公文書研究

公文書管理制度の形成にあたっての「権利」の視座の構築

研究組織

氏  名 個別参加テーマ
矢切 努(研究代表者) 公文書管理の実態・日本担当
桑原 英明 地方自治体における公文書管理制度・日本担当
酒井 恵美子 近代史料の保存管理・中国担当
手塚 崇聡 公文書管理制度の比較研究・カナダ担当
東山 京子 公文書管理の技術論・台湾・イタリア担当
檜山 幸夫 公文書と歴史資料・台湾担当
大友 昌子 近代史料の保存管理・日本担当

研究調査期間・場所

調査期間 : 2020年度から3年間
調査場所 :
①国内の行政機関
・地方公共団体における公文書管理条例の整備状況と制度運用の現状
・公文書管理条例を整備している市町村
②海外の行政機関
・公文書管理制度の形成を通じた情報自己決定権の具体化および公文書保存の法制度と実態との乖離状況
・カナダ、イタリア、スペイン、ドイツ、台湾など
③海外及び国内の周縁アーカイブなど

研究目的

 本研究は、個人のデータの取得・保存管理・利用の全段階において個人の自己決定が及ぶことを保障する基本的人権の観念を前提として、大規模集積・自動処理化時代における公文書管理制度形成のあり方に関する検討を行う。
 公文書管理が国民の利益の実現のために憲法・法律および条例による形成を通じて実現される制度であることに着目して、特に国民の「権利」の視座をその制度の基礎に据えた場合の、制度整備のあり方、国民の利益の具体的実現の方法及び必要となる技術論を提示することを目指す。
 具体的な視点は下記の通りである。
①大量データ処理時代における「権利」の視座(たとえば「情報自己決定権」「自己情報コントロール権」など)の再検討と、大規模集積・自動処理化が進む公文書管理制度の形成に当たって、そうした視点の具体的な反映のあり方
②「権利」の視座を具体化するものとして、公文書管理制度の形成のための政策法務上の立法技術
③「権利」の視座を具体化した公文書管理制度が果たす社会的効用に関する法学的視座
④「権利」の視座の制度的実現に仕えるための公文書・歴史文書の保存技術における専門性確保

研究計画

①「権利」の視座の再定位とその公文書管理制度への応用に関する検討(比較法研究)
「権利」の視座の理論的到達点共有のための共同研究会を開催する。
国際比較研究の対象はドイツのシュタージ文書法、スペインの公文書制度勅令などを想定。
②政策法務上の公文書管理制度に関する立法例の分析及び立法技術の検討(政策研究)
国内の地方公共団体における公文書管理制度の条例の整備に関する訪問調査。
比較対象としてアメリカの機密文書管理制度、ドイツ自治体公文書館を想定。
③公文書管理を基礎付ける理論背景の国際比較及び制度形成への反映可能性の検討
 (国際制度比較)
公文書が歴史資産であるという前提と、公文書保存の実体上の法制度との乖離状況を把握するための訪問調査。
学外研究者・実務家を招いての研究会開催。
台湾、中国における歴史文書の保存管理およびカナダ・イタリア・台湾における文書の災害対策制度との比較を想定。