2022年の4月に現代社会学部国際文化専攻に着任しました。出身は福岡県で、大学院の博士課程進学を機に兵庫県に移り、この度愛知県で暮らすことになりました。
専門は文化人類学です。大学生のときに初めて知ったこの学問の面白さに惹かれ、大学院に進学した2010年から現在まで、北西インドのタール砂漠地帯で伝統的に移動生活を営んできた人びとの生活について調査を続けています。
インドの映画やドラマを見ること
文化人類学入門、文化人類学特講B、社会調査実習、演習(ゼミ)などを担当しています。文化人類学入門では、親族、交換と経済、宗教と科学といったテーマに関する人類学の基本的な概念や理論を学びながら、自己の「あたりまえ」を相対化する力を養います。私が大学生の時に文化人類学に出会いその魅力に惹かれたように、学生の皆さんにも人類学の面白さを伝えられるよう、身近な事例を紹介したり写真や映像資料をたくさん使いながら授業を行うように工夫しています。
インドで伝統的に移動生活を行ってきた人びとは周囲の自然環境や村の人びととのあいだでどのような相互作用を生じさせながら生活を営んできたのか、そこで培われた生の技法が定住した後の暮らしにいかに取り入れられ、新たな生活の場を築いているのかについて、インドでのフィールドワークをもとに探求しています。
私のゼミでは文化人類学を手掛かりに、多様な出自や文化的背景を持つ人びとがどのようにして共に生きていくことができるのかを、社会的周縁に置かれた人びとの視点に寄り添いながら考えていきます。2、3年生のゼミでは主に文献講読を通して古典や最新の議論に触れ、文化人類学の基礎力と「あたりまえ」を捉え返すための思考力を身に着けます。ただし4年生で執筆することになる卒業論文は、必ずしも上述のゼミのテーマに限定しません。各自の関心に沿った問いを設定し、学生間での発表と議論、必要に応じて教員との個人面談を重ねながら、文献調査やフィールドワークをもとに論文の完成を目指します。
文化人類学の面白さは、自分が暮らす世界からあえて(物理的に)距離を置くことで、自分の「あたりまえ」が誰かにとっては「あたりまえ」ではないこと、当初は理解できないように思えた誰かの「あたりまえ」が、次第に自分にとっても「あたりまえ」に感じられるようになることを目指すユニークな調査方法(=フィールドワーク)にあると思います。
まだこちらに来てから日が浅いですが、学生も教員も気さくで明るい人が多い印象です。自然に囲まれ広々とした敷地にある豊田キャンパスは、充実したキャンパスライフを送るのにまたとない環境だと感じています。
実は大学に入るまで、文化人類学という言葉すら聞いたことがありませんでした。文化人類学という学問の面白さに出会ったのは、大学3年生のゼミを通してです。そのゼミはある文献の一つの章を徹底的に読み込んで毎週学生同士で議論をするという方式だったのですが、同級生との意見交換を通して自分では思いもよらなかった点について視野が広がる爽快さや、考えても考えてもさらに考えるべきことが湧いて出てくる文化人類学という学問の奥深さにすっかり魅了されてしまいました。
大学に入るための勉強ももちろん大切ですが、大学に入って何を学びたいのかを考えることも非常に大切です。それは大学では、ただ言われたことをこなすのではなく、自ら問いを見つけてそれについて考え抜くという学びが中心になるからです。高校生のみなさんには、日頃から「なぜあのニュースの報道に違和感を覚えたのだろう?」とか、「なぜ相手の意見に心からは納得できないのだろう?」とか、自分の「あたりまえ」が揺さぶられる些細な瞬間を見逃さないよう意識して生活してほしいと思います。自分の頭のなかの小さな疑問や違和感にフタをせず正面から向き合おうとすることが、自ら問いを見つけるための手助けになるはずです。
現代社会学部の学びは、決して授業で習うことだけがすべてではありません。これまで飛び込んだことのない世界に飛び込んでみること、より深く考えてみたり面白がってみたりすること、何かを学んだり吸収したりしようとする姿勢を持つことを普段から心掛けてほしいと思います。自分の「面倒くさい」「楽をしたい」という気持ちに負けなかった分だけ、後から振り返った時に充実した大学生活だったと思えるはずです。遊びも学びも、悔いの残らないよう全力で取り組みましょう。そのためにお手伝いできることがあれば、いつでも相談してください。