中京大学総合政策学部は、2026年3月に、『社会を多面的に考える総合政策学―生活・ビジネス・政策・国際政治の視点から』(中京大学総合政策研究叢書第18号、中央経済社、2026年)を刊行しました。
本書は、中京大学総合政策学部の教育理念を体現する一冊として企画されました。本学部は、政治学・法学・経済学・経営学といった複数の学問分野を基盤に、複雑化する現代社会の課題に向き合ってきました。社会の出来事を一つの見方にとどめず、多面的に考えることは、社会をより深く理解するための基礎となります。本書では、生活に身近な問題から国際政治に関わる課題までを幅広く取り上げ、異なる視点から社会を考えるための手がかりを提示しています。本書が、読者のみなさんにとって社会を多面的に捉え、総合的に考えるきっかけとなることを願っています。
現代社会における諸課題は、家族・地域・企業・市場・国家・国際社会といった複数の領域が重なり合う場所で生じている。例えば、少子化と高齢化、地域社会の基盤再編、外国人との共生、地域での政策、そして国際関係といった問題は、単一の学問領域によって説明することが困難である。こうした複雑性に向き合うためには、複数の視角を行き来し、問題を多面的に捉える思考が求められる。
このような発想から設立されたのが、中京大学総合政策学部である。総合政策学部は、2005年に本学の商学部を改組する形で発足した。公共政策とビジネスを接合する視点を中核にとらえた点において、既存の総合政策系学部とは異なる独自性を有していた。学部創設期から、知識の授与にとどまらず、現実の社会における課題を自ら発見し、他者と協働して解決に向けて動くことのできる実践的な学びの場を設計することが重視されていた。
本書は、総合政策学部の教育理念を、読者が実際に追体験できる構成をとっている。具体的には、「生活・ビジネス・政策・国際政治」という4つの視点から、社会を多面的に読み解こうとする試みである。
第Ⅰ部では、居住福祉、少子化やダブルケアといった生活に根差した問題を扱う。
第Ⅱ部では、飲食・観光、製造業のマーケティング戦略など、ビジネスの観点から考察する。
第Ⅲ部では、地方議会の政策形成、植民地統治におけるアカウンタビリティ、政治学における実験的手法から、公共政策のあり方を検討する。
第Ⅳ部では、沖縄米軍基地問題や安全保障、さらに現代インドを通じて、国際政治について問い直す。
これらの主題群は一見それぞれ独立しているように見えるが、すべては「社会をどの視点でとらえるか」という問題意識によって結びついている。本書は、特定の政策的立場や結論を主張するものではない。むしろ、社会の様々な出来事をどの角度から見つめるか、その見方を意識的に選び取るための手がかりを提示することを目的としている。
本書が、読者にとって、社会を平面的にではなく、立体的・動的に把握するための一助となることを期待したい。
中京大学 総合政策学部
研究叢書編集委員会
目次
第Ⅰ部 生活の視点から
第1章 総合政策と居住福祉(岡本 祥浩)
第2章 日本の少子化とダブルケア(大森 達也)
第Ⅱ部 ビジネスの視点から
第3章 日本の飲食店と外国人観光客(弘中 史子)
第4章 大規模製造業者とマーケティング・チャネル政策(高橋 秀雄)
第Ⅲ部 政策の視点から
第5章 地方議会と政策形成(今井 良幸)
第6章 植民政策とアカウンタビリティ(中村 将人)
第7章 政治学と実験(清水 直樹)
第Ⅳ部 国際政治の視点から
第8章 日米安保再定義と沖縄米軍基地(平良 好利)
第9章 総合政策学と現代インド政治(溜 和敏)
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