印刷する

研究・産学連携

研究・産学連携 トピックス

商品企画に欠かせないもの
坂田 隆文 総合政策学部准教授

坂田隆文准教授
坂田准教授

 マルちゃん正麺やトクホコーラのような飲食物、LINEにFacebook、スマホやiPhoneといったコミュニケーションツール、はたまたAKB48やももいろクローバーZのようなアイドルまでも、ヒット商品をはじめとする我々が目にする「モノ」のほとんどが、誰かが企画し、それがかたちになって世に出回っているものである。

 マーケティングを専門とし、指導する学生の企画が実際に様々な企業から商品として世に出ることもあるためか、酒席での雑談レベルでの話も含めると、企業人から商品企画の秘策を問われることが多々ある。とはいえ、完全な私見ではあるが、そんなものはないと断言したい。あるのは商品企画の作法や手法、それに、ちょっとしたコツくらいのものである。

 そもそも商品企画というとクリエイティビティ溢れる人が思いもよらない発想で無から何かを生み出すものというイメージをもたれるかもしれないが、実は違う。中部圏のいくつかの企業を題材に、そのことを少し確認してみよう。

 井村屋(津市)は、代表的な和菓子である羊羹を新しい切り口で捉え、「スポーツようかん」という新商品を企画・発売し、新市場の開拓に成功している。この商品の購入者の多くはスポーツを行う際に手軽にカロリーを補給したいと思う人であるが、おそらくその大半が、この商品の発売前には「スポーツをしながら羊羹を食べよう」などと思わなかっただろう。消費者としてはスポーツをしながらバナナを食べようが飴玉を舐めようが構わないが、商品企画を行う者としては、この先入観が曲者なのである。

 西川・廣田編著『1からの商品企画』(碩学舎)では自分ではない誰か(すなわち、消費者や顧客)が求めるものを見つけ出すためには「先入観をもって物事を決めつけてみるのは厳禁」であり、「仮説や先入観を全く持たないでいることは難しい。であれば、むしろそれを覆されに行くつもりで現場に向かおう」という提案がなされている。この「先入観をもたない(ように心がける)」ということや、消費者が実際に商品を購入する場面や利用シーンといった「現場に行ってみる」ということも商品企画の作法・手法、あるいはコツの一つである。

 紙幅の都合上、先入観を捨てるために企業が行っている工夫については割愛するが、現場に行ってみるということについては付言しておこう。近年、この「現場」を自ら生み出している企業が増えつつある。例えばミツカン(半田市)は昨年、「お酢ラー推進委員会」なるサークルを発足させた。ここでは、お酢好きが交流を生み出せるよう、Facebookに公式ページを開設し、公認メンバーが酢にまつわる情報を書き込むといった活動を行っている。あるいはポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市)は「ふるさとナゴヤとともに」と称して、創業地である名古屋に向けて「人」「体」「街」をテーマに様々な活動を行っている。これらはいずれも、場を自ら生み出すことにより、企画者が思いもよらなかった消費者のリアルな姿を発見しようとしている。

 「先入観を捨て、現場に行く」。これこそが、商品企画の第一歩であり、商品企画プロセスを通して忘れてはならないことなのである。


【略 歴】
坂田 隆文(さかたたかふみ)・中京大学総合政策学部准教授
マーケティング論・経営戦略論
神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了・博士(商学)
1974年9月5日生まれ

(2013/05/20)

戻る

このページを見た人はこんなページも見ています