研究プロジェクト

中京大学企業研究所では、個人やグループで研究プロジェクトを組織して活動しています。各研究活動のプロジェクトをご紹介します。


調査研究活動プロジェクト 2023年度
1.職場における自分らしさ[向日恒喜、永石 信、川端勇樹]
調査研究活動プロジェクト 2022年度
1.職場における自分らしさ[向日恒喜、永石 信、川端勇樹]
調査研究活動プロジェクト 2021年度
1.グローバル社会における再帰性の研究[中西眞知子、中條秀治]
2.職場における自分らしさ[向日恒喜、永石 信、川端勇樹]
調査研究活動プロジェクト 2020年度
1.働き方改革研究[櫻井雅充]
2.グローバル社会における再帰性の研究[中西眞知子]
3.知識共有とイノベーション[向日恒喜]
調査研究活動プロジェクト 2019年度
1.地域社会活性化に関する調査・研究プロジェクト[寺岡寛(主査)、梅田守彦]
2.再帰性とその適用の研究[中西眞知子(主査)、津村将章]
3.働き方改革研究[櫻井雅充、渡辺丈洋]
4.知識共有とイノベーション[向日恒喜(主査)、永石 信]
調査研究活動プロジェクト 2018年度
1.地域社会活性化に関する調査・研究プロジェクト[寺岡寛(主査)、梅田守彦]
2.再帰性とその適用の研究[中西眞知子(主査)、津村将章]
3.働き方改革研究[櫻井雅充(主査)、渡辺丈洋]
4.知識共有とイノベーション[向日恒喜(主査)、中西眞知子]
5.中国の電気自動車市場における日中韓企業の協力と競争[銭佑鍚(主査)、伊藤清道、渡辺丈洋]
調査研究活動プロジェクト 2017年度
1.地域経済と中小企業-地域資源とまちおこし-(主査:寺岡寛)丈洋]
2.グローバルにシステム上重要な金融機関(SIFIs)に関する研究(主査:入江恭平)丈洋]
3.市場と再帰性の研究(主査:中西眞知子)丈洋]
4.サプライチェーン・マネジメントの最適化に関する研究(主査:佐藤祐司)丈洋]
5.大学の財政分析(主査:梅田守彦)丈洋]
6.トヨタ自動車研究(主査:猿田正機)丈洋]
7.日本における社会事業とソーシャルビジネスの連関について(主査:中條秀治)丈洋]
8.経営意思決定研究(主査:中村雅章)丈洋]
9.知識共有と動機(主査:向日恒喜)丈洋]
10.中国の電気自動車市場における日中韓企業の協力と競争(主査:銭佑鍚)丈洋]

プロジェクト研究中間報告(2016.12.20)

欧州銀行及びグローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)のビジネスモデルの研究

当初予定していた銀行のデータベース Bankscope を入手して、その操作方法の講習を2回にわたって受け、またネット経由での利用方法も学んだ。来年度、共同研究を行う西尾圭一郎氏(愛知教育大学)と3回にわたって打ち合わせを行った。Bankscope に基づく研究は来年度も継続の予定である。 また BIS(国際決済銀行)の国際銀行業に関する統計の高度化及びそれに基づく準備的なケーススタディを、証券経済研究会(日本証券経済研究所大阪研究所、2016年9月24日開催)において報告し2時間にわたって問題点を討議した。これに関しては『中京経済研究』に投稿する予定である。
(入江 恭平)

大学の財政分析

少子化の進行に伴い、定員を充足することのできない私立大学が全体の半数近くにのぼっている。破綻にまで至った大学数は、国庫助成の存在などもあって、現時点においては当初想定されていたよりも相当に少ないのはたしかであるが、18歳人口がさらに減少する2018年あたりから事態はより深刻になるものと考えられている。本研究は私立大学財政の現状を把握しようとするものであるが、今年度の研究資金でもって2015年度の大学データベースを購入した。また東京高等教育研究所において、中央大学・青山学院大学などの財政の現状について議論を行ったりした。財務データの分析はまだ十分に進んでいないが、いわゆる下位校では設備投資が困難になっている様子などがうかがえる。2年目の来年度には何らかの中間まとめができるように努めたい。
(梅田 守彦)

サプライチェーン・マネジメントの最適化に関する研究

サプライチェーン・マネジメント(SCM)は,価値提供プロセスの全体最適化を目的とする経営管理手法であるが,その過程には,価値の供給側,需要側,それぞれの主観的な価値判断が介在するため,一律的な計量的最適化は困難とされる.本研究は,この主観的価値判断が SCM に与える影響を分析し,最適化のあり様を模索することを目的としている.2年目の今年度は,グローバル化が著しい SCM の国際比較を通じて,最適化へ向けた試みの実態を探るために, SCM における主観的価値判断が SCM にどのような影響を与えるのかについて,イギリスの SCM 研究者と意見交換を行った.日英の SCM が抱える課題,最適化の試みは同じ範疇にあるものであることを確認した.また,上記主観的価値判断の数量化の手がかりを得るために,多基準意思決定法のひとつである階層分析法に関する国際シンポジウムを聴講した.その結果,階層分析法を SCM の一部に組み込むことによって,意思決定主体の選好を SCM の最適化に反映させるプロセスに適用可能であることの示唆を得た.今後は,この手法の活用を軸に研究を進めていく予定である.
(佐藤 祐司)

トヨタ自動車研究

各種トヨタ行事への参加や資料収集、労働者や経営者などからの聞き取り調査、企業調査などを行なった。また、研究会を月1回程度開催し、各自の報告・議論を行なった。この期間に来訪した日本や韓国のマスコミなどへの対応を行なった。またこの期間に、ベトナムトヨタの労働者のヒアリングや技能実習生の送り出し機関を調査訪問した。それらの研究成果の一端は、猿田正機編著、杉山直・浅野和也・宋艶苓・櫻井善行・張永強著『トヨタの躍進と人事労務管理』(中京大学企業研究叢書 NO28、税務経理協会、2016年3月)などにて公表した。
(猿田 正機)

中国の電気自動車市場における日中韓企業の協力と競争

伊藤清道氏、陳剛氏、賈宝音氏との共同研究で進めている本プロジェクトでは、中国の電気自動車市場に日本と韓国の企業がどのように参入し、現地の中国企業とどのような協力関係や競争関係を形成しているのかについて検討している。3年間のプロジェクトの初年度に当たる今年度には、夏季休暇を利用して中国成都・重慶周辺の中国電気自動車メーカーを訪問調査する予定であったが、先方の事情により延期され、来年2月に調査を行う予定である。したがって、今年度のこれまでの研究は主に書籍や論文のサーベイを中心に進められてきた。電気自動車において最もネックになるのは車載用電池の開発・生産であり、日米中韓の自動車メーカーおよび電池メーカーがしのぎを削っていることが確認されている。特に、中国市場においては中国政府の自国企業優先政策により、すでに中国進出を果たしている韓国系の電池メーカーが苦戦を強いられている。春期休暇を利用した中国現地調査ではこのような事情をさらに詳しく調べていく計画である。なお、春期休暇では中国との比較のためにすでに電気自動車産業が一定の発展を見せている米国を訪問し、米国の電気自動車メーカーや電池メーカーなどを訪問調査する予定である。
(銭 佑錫)

寄付型クラウドファンディングから見た“頼母子講”への近接 -長期支援の観点から-

これまで寄付型クラウドファンディング(クラウドファンディングの分類の1つ)とソーシャルビジネスは親和性が高いことを指摘してきた(速水、2014)。そのことは、ソーシャルビジネスの資金調達として、新たな可能性を持つものと考える。しかしながら、寄付型クラウドファンディングの利用は、比較的容易とはいえ課題もある。それは、資金調達が一回限りに陥りやすいという点である。「長期的な支援」のしくみ作りが課題としてあげられるだろう。そこで、我が国において、古くからの歴史を持つ“頼母子講”について近接してみたいと考えた。頼母子講は、時に数年~数十年という長い期間、そのしくみを機能させてきた重みを持つ。 そこで、ソーシャルビジネスにおける寄付型クラウドファンディング活用について、“長期的支援”の観点から、何らかの示唆を得ることができればと考えた。この調査で、「寄付型クラウドファンディングから見た“頼母子講”への近接-長期的支援の観点について-」を中京企業研究38号に掲載予定している。 
(中條 秀治、速水 智子)

地域経済活性化と文化資本の役割

今年度の調査では、主要産業の衰退とこれに代わる成長主導産業の生起を欠く現状にある地方都市においては、美術館、博物館、記念館などのミュージアムを中心とする文化施設との連携による「まちおこし」や新たな街並み整備による観光客の吸引による地域経済政策が実施されてきている。こうした政策、より正確には地域文化経済政策の実態と現状について九州や四国を中心にフィールド調査を進めてきている。その成果の一端については、今年度の『企業研究』などに発表の予定となっている。今後は、さらに北関東地域や東北地域の現状を調査するとともに、一冊の本にまとめていきたいと思っている。
(寺岡 寛)

市場における再帰性の研究

社会の変化に伴って変化している再帰性(Reflexivity)の概念をスコット・ラッシュの非認知的で非制度的な再帰性の考えかたに導かれて、「市場再帰性」や「メディアの再帰性」を見出している。Lash, Urry 1994 Economies of Sign and Space を数人のメンバーと翻訳中であり、晃洋書房からの出版が決定している。Urry が今年3月に急逝したので、現在 Lash に日本語版への序文を依頼している。3月に「市場(いちば)における再帰性とレガシー―ロンドンと香港の市場(いちば)から」を社会科学研究所から『コモンウェルスにおけるレガシーの光と影』の3章としてナカニシヤ出版から出版している。6月にはウイーン大学の ISA フォーラムで The transformation of Japanese Market について発表を行った。これに加筆修正して、中京経営研究に入稿している。また、「社会の再帰性と商品開発」について執筆し、商品開発・管理学会編集の書籍に入稿している(中央経済社)。 
(中西眞知子)

経営意思決定研究

アメリカで先行したオムニチャネル戦略の動きは日本にも波及し、店舗小売のネット進出と、ネット小売の実店舗設置という形で、それぞれの特色を生かした競争が本格化している。 消費者の購買意思決定は、店頭(FMOT)から、店頭を訪れる前に意思決定する ZMOT に移行しており、最近の調査では商品の下調べや比較検討を放棄し、自分の欲求も定かではない NMOT が増えている。このような消費者の購買行動変化に対応したオムニチャネル戦略の課題や実店舗のあり方について、アンケート調査を含む実態調査を企画、実施する予定である。
(中村 雅章)

知識共有と動機

本プロジェクトは、企業における知識共有の規定要因の1つである従業員の動機に焦点を当て、企業における知識共有と従業員の知識共有動機の因果関係を明らかにすることを目的とする。今年度は、文献研究とともに、前年度得られたアンケートデータなどに基づき分析を進め、知識提供行動に対しての組織内自尊感情の調整効果や、企業規模の差異の検討などを行ない、国際会議や国内学会等で発表した。さらに、これらの分析の枠組みに従い、企業従業員に対して再度のアンケートを実施する予定である。 
(向日 恒喜)

調査研究活動プロジェクト 2016年度
1.地域経済活性化と文化資本の役割(主査:寺岡寛)
2.中国の電気自動車市場における日中韓企業の協力と競争(主査:銭佑錫)
3.市場と再帰性の研究(主査:中西眞知子)
4.大学の財政分析(主査:梅田守彦)
5.トヨタ自動車研究(主査:猿田正機)
6.サプライチェーン・マネジメントの最適化に関する研究(主査:佐藤祐司)
7.欧州銀行およびグローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)のビジネスモデルの研究(主査:入江恭平)
8.ソーシャルビジネスにおけるクラウドファンディングの事例調査(主査:中條秀治)
9.経営意思決定研究(主査:中村雅章)
10.知識共有と動機(主査:向日恒喜)

プロジェクト研究中間報告(2015.12.20)

サプライチェーン・マネジメントの最適化に関する研究

サプライチェーン・マネジメント(SCM)は、価値提供プロセスの全体最適化を目的とする経営管理手法であるが、その過程には、価値の供給側、需要側、それぞれの主観的な価値判断が介在するため、一律的な計量的最適化は困難とされる。本研究は、この主観的価値判断が SCM に与える影響を分析し、最適化のあり様を模索することを目的としている。1 年目の今年度は、グローバル化が著しい SCM の国際比較を通じて、最適化へ向けた試みの実態を探るために、イギリスの SCM 研究者とワークショップを開催した。その結果、両国の SCM が抱える課題、最適化の試みは同じ範疇にあるものであることが明らかとなった。一方で、対照事例として実態把握をするためにフィリピンで行う予定であったワークショップは、先方の研究者の事情により実施できなかった。この点については、次年度以降の課題としたい。
(佐藤 祐司)

トヨタ自動車研究

各種トヨタ行事への参加や資料収集、労働者や経営者などからの聞き取り調査、企業調査などを行なった。また、研究会を月1 回程度開催し、各自の報告・議論を行なった。この期間に来訪した日本や韓国のマスコミなどへの対応を行なった。この期間に、中国のトヨタ系企業を調査訪問し工場見学やヒアリングを行なった。それらの研究成果の一端は、猿田正機編著、杉山直・浅野和也・宋艶苓・櫻井善行・張永強著『トヨタの躍進と人事労務管理』(中京大学企業研究叢書 NO28、税務経理協会、2016 年 3 月出版予定)にて公表する予定である。
(猿田 正機)

日本企業の新興国戦略

陳剛氏、賈宝音氏との共同研究で進めている本プロジェクトでは、特に中国に焦点を当てて日本企業の新興国戦略について検討している。2年間のプロジェクトの最終年度に当たる今年度には、中国市場における日本企業の競争と協力のパートナーとしての中国民族系自動車部品メーカーおよび中国民族系完成車メーカーに対する現地インタビュー調査を行った。日本自動車メーカーの中国事業においては、特に低価格帯のセグメントにおいて苦戦を強いられていることが指摘されており、その競争の相手としての民族系完成車メーカー、また部品の現地調達のパートナーとして協力が必要とされる民族系自動車部品メーカーに対する調査を行ったのである。これらの調査では、昨年度の調査で確認することができた中国民族系自動車部品メーカーの能力向上に伴う日本自動車企業の中国民族系部品メーカーの活用可能性を再度確認するとともに、中国民族系完成車メーカーにおける電気自動車(新エネルギー自動車)への資源配分が相当程度進展していることを確認することができた。今後、日本自動車企業の中国事業展開においてこのような分野での現地企業との競争だけでなく、日本企業の技術を基に協力の可能性もありうることを示唆するものである。
(銭 佑錫)

社会起業家の資金調達とクラウドファンディングとの関係性
社会起業家は高い志の陰で、資金調達の難しさと不安定な財務状況に直面している。そのような中、新たな資金調達のツールとしてクラウドファンディング(Crowd Funding)を利用した事例が我が国でも広がっている。
社会起業家の始めるソーシャルビジネスは一般のビジネスとは異なる特徴を備えている。その点を勘案して、第一回目のプロジェクトでは、寄付型クラウドファンディングとの親和性が高いことを指摘してきた(所報 36 号)。
しかしながら、社会起業家とクラウドファンディングを概念的に結び付けるまでには至らなかった。そのため第二回目の本プロジェクトでは、英国の Social Enterprise UK とクラウドファンディング事業者の仙台の一般社団法人 MAKOTO のヒアリング調査を含めた、社会起業家の資金調達について整理する。そして、社会起業家とクラウドファンディングとの関係性について考察する。この調査で、「社会起業家の資金調達とクラウドファンディングとの関係性」を中京企業研究 37 号に掲載予定している。
(中條 秀治・速水 智子)

地域経済と文化資本

地域経済と文化資本―今回の調査では、いわゆる少子高齢化と過疎問題の深刻化しているという長野県北部、新潟県を中心に文化資本(美術館・博物館・記念館などミュージアム)の活動・活用状況と近年盛んになってきたまちづくりや景観保護との関係を調査した。他方、首都圏から近い埼玉県の江戸の風情を残す町として、町屋を中心とする町並みや景観などで観光客を集めてきた川越市のミュージアムの活動・活用状況も比較のために調査を行ってきた。新潟県などでは町づくりに直接かかわる中小企業経営者など関係者などにもインタビューを実施して、その問題点と課題について理解を深くすることができた。
(寺岡 寛)

市場における再帰性の研究

再帰性(Reflexivity)の概念は社会の変化に伴って変化している。スコット・ラッシュの非認知的で非制度的な再帰性の考えかたに導かれて、「新しい市場再帰性」や「メディアの再帰性」を見出した。現在「メディアの再帰性」について本年度の中京経営研究に執筆している。また、「日本の再帰性とクールジャパンの可能性」について、本年度の中京ビジネスレビューに執筆している。
市場の再帰性の実証研究では、昨年の日本と英国の市場のインタビューに続いて、本年度は、香港(クロス・ストリート、フラワーマーケット、カントン・ロード)、ロンドン(グリニッジ、キングスクロス)、ケンブリッジなどでインタビューを行っている。この結果もいずれまとめて公表したい。
(中西眞知子)

経営意思決定研究

ネット通販における消費者の購買意思決定に焦点を当てた実態調査研究を行ってきた。これまでの研究成果リストは所報第 36 号に掲載した。ネット通販のビジネス戦略と消費者購買行動については、現実の動きが速く、今年度の新たな調査は断念した。しかし、既存の調査の分析とまとめを鋭意進めることができ、今後の研究課題を抽出することができた。その成果については次号の所報において報告する予定である。
(中村 雅章)

知識共有と動機

本プロジェクトは、企業における知識共有の規定要因の 1 つである従業員の動機に焦点を当て、企業における知識共有と従業員の知識提供動機との因果関係を明らかにすることを目的とする。今年度は、文献研究に基づき、企業における知識共有と従業員の知識提供動機との関係を検討して分析のフレームワークを明確にする。さらに、これらの分析の枠組みに従い、企業従業員に対してアンケートを実施する予定である。
(向日 恒喜)

世界恐慌~戦中期の日米コミュニティ・バンク諸業態の構造的変化に関する比較研究

本年度は 3 か年計画の 3 年目にあたる。2年目末、2015 年 3 月に米国独立銀行家協会(ICBA)ワシントン本部を訪問し、同協会揺籃期の設立・発展の経緯に関する資料を一通り入手することができた。その内容を検討(含、ICBA 事務トップとの追加メール交信)した結果、同本部文書の収集はとりあえず十分と判断した。
それで当プロジェクトによる本年度の米国出張機会を、ICBA 元会長 S. マランカ氏(ニューヨーク州バッファロー市郊外の CCB 銀行)に対するヒアリング(ICBA の歩み・現下の課題)、ならびに CCB および周辺のコミュニティ銀行2行への訪問調査(金融危機後の業況ならびに金融規制強化の影響など)に充てることとし、2015 年 9 月初旬に出張調査を行った。
現在、IBA(Independent Bankers Association; ICBA の当初の名称)の発足・発展史に関する論考を執筆中であり、本年度から来年度にかけ公表していきたい。
(由里 宗之)

調査研究活動プロジェクト 2015年度
1.地域経済活性化と文化資本の役割(主査:寺岡寛)
2.中国の電気自動車市場における日中韓企業の協力と競争(主査:銭佑鍚)
3.市場における再帰性の研究(主査:中西眞知子)
4.サプライチェーン・マネジメントの最適化に関する研究(主査:佐藤祐司)
5.世界恐慌~戦中期の日米コミュニティ・バンク諸業態の構造的変化に関する比較研究(主査:由里宗之)
6.ソーシャルビジネスのおけるクラウドファンディングの事例調査(主査:中條秀治)
7.経営意思決定研究(主査:中村雅章)
8.トヨタ自動車研究(主査:浅井紀子)
9.知識共有と動機(主査:向日恒喜)

プロジェクト研究中間報告(2014.12.20)

経済協力の展開と日本産業界

ワシントンの米国国立公文書館にて資料収集を行い、東京の外務省外交史料館にて公開された資料の複写も行った。人民中国という雑誌を入手し、共同で利用しやすいようにスキャンして活用し、その資料紹介を準備している。名古屋大学のグループとも協力しながら、経済協力の歴史的な起源を中心に、海外青年協力隊、輸出入銀行、海外経済協力基金関係の資料をも活用して検討を行っている。
(浅野 豊美)

トヨタ自動車研究

各種トヨタ行事への参加や資料収集、労働者や経営者などからの聞き取り調査、企業調査などを行なった。また、研究会を月 1 回程度開催し、各自の報告・議論を行なった。この期間に来訪した日本や韓国のマスコミなどへの対応を行なった。この期間に、中国のトヨタ系企業を調査訪問し工場見学やヒアリングを行なった。それらの成果の一端は杉山直「赤字業績下におけるトヨタと関連企業の賃金格差」及び浅野和也「トヨタにおける働き方の一考察―労働組合の視点を中心に―」の2論文として『中京企業研究 No.36』に掲載する予定である。
(猿田 正機)

日本企業の新興国戦略

陳剛氏、 賈宝音氏との共同研究で進めている本プロジェクトでは、 昨年度に行った、 中国における日本の小売企業を対象にした調査研究に引き続き、 今年度は製造業に視点を移して、 中国における部品調達の現地化の可能性について検討を行っている。 そのために、 今年度には中国における日系自動車関連企業に対するインタビュー調査を行うとともに、 現地化の相手先となる中国民族系自動車部品メーカー3社に対する現地インタビュー調査を行った。 重慶市で訪問した重慶博耐特実業(集団)有限公司 (スターター、 オルタネーターを生産) は中小規模の民族系完成車メーカーらへの納入を通して培った生産能力と開発能力を基に、 東風日産への納入を始めていた。 さらに、 この企業で特徴的だったのは、 韓国の部品メーカーを退職した韓国人が副総裁として製品開発を主導していたことである。 中国民族系部品メーカーの能力構築の一つのルートとして大変興味深い。 江蘇省の常州で訪問した常州正力制鏡有限公司は、 同業界の国有企業に長年勤めた技術者が創業した 80人規模の小企業であったが、 台湾製の機械設備を使って自動車用ミラー製品を生産し、 主にアメリカの部品メーカーに輸出していた。 同じく江蘇省の常州で訪問した常州飛拓模塑有限公司 (バックミラーなどを生産) は、 アフターマーケット向けの部品生産から始めて、 いまは一部 OEM 事業も行うようになっていた。 OEM 事業は、 地方の中小メーカーに対しては承認図方式で、 上海 GM に対しては上海所在の 1次サプライヤーからの委託生産 (貸与図方式) の形で行っている。 この会社で印象的だったのは、 金型を内製していたことである。 以上のように、 近年中国の民族系部品メーカーの能力と事業内容は大きく変貌を遂げつつあり、 日本自動車企業の中国民族系部品メーカーの活用可能性が現実的なものになりつつあることを示唆するものである。
(銭 佑錫)

ソーシャルビジネスにおけるクラウドファンディング ― ―般社団法人 MAKOTO の事例から ―
社会的課題の解決に本業で取り組むソーシャルビジネスの活動が世界中で散見される。
多くのソーシャルビジネス事業者は、 その志の影で資金調達という難問に常に直面している。 そのような中、 新しい資金調達として、 クラウドファンディング (Crowd Funding) に注目が寄せられている。 クラウドファンディングとは、 インターネットを活用して、 不特定多数から資金を調達する方法である。
そこで、 本研究では、 ソーシャルビジネスという枠組みから見た、 新しい資金調達の可能性としてのクラウドファンディングについて検討していきたい。
そのために、 東北地方で早くからクラウドファンディングを実践しているソーシャルビジネス事業者 (一般社団法人 MAKOTO) にヒアリング調査を行った。
この調査に基づき 「ソーシャルビジネスにおけるクラウドファンディング - 一般社団法人 MAKOTO-の事例から」 を中京企業研究 36 号に掲載予定している。
(中條 秀治・速水 智子)

地域経済と文化資本

今回については、 地域の大学、 とりわけ、 公立大学を地域の文化資本という視点から取り上げている。 公立大学については、 4 年前に開学し、 都市経営学部というある意味では地元密着の都市問題に取り組む学部をもつ福山市立大学、 美術学部をもち付属美術館をもつ尾道市立大学を実際に訪れ、 調査を行った。 今後、 国立大学で美術館をもつ東京芸術大学、 九州で最近、 美術館を設けた佐賀大学を調査する予定である。 この成果は企業研究所の所報に研究ノートとして発表する予定である。
(寺岡 寛)

経営意思決定研究

ネット通販のビジネス戦略と消費者購買行動について、 ファッション衣料に焦点を絞ったネット調査と、 商品分野を日用品、 食料品などに拡大したネット調査を実施済みであり、 現在調査結果の集計と考察を行っている。 これらの調査結果をふまえ、 今後は巨大化するネット専業ショップと、 実店舗チャネルを持つ企業との競争戦略について考察を深めていく予定である。
(中村 雅章)

市場における再帰性の研究

再帰性 (Reflexivity) の概念は社会の変化に伴って変化している。 スコット・ラッシュの考えかたに基づいて、 自己再帰性、 制度的再帰性、 認知的再帰性などの認知的、 制度的な再帰性のとどまらず、 美的再帰性、 解釈学的再帰性、 現象学的再帰性など非認知的、 非制度的な不合理な再帰性への変化を論じ、 新しい市場再帰性を見出した。 現在、 「社会の再帰性と商品開発」 について執筆中である。
市場の再帰性の実証研究では、 昨年の日本と英国の市場のインタビューに続いて、 本年度は、 国内では伊勢 (おかげ横丁)、 東京 (上野アメ横)、 海外ではロンドン (スピタフィールド、 ペチコートレーン、 グリニッジ) パレルモ (カーポ、 ヴッチリア、 バッラロ、 ディ・プルチ) などでインタビューを行っている。
(中西眞知子)

知識ネットワーク

本プロジェクトは、 企業における個人の知識共有行動と個人を取り巻くネットワークとの関係を明らかにすることを目的とし、 今年度は、 昨年度実施した企業従業員に対するアンケート調査で得られたデータを分析した。 その結果、 従業員の組織内での自尊感情と、 外部の価値観の内在化に基づく動機が従業員の知識共有行動を促進している様子などが明らかになった。 今年度はこれらの結果を、 所報、 及び叢書において公開予定である。 また、 これらの結果から提示された研究課題について、 新たなアンケートを実施する予定である。
(向日 恒喜)

世界恐慌~戦中期の日米コミュニティ・バンク諸業態の構造的変化に関する比較研究

本年度は 3 か年計画の 2 年目にあたる。 2015 年 2 月~3 月半ばをめどに、 米国独立銀行家協会 (ICBA) 所蔵の、 大恐慌期~戦時中の同協会揺籃期の資料を閲覧すべく、 ICBA と連絡を取り合っているところである。
それと並行して、 ICBA が代表するコミュニティ銀行諸行を取り巻く規制環境の潮流が、 2008 年~2009 年の金融経済危機を境に変化しつつあること (リーマン・ショックを引き起こした大手銀行・証券にはより厳しくコミュニティ銀行にはより支援的な方向) に関する論考を準備中であり、 できうれば部分的にでも本年度中に公表したい。
(由里 宗之)

調査研究活動プロジェクト 2014年度
1.地域経済と文化資本(主査:寺岡 寛)
2.世界恐慌~戦中期の日米コミュニティ・バンク諸業態の構造的変化に関する比較研究(主査:由里宗之)
3.日本企業の新興国戦略(主査:銭佑錫)
4.ソーシャルビジネスにおけるクラウドファンディングの事例調査(主査:中條秀治)
5.トヨタ自動車研究(主査:浅井紀子)
6.経営意思決定研究(主査:中村雅章)
7.市場における再帰性の研究(主査:中西眞知子)
8.経済協力の展開と日本産業界(主査:浅野豊美)
9.知識ネットワーク(主査:向日恒喜)

プロジェクト研究中間報告(2013.12.20)

賠償と経済協力を支えた政官財枠組み

ワシントンの米国国立公文書館にて3月に資料収集を行う予定であるが、東京の外務省外交史料館にては、すでに米国援助資金の第三国発注文資料として、造船や繊維関係業界への援助物資受注に関する資料を注文し、その複写を待っている状態にある。今後、その資料紹介を中心に進めていきたい。
(浅野 豊美)

国際銀行業の新展開

プロジェクトに関連して、国際銀行業に関する資料を収集している。2013年9月にはロンドン、バーゼルで資料調査、ヒアリングを行った。特にバーゼルの国際決済銀行BISでは最近の BIS international banking statistics の改良プロジェクトに関する現状と見通しに関してMonetary and Economics Departmentで詳細に説明を聴取した。これらをもとに今後、報告論文をまとめる予定である。
(入江 恭平)

東南アジアにおける日系企業調査

本年度は、インドネシアにおける味の素の国際マーケティングおよびユニチャームの経営戦略について調査研究を行った。インドネシアには9月にジャカルタおよびスラバヤに渡航しフィールドワークを行った。 現在整理中である。
(太田 真治)

トヨタ自動車研究
各種トヨタ行事への参加や資料収集、労働者や経営者などからの聞き取り調査、企業調査などを行なった。また、研究会を月1回程度開催し、各自の報告・議論を行なった。この期間に来訪した日本や韓国のマスコミなどへの対応を行なった。この期間に、中国のトヨタ系企業を調査訪問し工場見学やヒアリングを行なった。それらの成果の一端は 『中京企業研究 No.34』に掲載し、また、2年間の集約として『逆流する日本資本主義とトヨタ』(税務経理協会)を2014年3月に出版する予定である。
(猿田 正機)

日本的小売システムの海外移転

>陳剛氏との共同研究で進めている本プロジェクトは、中国に進出している日本の小売企業(GMS、コンビニエンスストア)を対象に、日本的小売システムの海外移転の可能性とその有効性に関する仮説探索型の実証研究を試みるものである。ここまでは、主に共同研究者である陳剛氏による、中国におけるイトーヨーカ堂、イオン、セブンイレンブン、ローソン、などに対する現地インタビュー調査を行った。その結果、日本的小売システムを構成するすべての項目が順調に移転されているわけではなく、中には現地の経営環境に合わせて一部修正が施されている項目もあることが判明した。現在、移転が容易であった項目と現地適応を余儀なくされた項目にはどのような違いがあるのか、一部項目の移転が不十分な状態で如何に全体的なシステムとしての機能性を確保しているのか、などについて分析・検討を行っており、近々必要な部分に対して追加現地調査を行う予定である。
(銭 佑錫)

文化資本と地域経済の振興をめぐって

今年度については、青森県など東北地域のミュージアムの現状を調査するとともに、その具体的な成果を論文として発表する予定となっている。今後は、文化資本の範囲を従来のミュージアムだけではなく地方大学にも拡充させて、地域経済と文化資本との関係について調査をさらに深めていきたい。
(寺岡 寛)

市場と再帰性の研究

再帰性(Reflexivity)とは、「自らを他者に反映して、それが自らに帰って自己を変革する螺旋状の循環作用」である。この概念も社会の変化に伴って変化している。スコット・ラッシュの再帰性論に基づいて、合理的再帰性である自己再帰性、 制度的再帰性、認知的再帰性にとどまらず、 美的再帰性、解釈学的再帰性、 現象学的再帰性など非認知的、非制度的な不合理な再帰性への変化を論じ、新しい市場再帰性を見出した (中西 2013)。こういったさまざまな再帰性の観点から市場(いちば)の再帰性について研究を行っている。 また、 本研究では、日本(築地、錦、黒門)と英国(コベントガーデン、ボロ、ポートベロ、カムデン、グリニッジ、ピカディリー)の市場でインタビューを行って、市場 いちば)の再帰性について、 市場におけるインタビュー結果と文献から論じている。 これらをまとめて中京経営研究第23巻1・2号(2014 年 3 月)に掲載予定である。
(中西眞知子)

経営意思決定研究

服のネットショッピングとリスク削減行動について、ネット調査を利用したアンケート調査を実施し、その結果を本号に掲載する予定である。また、 服のネット通販において、実店舗とネットショッピングの使い分けに関する消費者意識調査を実施済みであり、現在調査結果の考察とまとめを行っている。これらの調査結果を踏まえ、今年度は商品分野を広げ、消費者購買行動やネットショップ側の対応についてさらに調査、分析を進めたい。
(中村 雅章)

知識ネットワーク

本プロジェクトは、企業における個人の知識共有行動と個人を取り巻くネットワークとの関係を明らかにすることを目的とし、今年度は、昨年度実施した企業従業員に対するアンケート調査で得られたデータを分析した。その結果、従業員の組織内での自尊感情が従業員の知識の共有行動を促進している様子などが明らかになった。これらの結果を関連学会において報告したが、今年度はさらに、これらの結果から得られた新たな疑問を踏まえたアンケート調査を実施する予定である。
(向日 恒喜)

世界恐慌~戦中期の日米コミュニティ・バンク諸業態の構造的変化に関する比較研究

本年度は3か年計画の1年目にあたる。京都府立図書館ならびに全国信用金庫協会しんきん資料館において、京都市内の地場産業ならびに市街地信用組合(戦後信用金庫に転換)の大戦前後のデータの収集・整理を行ってきた。今年度中に京都府立資料館などでもデータ収集を行う予定である。 なお、本プロジェクトに関する成果刊行は今年度中には難しいが、2009~2011年度のプロジェクト「わが国のコミュニティ・バンクの揺籃期に関する研究」 にかかる最後の論考「戦時期における兵庫県下3銀行の合併中止の経緯とその後の神戸銀行との合併交渉過程」を現在執筆中であり、本年度中の公表を目指している。
(由里 宗之)