 地域産業と学術教育研究のご関係の皆様,中京大学大学院情報科学研究科よりご挨拶いたします.
情報科学研究科は,1994年に2専攻(情報科学専攻,認知科学専攻)修士課程をもって発足し,1996年の博士課程(情報認知科学専攻)をこれに加え,更には2004年にメディア科学専攻修士課程を増設,2006年にその博士課程(メディア科学専攻)を設置するなど,20年余にわたって着実な発展を紡いでまいりました.理工系大学・学部は大学院生の存在なくしてその存立はありません.中京大学におきましても本研究科は,研究室においては工学教育研究の人的資源構造を強く支えまた牽引し,そして母体である学部教育の品質と実力を鼓舞してまいりました.
この間,本研究科では,修士学位授与293名,博士課程入学者57名に及ぶ実績を築いて参りました.そして,多数の博士学位を授与(総計22名/内外からの「論文博士」学位授与者数5名,「課程博士」学位授与者数17名)することができ,日本各地の大学(中京大,岐阜大,香川大,静岡大,早稲田大,北海道情報大,松江高専,仙台高専,名古屋文化短大など)で教鞭をとる諸先生も生まれ,中には海外の大学(ポルトガルなど)で活躍中の研究者もいます.また全国の有力企業の研究開発要員として一線で活躍する諸氏から寄せられる声援は,まことに頼もしい限りであります.情報科学研究科で学ぶ学生が,一層の高く強い志を持ってこれら緒先輩に続いて社会で活躍できるよう,研究科が一体となって後押していく所存です.
さて,本研究科は,新たな課題を持って新しい年度に臨んでいます.
母体である学部におきまして,2006年の情報理工学部への改組と2008年の機械情報工学科の設置,さらにはこの2013年には,再度の改組によって「工学部」が,それも名古屋キャンパス,豊田キャンパスに跨ってスタートしました.一つ目の課題は,この流れに呼応するための研究科専攻の再編,「工学研究科」への改組を目指しております.そのために,母体学部の発展とその理念内容に相応しい研究科専攻の設計とカリキュラムの見直しを既に手をつけ始めております.このように時代の要請に見合った大学院の研究・教育体制の確立を考えていきます.実力の備わった大学院を実現するための絶好の機会を得ていると,この課題を受け止めております.そのためのお知恵とご支援をお寄せいただけるよう,衷心よりお願い申し上げます.
二つ目は,大学院進学率をあげるための策を講ずることであります.上記の一つ目の課題にしても,その成否は意欲に満ちた院生がこの場に満ち溢れることに全てが掛かっているからです.具体策の手掛かりとして,在学生への院進学ガイダンス実施や社会人を含む外部からの受験生募集獲得への努力と併せて,在学生支援につながる産学連携研究を弛まず推進して,
- 社会,とりわけ産業社会からの知名度と信頼感を高め,院生にとっての大学や企業の立派な就職先を開拓すること,
- 学会活動のための出張資金を援助するなど,2年から5年間に亘る院生諸君の勉学環境を支える経済的支援を行うこと,例えば外部資金による部門経費旅費で内外学会参加を一層強化すること,
- そしてそのために,大学院担当教員の研究教育活性化について,自然な個別努力にのみに頼らずに,研究科組織としての施策を実施すること,
に力を入れて参ります.
最後に,大学院という学問の場における『情報科学』研究の学術的性質を見極めることは,カリキュラム設計をはじめ上記の諸策の構想から運用現場までを根底から支える,いわば科学技術哲学の涵養という意味で極めて緊要なことです.非常に雑駁な物言いを許していただくと,及び腰でない産学連携研究の中にこそ,また,機械工学,生産工学,電気電子工学を始めとする物質科学技術と密着する中にこそ情報科学技術の本領が見出せる,同時に,上記「工学研究科」構想の基軸が見定められると考えています.
本研究科の次代をしっかりと展望するために,このような突っ込んだ思索の気運を院生諸君と共に醸成することに自覚的でありたいと念じつつ,引き続き,私ども情報科学研究科へのご理解とご指導を謹んでお願い申し上げ,ご挨拶と致します.
2013年4月1日
中京大学 大学院 情報科学研究科長
輿水大和
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