平成25年2月18日 講演会要旨 「産学連携によるスポーツビジネス分野での専門家養成プログラム」
場所:豊田キャンパス14号館2階会議室
講師:ウォルター・トカラスキー氏 (German Sport University, President)
体育研究所の2012年度第2回学術講演会が2月18日(月)に開催された。講師はドイツのケルン体育大学学長のウォルター・トカラスキー氏。「産学連携によるスポーツビジネス分野での専門家養成プログラム」と題して、世界の体育・スポーツ教育をリードするケルン体育大学の取り組みについて講演いただいた。
ケルン体育大学は、スポーツの専門家を目指す6000人以上の学生が在籍する、ドイツはもとよりヨーロッパ最大の体育大学である。その数あるプログラムの中でも、スポーツビジネスやマネジメント分野は近年最も成長著しい領域であり、スポーツ産業界のニーズに対応するプログラムが重点的に展開されているという。その根幹にあるのがEU統合に伴うヨーロッパの大学改革(ボローニャ宣言)であり、その一端として学生の雇用可能性の確保が求められているからである。講演では、そうしたヨーロッパ大学改革の動向とその中でのケルン体育大学の取り組みの詳細が紹介された。
まずはカリキュラムの開発と評価のプロセスに労働市場からの関与が必須となっており、教育プロセス全般で産業界との連携が加速しているという。また、従来のドイツの大学ではあまり実践されてこなかったサービス、例えば学生に対してより専門的に就職先を紹介したり、斡旋したりというキャリアサービスの充実も近年着実に進んでいるという。後者のキャリアサービスについては日本の大学でも既に実践されているが、前者のカリキュラムの開発評価における産業界の関わりという点は、わが国でも真剣に検討されるべき方策ではないかと考えられた。
講演当日は春休みであるにもかかわらず大学院生を中心に多くの学生が聴講に訪れた。専門家の養成には社会の動向とニーズの把握は不可欠である。そのために産学が連携し学生に最新の情報を提供することが効果的で、かつ重要であると認識することのできた有意義な時間となった。