福祉国家スウェーデンを支えてきた家族観や死生観に主な関心があります。スウェーデンでは、日本のような「老人の世話は家族がしなければならない」という意識が薄く、税金による公共的な福祉サービスが充実しています。その背景には、両国での家族や家のとらえ方の違いがあります。この違いは、家や家族における死者と生者の関係の違いから来ているのではと考え、現在研究をすすめています。
ピアノ。
●共同性と福祉の社会学
●死と生の社会学
共同性と福祉の社会学、死と生の社会学ともに、『なぜ老人を介護するのか』が教科書です。全体をつうじて、なぜ老人を介護しなければならないのかという謎を、推理小説のように解こうとしています。どちらの講義も、主にスウェーデン独特の制度や発想がどこから来ているのかを日本と比べながら探ることで、この謎に迫っていきます。共同性と福祉の社会学では、家や家族の違いが、死と生の社会学では、死生観の違いが大きなトピックです。
●福祉国家の基盤を、家族観や死生観から考えること
2002.3 「共同墓の比較研究にむかって──境界突破・人格崇拝・福祉国家という視点から──」『中京大学社会学部紀要』第16巻1号, pp.51-8
2003.3 「死者の追憶と共同性──スウェーデンの葬制・共同墓研究を手がかりに」『中京大学社会学部紀要』第17巻1号
授業では学生諸君の質問や意見を重視。ゼミでは発表者の経験にもとづく視点を大事に。
自分の経験をもとに、問題設定や議論を自由に組み立てられるところ。
おそろしく自由なところ。自分の関心をもとにいろいろな科目を自由にとれるが、気づいたら4年間何をしたかわからないままに卒業してしまうこともある。自由であるからこそ、自分の興味の中心がどこにあるのかを常に問い続けねばならない場。
学部は法学部で社会学はほとんど知らなかった。たまたま入った法学部の読書会に、なぜか社会学研究者の卵たちがたくさんいた。今まで考えたこともなかった視点からの彼らの議論に感心した記憶がある。しばらく会社で働いた後に退職し、最終的に社会学の大学院に行ったのは、その読書会で知り合った友人が社会学研究者になっていたことが大きい。
自分がほんとうに何をしたいのかを見つけるために大学はあると考えています。自分のしたいことをいろいろ試行錯誤しながら、こっちかなあ、あっちかなあと、うろちょろすることが、広い分野を網羅している社会学部ではできるでしょう。進路に迷える高校生は、わが学部に来て大いに試行錯誤してください。
本を読むのも大事ですが、まずは自分の経験にこだわってほしいと思います。自分やまわりの人の悩みや苦しみや喜びを、身をもって深く味わうこと。その経験にこだわりつづけ、その意味をゆっくりと何度も考えていけば、自分がしたいことがわかってくるのではないかと思います。