書道講演会

文学部では毎年書道講演会を開催し、書道や文字文化に造詣の深い講師をお招きしています。以下は過年度の開催報告です。

2015年度
「字姿の世界 江戸の法帖を知る」

講師 日本近世書道史研究家 岩坪充雄氏

12月19日、「字姿の世界 江戸の法帖を知る」と題し、文学部恒例の書道講演会が名古屋キャンパス5号館571教室で開催されました。講師は、日本近世書道史研究家の岩坪充雄氏。書道研究誌の編集、書学書道史学会の立ち上げと運営を経て、和本や拓本の収集を通じて日本書道史を研究しています。講演は、江戸期に作られた法帖から、当時の字姿に込められた価値観を探るものでした。書道の手本を「法帖」と呼びますが、毛筆で文字を書いていた江戸時代には、手本となる法帖が多く作られました。江戸時代に作られた書物の中にこの法帖がたくさんあります。もちろんこの法帖は手書き肉筆のものもあるのですが、大半は版木と呼ばれる木の板に文字を彫り印刷します。この和刻法帖の印刷方法、使用される版木の種類などについての紹介と説明がありました。また、法帖類は『国書総目録』に収載されていないこともあり、和刻法帖の研究はまだまだ開拓の余地があります。毛筆文化研究の重要性を力説されました。最後に、多くの法帖、刻本、版木の実物を紹介していただくとともに、版木から拓本をとる実演があり、筆跡が鮮やかに写し取られると参加者から感嘆の声があがりました。
一般社会人の参加もあり、36名が聴講しました。
写真は当日の様子です。

2014年度
「墨と遊ぶ、筆と遊ぶ。」

講師 書家・アーティスト 渡部裕子氏

12月6日、「墨と遊ぶ、筆と遊ぶ。」と題し、文学部恒例の書道講演会が名古屋キャンパス4号館412教室で開催されました。講師は、書家でアーティストの渡部裕子氏。本学文学部の卒業生でもあり、海外での活動が目を引きます。本学卒業後は企業に就職するかたわら、店舗に飾るインテリア書やロゴデザイン、百貨店ディスプレイ作品を手掛けられました。この度アジア創造美術展、ニューヨークジャパニーズセレクションなどでの受賞があり、また南オーストラリア州立美術館に立体書作品11点が買い上げられました。立体の側面に書を揮毫し空間を構成する立体書を制作したものです。講演では、自らの体験と波乱万丈の人生経験の中で、何事も楽しむということ、「書」は読むものではなく感じるものなどが語られました。海外での活動は日本の文化を世界に発信する役割を担っています。氏のエネルギー、パワーを感じることができました。最後に、参加者全員が「風」の一画目を書き、そのあとを氏が続けて書くというワークショップ形式の実演があり、筆運びの勢い、文字造形の妙を見ることができました。学生にとっては、氏の生きざまが将来への参考となったはずです。
一般社会人の参加もあり、63名が聴講しました。
写真は当日の様子です。