工学部ハルトノ教授が技術監修で携わった実物大"動くガンダム" GUNDAM FACTORY YOKOHAMAで公開中

 「ガンダムGLOBAL CHALLENGE」は、『機動戦士ガンダム』のテレビアニメ放送35周年を迎える2014年、全高18mの実物大ガンダムを動かすために設立されたプロジェクトだ。プロ、アマ問わず世界中から「ガンダムを動かす」アイデアを集めるオープンイノベーションを通じ、さまざまな意見や知恵、技術を取り入れて、基本設計、実施設計、検証実験を重ねて見事実現。2020年12月から2022年3月まで、神奈川県横浜市山下ふ頭にある『GUNDAM FACTORY YOKOHAMA』で公開されている。

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全高18mの実物大"動くガンダム" GUNDAM FACTORY YOKOHAMA

 工学部のハルトノ・ピトヨ教授は、「ガンダムGLOBAL CHALLENGE」 の5人のプロジェクトリーダーのうちの1人であり、ハルトノ教授の恩師でもある橋本周司早稲田大学名誉教授と共に、技術監修として2014年からこのプロジェクトに携わっている。プロジェクト立ち上がり当初は「"動くガンダム"を作る」という目標はあるものの、どう動かすかは全くの未知数だった。

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ハルトノ教授と"動くガンダム"

 ハルトノ教授の最初の任務は、世界中から集まった「ガンダムを動かすアイデア」を審査することだった。その後、機械やロボットのプロ、自動車の設計者、アニメーターや脚本家などさまざまな専門家と相談し「実際にどんなガンダムなら作れそうか?」を具体的に検討。3人のディレクター陣と協力しながら、プロジェクトを進めていった。

 全高18mものロボットを動かすことは、現在のロボット工学の範疇を超えていた。全高180cm、重さ100㎏のモーターで動くロボットを10倍にすると、全高は18mなのは想像がつくが、重さは2倍ではなく3乗のため、1000倍の100tにもなる。モーターの回転を力に変える減速機も複雑になりロボットの設計も困難になる。さらに物の動きづらさの指標である慣性モーメントは10の2乗×10の3乗、つまり元のロボットより10万倍動きにくくなる。

 しかしハルトノ教授は「人間型ロボットだと考えると不可能。でも、これが重機や動く建物だと考えたら『できなくはない』、そう感じました」とプロジェクト発足当初の思いを振り返る。

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 今回実現した実物大"動くガンダム"は、総重量を約25tまで減量したものの、自立した二足歩行は難しく、ガンダムキャリアという支持台車が腰の部分に接続された状態で歩行動作をする。しかしハルトノ教授の表情は明るい。「今回は歩行動作を行うのに支えが必要でしたが、これを見た子供たちが『支えなしで歩かせるには?』『アニメのように飛ぶガンダムを作るには?』と次の夢を思い描いてくれたら、このプロジェクトは成功だと思います」と笑顔で語る。

 ハルトノ教授に、実物大"動くガンダム"の見どころを聞いた。「遠くから見る正面の姿もかっこいいですが、このガンダム制作にあたっては、配線にも非常に苦労しました。この美しい配線は必見です。また、GUNDAM-DOCK TOWERに上って間近でガンダムを見てほしい。正面からは見えない背中が特に素晴らしいと思います」

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見どころについて話すハルトノ教授 GUNDAM-DOCK TOWERからのガンダム

 実物大"動くガンダム"を実現した今も、プロジェクトは続いている。世界的に見ても珍しい全高18mの動くロボットは、モノとしてのメンテナンスはもちろん、工学的な記録も残していかなければならない。工学的なレガシーを残すため、さまざまなデータが必要だからだ。

 最先端の技術と叡智が詰まったこのプロジェクトで一番伝えたいのは、意外にも「きちんと夢を見る方法を教えること」と語るハルトノ教授。「夢は、実は簡単に見ることはできません。夢は現実の上にこそ成り立つものです。工学の世界では、ロボットやAIなどが話題になりますが、その華やかな部分しか見ない学生がまだまだ多いと感じます。工学的な世界で言えば、数学や物理が現実です。まずはその現実をしっかり見つめ、自分のものにしてもらいたいですね。工学の道を志す人間は、『ロボットやAIってかっこいい』で終わらせてはいけない。私たちには、その次のロボットやAIを作る使命があるからです。今はまだ絵空事の夢でもいいけれど、『あったらいいな』で終わらず、『じゃあ、どうやったら夢を叶えられるかな?』と目を覚まして、考えてほしいのです。そこからイノベーションのサイクルが生まれます。この動く実物大ガンダムは、まさにその大きな証でもあるのです」

 実物大ガンダムを動かすという大きな夢を叶えたハルトノ教授。「いつかこの実物大"動くガンダム"の前で、力学の授業をしてみたいですね」と、次なる夢を語った。

(取材:2021年3月)

中京大学広報198号(17ページ)でも紹介しています。

2021/06/04

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