 ただし、高齢者などのセルフレジの操作にあまり慣れていない人たちにとっては少々戸惑うこともあるのではないだろうか。そしてレジの操作方法が急に変更になることがあり、せっかく慣れたと思ったら、また新しい操作方法に慣れなければならないことがある。なるべくそうした変更やセルフレジの新規導入があるときには、その企業のホームページ上での告知や店内での告知などにより、あらかじめ周知してほしいものである。顧客にセルフサービスを求めるのであるから、そうしたことは必要であり、顧客本位の立場で考えることが必要である。

 このような省力化への動きは飲食業、ホテルでも広がりをみせてきている。 例えば、飲食業ではメニューの注文や決済の自動化が進んでいるし、配膳ロボットを導入しているところもある。これらにより、人手不足に対応できるし、利用客への対応がよりスムーズになるので収益改善にもつながるであろう。ホテルでは、自動チェックインや自動チェックアウト、鍵の受け渡しの自動化などを行っているところがある。ホテルのフロントに出向かず係員との対面接触なしに、これらの自動化されたサービスを利用したい顧客にとつては利便性があるし、ホテルの側も省力化をはかることができる。ただし、人的な接触が減少することにより、顧客と顔なじみになることや、個々の顧客への印象に残る対応やサービスを提供することで顧客をつなぎ止めるための大切な機会を失うことになる可能性もある。機械化による省力化を進めるのはよいのであるが、顧客と従業員との間の人的接触をどこまで残すのかということも今一度考えてみる必要がある。

【略歴】

高橋秀雄(たかはし・ひでお)

中京大学総合政策学部教授

マーケティング論、流通論。

京都大学大学院経済学研究科修士課程修了

1956年生まれ

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2024/04/18

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