本学部は、「人と人のつながりの希薄化」(=社会関係の変容)を日本の最大の問題とみています。
かつての日本では、家族・学校・企業・地域などが人びとのつながりを作りだしていました。
今日では、そのつながりがどんどん壊れたり希薄化していっています。
経済のグローバル化のなかで、雇用は減り、職に就けた社員も正規雇用と非正規雇用に分断されています。海外からの労働移民、突然の海外への転勤など、人の流動化は国際的にも進み、人びとは異文化の中に放り出されます。
地域のつながりも薄れ、家族は孤立しがちです。孤立した母親は育児に悩み、少子化も進んでいます。家族をつくることすら、若者の非正規雇用と失業の増大で難しくなってきています。学校ではいじめによる子どもの自殺が続いています。
従来の福祉の対象は主に高齢者でしたが、孤立する子ども・若者・現役世代をもつないでいく新しい地域福祉・教育・メディア・心理的支援のあり方が必要です。万一東海大地震が起きた場合もすぐに人びとが支え合える新しい社会の仕組みを創っておかなければ、多数の孤立死が出るでしょう。
一方で、「新しい場」での人々のつながりも模索されています。NPOが主導し、派遣切り等の失業者の避難所を創った年越し派遣村、 赤の他人がネットでつながった官邸前デモなどもそうでしょう。
しかし、「新しいつながり」の試みには、対策としての可能性があるのか。それを学問的に冷静に考える必要があります。
このような〈人と人のつながりの希薄化とその対策の可能性〉に、研究の焦点を当てる学問群が、本学部の社会学・社会福祉学・文化人類学・心理学です。なぜ、人と人とのつながりは、切り裂かれてしまったのか。その原因を諸学の総力をあげて究明します。
それをもとに、「新しいつながりは、どうすれば創り出せるのか」を構想し、実証データにもとづきながら、提案・実践できる人材を育てることを本学部は使命とします。